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第十三章:群星会談 ― 蒼と灰の対面

地の底、静まり返った管理層。

 大隅詩は転移装置の中心に立っていた。

 足元には、青白い光を放つ魔法陣が複雑に絡み合い、

 まるで脈打つ心臓のように、ゆっくりと明滅している。

「本当に行かれるのですか?」

 ミアの声には、どこか震えがあった。

「外界との直接交信は、前例がありません。

 しかも“群星会談”は、複数の国家とダンジョンマスターが同席する場です。

 リスクが高すぎます。」

 詩は彼女を見て、穏やかに微笑んだ。

「行かなければ、俺の“理”は届かない。」

「……けれど、向こうが罠を仕掛けていたら?」

 セリアが腕を組み、代わって口を開く。

「ミア、詩が戻れないと思う?」

「それは――」

「彼はただの人間じゃない。あれだけの魔力と演算を使って、

 私たちの世界を創った“理そのもの”よ。」

 それでもミアは視線を逸らさない。

「理であっても、“不確定”は存在します。

 ――それを、詩様が一番よく知っているでしょう?」

 詩は小さく息を吐き、苦笑した。

「……そうだな。だから、行くんだよ。」

 彼は掌をかざすと、魔法陣の光が一瞬強くなる。

 空間に波紋が走り、透明な扉のような構造が浮かび上がる。

「これは、“転移許可の儀式”。

 ダンジョンマスターが世界の外界へ直接干渉できる唯一の手段だ。」

 ミアが端末を操作しながら説明する。

「転移経路は安定しました。座標は群星宮。

 ……ただし、帰還には“外部干渉”が必要です。」

「つまり、帰り道は保証されない。」

「はい。」

 セリアが半歩、詩に近づく。

「なら、私も行く。」

「だめだ。お前がいなければ、このダンジョンは保たない。」

「けど――」

「俺が戻るまで、守ってくれ。ここはもう、俺だけの場所じゃない。」

 セリアは何かを言いかけたが、

 詩の瞳を見て、そっと唇を噛んだ。

「……絶対、戻ってきて。」

「ああ。約束する。」

 ミアが転移装置の制御を開始する。

 音もなく、光が詩の体を包み込んだ。

 光の粒が宙に舞い上がる中、詩はふと呟いた。

「行ってくる。――理と、感情の答えを探しに。」

 次の瞬間、彼の姿は光とともに消えた。

――――

 世界が裏返るような感覚。

 視界が歪み、空と地の境界が曖昧になる。

 転移の最中、詩の意識はわずかに浮遊していた。

 過去の記憶、ミアの声、セリアの表情。

 それらが淡く流れていく。

 そして、彼は見た。

 白銀の光に包まれた浮遊都市――〈群星宮〉。

 世界の理そのものが具現化された、静謐なる場所。

――――

 群星宮・会談室。

 蒼い軍服の青年、アリステア・クローヴが待っていた。

 その背後に立つ複数の魔導官たちが、詩を測るように視線を向ける。

 転移光が収まり、詩が静かに歩み出た。

「ようやく、直接会えたな。」

 アリステアが立ち上がり、微笑を浮かべる。

「お前が“大隅詩”か。」

「そして、お前が“アリステア・クローヴ”。

 この世界を“守る”転生者。」

 互いの目が交錯する。

 理と理。思想と思想。

 長い沈黙が、交渉の始まりを告げていた。

 ――世界の未来を決める、最初の言葉を待ちながら。

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