助けさせてっ!
地獄の教室内で、俺は授業中、とにかくこの状況を打開する策を考え抜いていた。
新聞部を訴えるか…?てかすぐ今朝の事を何故こんなにも早く情報が…もしかするとあちこちで張り込んでるのかも知れない。
これからは慎重に行動しないといけないな…。勿論俺はnormalだ。本当だぞ!?(奈多根くんは別腹だが。) だから、何とかしてクラスメイトの誤解を解かないといけねぇっ!!
最後の授業を終え、教室内の空気が緩んだところで俺は立ち上がる。
「みんなごめん!突然だけど、聞いてくれ。俺、実は」
そこまで言うと、俺の前の席の南城海。通称ジョーは後ろを振り返りながら、勢いよく立ち上がった。
「やめろ!瀬波!これ以上傷口を広げるような事はするな!」
「ち…違うんだ!ジョー!俺はだな!」
「分かってる…だが安心しろ。幼馴染として、何があっても親友で居てやるから、な?もう何もいうな。これ以上ここに居ずらくなって、お前が傷心して学校を出ていくような事が1番心配なんだ。」
「じょ……ジョー。」
俺が 『マゾヒスト瀬波』としてソーシューの危険度ランキングのランカーに入ったとしても、持ち前の明るさと優しさを持って相変わらずで接してくれる、ジョーに改めて感謝させられた。
しかしそのせいで、肝心の本題を伝える事ができなかった。…しかも、何だか2人で妙な雰囲気を醸し出してしまってはいないか?また変な誤解をされないといいが。
クラスメイトはジョーに駆け寄り、耳打ちする。
「ジョー、危ないぞ!」
「ちょっと!ジョーくん!こんな気持ちの悪い奴の相手なんてしない方がいいよ!!」
「ジョーくんまで変な目で見られる事になるよ!!」
「…」
ジョーはさっきまでとは少し違い、懐疑的な目で俺を見る。
「お…俺はてっきり、お前はその逆だと……。(ボソ)」
「え?どうした?」
「な…何でもねぇ。わりい。」
そそくさと前を向くジョー。
その間も、コソコソと話が教室中から聞こえてくる。
『あ…あいつがドMだったなんてな。殴ってくれって言われたらどうしよう。』『この前も、裸で深夜徘徊をしていて…それで、昨日は風邪で休んだんだって。』『確かにこの前、私がちょっと注意した時、嬉しそうだったかも。』『うわーきっしょ!』
んな訳ねーだろ!!○すぞゴルァ!!
俺は平凡に目立たないように生きてきた白紙のような人間だ。だからこそ、その変なランキングによって簡単に俺の属性が書き加えられてしまったのだ…。
……だか、ここでこれ以上何かを言うのは寧ろ逆効果。着実に誤解を解くために、真面目な態度を日々見せていく事が重要だ。
ホームルームを終えたらとっとと帰ろうと思っていた矢先、教室内の雰囲気が変わる。
何と教室に遠慮なくツカツカと、貧乏貴族トゥルーホワイトこと真白聡磨が俺の座席の前までやってきた。ジョーは俺を庇うように少し前に出るが、トゥルーホワイトは遠慮なくスマート爽やかな顔で言う。
「瀬波くん、突然すみません。天城紗香さんからの伝言です。『クラブ棟の西口前に放課後集合。すぐに来なかったら覚えとけ、このドMの変態豚野郎』との事です。瀬波くん、改めてよろしくお願いしますね。」
トゥルーホワイトは名前に恥じない整った白い歯を見せ、黒縁メガネを整えニコッと微笑んだ後、またツカツカと教室を後にした。
「瀬波…お前!何か脅されたりしてんのか?おい!しっかりしろ!大丈夫か!」
俺は30秒ほど気絶した。
ジョーの言葉に呼応するように、教室内の緩んだ雰囲気は再び騒がしくなり出した。
「やっぱり知り合いだったんだ!」
「変態豚野郎だってよ…(笑)」
「お前、天城紗香ってどんな奴なんだ?」
「3年の理数科の奴だろ? 聞いたことある。口癖が『マナが足りなくて疲れたー』らしいぜ!」
「えー!やばい変人じゃない!」
「ねぇ、マナってなんなの?」
好き勝手に盛り上がっているクラスメイト達を横目に、ジョーは真剣な目で、俺を見つめて言ってくれる。
「分かった、瀬波。俺がついて行ってやる。そしてバシッと言ってやるよ。」
「ジョー…すまない。でも、お前も今日野球部の活動があるんだろ? 気持ちだけ受け取っておくよ…ありがとう。
「いや…しかし。」
「気にすんな。いざというときは、また世話になるかもしれない。」
「ああ!ぜってぇ助けてやるからな!」
涙が出る。なんていい奴なんだ。
そしてホームルームを終え、本校舎から歩いてすぐにあるクラブ棟の西口へ俺は向かった。




