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更生させてっ!

トボトボとやって来たはずが、一足先にクラブ棟の西口門に到着したようだ。既にクラブ棟を利用するソーシュー生徒で賑わっていた。ソーシューは人数が多いのもあるが、自主性を重んじるために放課後の活動として、興味関心のあるものもっと追求して欲しいということから、わざわざ敷地の一角に4階建ての専用の校舎を立てている。


1人でカカシのように突っ立っていると、異臭…じゃなくて、異彩を放つ4人が一緒にやってきた。いやもう何でもいいんだが。

天城紗香(あまぎさやか)は俺に指をさして嬉しそうにしている。奈多根詩音(なたねしおん)、剣豪、トゥルーホワイトも後に続く。


「瀬波お前…マゾヒストなんだってな!!今朝はビックリしたけど、まあ只者じゃねぇとは思ってたからよ!気にすんな!」

「びっくりだよ…せなみくん、でも…ぼくは受け入れるよ、うん!」

「やはり瀬波くん。君はワタシの思った通りだったようだね。」

「…変態だ。」


好き放題言いやがって!こっちのセリフだこの変人共が!!

1人究極に言われたくない奴が居るんだが!!


「おい、こーゆーのが好きなのか?ほらほら」

「いいえ大嫌いでーす。」


天城は拳を上にあげて、空中でクルクルさせる。

俺はもう大半諦めて、これからは『マゾヒスト瀬波』としてでも、平凡に何とかやっていけるのでは。という諦めの気持ちになっていた矢先、


「待て!!!!!」


親友、ジョーの声が聞こえてきた。まさにヒーローだった。

そしてザザッとジョーは俺の前に出て、手を広げた。


「助けに来たぞ…。親友を殴るなら…俺にしろ!!」

「ジョー!!何でお前ここに!!部活はどうしたんだ?」

「瀬波…やっぱりお前が気になって跡をつけて来たんだ。」


ジョーは言葉を付け加える。


「なるほどこう言う事だったんだな!どうりで……瀬波をドMの変態豚野郎に何かに変えたのはお前らの仕業だったんだな!特にお前!まほつかい天城紗香(あまぎさやか)!!」


いや、ジョー。ここまでしてくれるのは本当嬉しいんだが、あっさり俺がドM前提なのはやめて頂きたい。てかいつからそうなった?

天城は今の言葉に血相を変えて突っかかる。


「んだとコラ!まほつかいじゃなくて、魔法使いだっての!!炎のな!!」

「馬鹿にされてる事に気が付けよ!良いか!これ以上瀬波に迷惑を掛けないでくれ!!瀬波を変えてしまったのはお前らなんだろ!?」

「な…何言ってんだ!このっ!」


本当に天城が拳を振り下げようとした途端、ジョーは表情を変えて興奮気味に話し出す。…え、喜んでる?いやまさかな。


「…やややややるのか!?そそ…それなら!じゃあ殴ってみろよほら!寧ろ…いいいや!!親友を守るためだ!!早く…いや、…俺は暴力には屈しないぞっ!!!」

「…」

「瀬波はな、昔はもっとこう…スッゲェ尖ってて、ツンツンしてたんだよ!思った事を平気でグサッと言ってきてくれてな、こう見えてグロテスクな所もあって…俺は気に入ってたんだ。」


ジョーは嬉しそうに語り出した。

俺は嫌な予感から間髪入れず、会話に割り込んだ。


「お前……どうした!何ニヤニヤして…気持ち悪いぞ!!」

「せ…瀬波…っ!?……ふ…そう…そうだ。徐々に感覚を取り戻してきたか?いい感じだぞ!ふふふ!」

「どうしちまったんだよ!ジョー!お前はこんな奴じゃなかったはずだ!」

「こっちのセリフだ!!!! 瀬波!お前…本当最近なんか…急に丸く優しくなりやがって…元のあの陰湿な感じに戻ってガキの頃みたいに、俺にもっと遠慮なくチクチク色々言えよ!言ってくれよ!めちゃくちゃに言ってくれよ!!」

「俺そんな感じだったのか!?色々言ってたの!?まじでごめんな!!いや本当ごめんなさい!!」

「謝るな!! 俺はありのままのお前が良いんだ!! もっとぶつけて貰って構わないんだよ!!」


………思い返せば、どおりで昔から友達がお前ぐらいしかいなかった訳だ。平凡なんてどころじゃなかったのかもな…なんて酷い奴なんだ俺はっ…。自分で自分を客観視するのは中々難しいんだな…。


「えい」


ここで天城はジョーの脛を割と強めに小突く。


「な…なにひゅ…す…すんっ…だ!!」


俺は…ここまでの流れでなんとなく察しがついていたが、まだ認める訳にはいかなかった…。やめてくれ、ジョー!!まさかお前が…!!くそ…くそーーっ!!

