伝えさせてっ!
1限目終了のチャイムが鳴る
あの後、俺は目を瞑ったまま、気が付けば誰も居なくなっていた。
既に始まってしまっていた1限目に参加するため、自分の教室に向かった。 機械科は2クラスあって、AとBに別れているが、優劣はない。俺のクラスは2年A組機械科。
男女比は7:3 で、時代のおかげか機械科だけれど女子も割と多いから、別に何の変哲のない教室として振る舞う事が可能である。
「いやーでも瀬波が遅刻してくるなんて、珍しいな!」
「あ…ああ。色々…あってな…ははは……は…。」
「んー?どうした?体調でも悪いのか?」
「ま…まあな。あのな、ジョー。ちょっと、聞きたい事があるんだよ。」
この俺の前の席の、髪の短くてサッパリ爽やかなスポーツマンは南城海、通称ジョーは、勉強はそこそこ出来てー、人当たりが良くてー、スポーツ万能!!っていう、学校での特別なポジションを占めるのがこいつ。そして、俺の唯一にしてたった1人の親友だ。
何故こんな平凡な俺なんかと…って聞きたいだろうが、これは長くなるのでここでは割愛する。簡単に言えば、幼稚園からの長い付き合い、幼馴染だ。
「なんだ?何でも聞いてくれよ!」
「じ…実は…天城紗香って知ってるか?」
「あ……あまぎさやかーーーっ!?」
ジョーはガタッと椅子と机を揺らして勢いよく立ち上がる。そしてクラスメイトの視線を一気に集めた。朝のことを思い出して、急に体調が悪くなってきたが、ジョーはそれを振り切るように俺の肩を強く握り、固唾を飲んだ後、慎重に話しかけてくる。
「新聞部が毎月、 ソーシューでは関わる際には注意するべき! として『ソーシュー生徒危険度ランキング』なるものを、勿論…表で出す訳には行かないから、裏で本業とは別に発行してるんだ。それを、瀬波お前は見た事がないのか?ソーシューに入って2年目だろう!?」
「み…見たことない。で、まさかその天城紗香は……」
「ああ、ちょっと待て。この前先輩に貰った、先月のがあるはずだ。」
お…俺は本当にこの学校…ソーシューの事を何も知らないのだな。
通学カバンの底の方から取り出した、割と大きめの紙を広げて、ジョーは丁寧に確認していく。
「えっとな。新聞部の付けた名前に、括弧で本名が付け加えられている形だな。や…やっぱりあったぞ。
3年理数科所属 あたちのほのーに焼かれなちゃい『炎のまほつかい・天城』(天城紗香) ランキング16位!!」
「16位…!(あれで危険度はまあまあなんだな…)ちなみにそれは何位まで書かれてるんだ?」
「1位から100位まで。※なお、順位は毎月変動します。と書かれている。」
「いや、変わり者多過ぎだろーーっ!!(危険度結構高かった…)」
…いや、そんな事もないのか。5000人規模の学校だから、50人に1人と言うことになるが、あんなのが100人も居るのは耐えられないっ…退学いや、転校…いやいや!……ていうかジョーのやつ、順位は分からないにしろ、『まほつかい・天城紗香』の事を知っていたのは驚きだ。しかも魔法使いではなくてまほつかい!! 馬鹿にされているんだろう、可哀想に。別に思っていないが。
取り敢えず、残りの奴らについても同様にきいてみることにした。
「奈多根詩音、剣豪…片桐健吾、真白聡磨、それぞれの名前を確かめてくれないか?」
「えっとな…あった!!
3年美術工芸科所属 仕上がったぜ 俺の剣と筋肉をご覧あれ『チチデカの健吾』(片桐健吾) ランキング 8位!? あとは…あったあった!
2年理数科所属 貧乏貴族『トゥルーホワイト真白』(真白聡磨) ランキング87位! あとは……奈多根詩音の名前は見当たらないな。」
「8位と87位!?しかもなんだチチデカって、最悪だな!!」
…やはりソーシューでは、アイツらの素性はかなり割れているってことか。ますます付き合いたくない!
すると、俺とジョーの話を聞いたクラスメイト達がジョーの周りに集って盛り上がり始めた。
「ちょ…ちょっと待って!奈多根詩音くんって普通科1年のあの詩音くん?」
「え!うっほ!俺見たことあるぜ!あの可愛い男の子だろ!」
「そうそう!うっほ!あの1年の奈多根詩音って可愛いから、ソーシューで 男女問わず 人気あるんだよなー」
「そうそうそう!うっほ!」
ジョーの周りに集って盛り上がっているクラスメイトの話からいくと、奈多根詩音はランキングには居ないとはいえ、ソーシューのイロモノに違いはないと言うことか…。
まだクラスメイト達の会話は続く。
「ねぇ、真白って、あの真白聡磨くんのことかな?」
「あーめっちゃかっこいいけど、へんじんーって噂があるよねー。」
「とにかく人嫌いで、近付かれるのを嫌うらしい。確か、『私は貧乏貴族ですから、人に恵まれるのにはまだ早い。もう少し待ってください。』とかなんか意味不明なこと言ってたらしい。」
「あ、でもなんか、貧乏を演じてるだけで、実家はものすげえ金持ちなんだってよ!」
「そうそう、でも学校では凄く貧乏を演じているみたいで、筆記用具を持ってないからこの前のテストで全教科0点だったらしいわよ!」
「まじかよ。でもめちゃくちゃ頭いいって聞くぜ?」
「俺が聞いた話なんだけどよ、隣の人に鉛筆を貸してくれた時、トップの成績を取ったらしいぜ!」
何だその変なやつーー!?てか同学年!?そんなやつ知らなかったよ!!そんな変な設定…筆記用具ぐらい別に持ってたって良いだろ!!
そして俺の心の内を察するかのように、ジョーは本題に入る。
「で、瀬波。コイツらがどうしたんだ?友達なのか?」
「友達…!?んなわけねーだろ、ジョー。ジョーダンは辞めてくれ!(ジョーだけに)」
無論、俺の一撃は無視され、ジョーの言葉を聞いたクラスメイト達は、また騒がしくなり出した。一部の人間は俺から距離を取るようにも見えた。え、違うんですよ、辞めてください。
「何?瀬波くんって、この変な人達と知り合いなの?」
「いがいー。なんか普通の人だと思ってたのに。」
「実は普通に見えるやつほど、裏ではやばかったりするもんな。」
「好き勝手言いやがって!だから違うって言ってんだろ!!」
バンン!!!!
俺の必死の抵抗を掻き消すかのように、勢いよく扉が開いた。
「みんな!!新聞部から、今月のランキングが出たぞ!!」
ジョーの周りで騒いでいたクラスメイトみんなの関心は、うおーっと扉の方にいく。やはり自分の学校の事だから気になるのだろう。
初めは集まって楽しくしているように見えたが、しばらくすると、徐々に皆が俺を見る。何の感情も…いや、感情を込めないように努力した目で俺を見る! 俺は、今朝の事が何ごともなく終わるとは勿論思っていなかった。だか、このような形で結果として現れるとも……思っていなかった。
ジョーは立ち上がって、扉の方に向かった。
そしてランキング用紙を受け取り、ひと通り確認した後、震える声で読み上げる。
「2年機械科所属 そのままドンときて♡ 『マゾヒスト瀬波』(瀬波蒼太) ………………ランキング96位。」
A組機械科の教室は、2限目開始前のチャイムが鳴り、教師が入って来るまで誰一人として俺の顔から目線を逸らなかったし、そして誰一人として何も言ってくれなかった。




