千夏の考え9
幸弘と小谷さんとは似たり寄ったりで、二人の会話も口数が少ないが、幸弘は意識せんでいい相手とは活発に喋るのに、恋人には丸っきり上ずっている。小谷さんはその反対に、恋人のように相手を意識すればするほど活発に喋る。香奈子さんの店で夜に呑んでる時は堅物やけど、香奈子さんと二人きりの時は、別人みたいに面白い話をごちゃ混ぜにして自分の考えを喋っている。幸弘さんと小谷さんは何でそこだけ正反対何やろう。他が似すぎるだけに、けったいな二人やと捉えていた。
「それやったらあたしと小谷さんは正反対やなー」
「エッ、そうなん?」
この一言で小谷さんは菜摘未ちゃんには、特定の好意を寄せてないとハッキリ解った。
「小谷さんと何回かデートしたん?」
「デートかどうか分からへんけど、誘ったらいつも来てくれた。でも今思ったら義理堅いだけやった気がする」
「なんでそう思うの」
「そやかて、あんまり楽しそうにしてくれそうもないんやもぅ」
「でもあの人は誰とも楽しそうにしゃあらへんやろう」
「最初はそう思うてた。不器用な人やと」
それがここ半年でそうやないと解った。あの人が香奈子さんと楽しく話しているのをチラっと見て「なんでや、うちとはあんな風に言うてくれへんのや」そやから面白ないと思ってる時に、境田がひょっこり来たから、余計に気分がそっちに流れてしもた。
「事務所から覗き見してたけど、あれは凄い剣幕やったのに、手は出さんけどそれ以上に言ってる事がきつかった。どうなるかと思ったけど、境田さんの方で店のお酒を買ってやっとあなたがお客さん扱いして収まったけど。あれであの人の方が一枚上手な気がした」
いつまでもあると思うな親と金やないけれど、燃え上がるうちが花で、そろそろ歳を考えないと、いつまでも恋人気分は続かない、と千夏は手短に言った。けど此の人は治らんやろうと謂う顔で菜摘未を見つめた。