天城も確信を持つために、今度は何度かかなり強めに蹴り上げた。


「ファイアキック!ウルトラファイアキック!メテオファイアキック!」

「い…いてぇっ!!うはっ…や…やめっ!やめてーーっ……!!」

「…お前が変態豚野郎だった訳か。」

「お…俺はっ…ちがっ…違うん…だぁっ!…や…やめるなーーーっ……!!」


ジョーはまほつかいらしいただの蹴りを何度かお見舞いされ、仕置きによって地面でみっともなくへたっている。天城含めた5人は、流石の好青年がまさかのアレだった事にドン引き。…いや元々アレな訳じゃなくて、もしかしたら俺が変えてしまったのか?

……俺は、親友に対して行っていたのであろう愚行に対する自責と、コイツがとんでもない変態だった(になってしまった)事に対する軽蔑の間で揺れ動きながらも、やはり親友に対して、親友による責任を果たそうと思う。


「…ジョー、今度は親友としての俺の番だ。お前がどんなに変態で、ドMの変態豚野郎でも、俺は勿論態度を変えないで居てやるからなっ……。」

「せ…瀬波……違うんだっ……!」

「違うのは俺なんだ!! ジョー!! 俺はお前を虐めるのが大好きなサディストでもねぇし、『マゾヒスト瀬波』なんてものでもねぇんだよ!! ほら! 96位はお前のもんだ!受け取れ!ジョー!」

「そ…そんなっ…。違ったのか!?」

「ちげーよ!!」


ここでトゥルーホワイトはジョーに近づき、コソッと耳打ちした。すると先程までの絶望した表情から一転して、ジョー精気を取り戻した。

天城は呆れた顔でその場から立ち去るようにして、クラブ棟の入り口へ向かう。


「儚い友情だな。よし剣豪、いいから瀬波を抱えて連れてきて。昨日の内に、3階端に教室を取ってあるから。」

「ああ。」

「待て、やめろ!!」


剣豪は俺をひょいと担ぎ上げ、同様に入り口へと向かった。

奈多根とトゥルーホワイトも上機嫌で剣豪の後を追う。


「たのしみですね!異世界転生のために、まずはギルドけっせー!」

「ええ。ギルド結成という名目なら、ワタシも他人と仲を深めてもいいといい事に気が気が付きましてね。楽しみです。」

俺は強引に振り解こうとするが、この筋肉の塊はびくともしない。


「お…おい離せよ!助けてくれ!ジョー!!」


ジョーは全てに納得したかのような佇まいで、俺たちから背を向けて凛々しく立ち上がる。少し放課後の夕日に照らされて、まるで地球の危機に立ち向かう男のように見える…見えるだけで、実際には快楽の余韻にでも浸っているのではないだろうか。

少し息を整えているのか黙ったままだったが、ようやくジョーは口を開いた。


「……お前はその、ギルド?とかいうのに入るべきだ。瀬波。」

「な……何を吹き込まれたぁあ!?ジョー!!」

「……時には辛い役をかうのも、親友の務めだ。爪を研ぎ直せ。」

「は?自暴自棄にでもなってるのか? また少し落ち着いたら話し合おう! ジョー!! 俺は別にお前の真実を知って、何とも思ってない訳じゃねーけど、何とも思ってねーよ!!」

「うるせぇ!!!いいから入って瀬波は更生されればいいんだよ!!!それで昔みたいにもっともっと尖がっちまえ!!!!」

「お…俺は平凡な人間として平凡な日常を生きていきたいんだよ!!分かってくれよ!!ジョー!!」

「そんなのは絶対許さん!!!!!!頑張れよ!!瀬波!!ランキングが上がったら、また飯でも奢ってやるよ!!!!じゃあな!!!!はははは!!!!」

「テメェこの野郎…売りやがったな!! 女に蹴られてよがりやがってこの変態豚野郎が!!96位!!おい待て!! 」

「う…うはううっ!!」


ジョーはその場にガクッと倒れ込み、震える手をゾンビのように、前に突き出していた。そしてこちらを見て、満面の笑顔を見せた後、グッジョブして来やがった。覚えとけよ、この野郎。


そしてクラブ活動初日。

俺にとっては、異世界生活初日がスタートする。

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