千夏の考え2
「それで菜摘未に言ったんですか」
言っても無駄だと千夏さんは知って、義弟の幸弘さんに報せたら、暫く考えて「これしかないなあ」と言ったきり何の相談もなかった。あとから香奈子さんをあなたに紹介したと知って。もっと他の手立てはなかったのかと、思い巡らせたが、菜摘未さんの性格を考えるとこれしか見当たらない。
「千夏さんでもそう言う結論に達したのですか」
他に何があるの、と逆に尋ねられても答えようもない。十和瀬と言い、千夏さんと言い、小谷も含めてこれ以外に的確な物は探せそうもない。それほど直接言っても聴く相手じゃなかった。こんな遣り方の相手では骨が折れるが、先ずはそこから物事を運ばないと先に進めない。
「もし本当に会社の売り上げを増やそうと考えてるのなら、真面にその方面から考えないとダメでしょう」
「じゃあどうして境田さんに頼むのよ、酒屋の娘が酒を売り込むのなら本人が直接あなたに相談するものでしょう」
此の仕事に関しては、何の関わりもない人に頼む訳がないし、小谷自身も会社には報告していない。
「それご覧なさい。小谷さんも本気で取り上げてないのでしょう」
「それは直接、菜摘未の口から訊かないと、商談を又聞きでは本格的に動けないでしょう」
ディスカウントショップで訊いた後に彼と昼食を共にしたが、そこで境田から聞いた仕事の話は、最後には恋の話にすり替わっていた。今頃は報告を兼ねて菜摘未に会っているとすれば、さてそれではどうすればいいのか千夏さんに伺った。
「先ずはその仕事の話を聞いてあげなさい。それから本音を探り出せればいいけれど、菜摘未さんはあなたに言いたくても何も言えないでしょう」
「じゃあどうするんですか」
「ウ〜ン困ったわね、矢っ張りあたしが訊くしかないのかしら」
社長である千夏のご主人か、もしくはお義父さんの会長か、順序としてはそのように取り組むべき案件だが、まだ具体化してない此の段階では彼女しかいなかった。




