目覚め
少し前の話。私には、ずっとずっと、一緒にいよう、結婚しようって約束をした彼氏がいた。そう、いた。
理由は分からない。けど、気づいた時にはもうどこにもいなかった。私は毎日毎日、探し続けた。無駄だってわかってても、それを否定していた。探して、探して、探して、探して。それを繰り返していたら──
「あ。お目覚めになられましたね、勇者様。ご気分の程はいかがでしょうか? 」
「ゆ、勇者? 」
異世界にいた。しかも、勇者として招かれた……らしい。
「はい。魔王を討ち滅ぼして貰うべく、私がお呼び致しました」
「え、私が? なんで!? 」
「それはわかりません。きっと、この世界があなたをお選びになられたのでしょう」
要するにランダムと。そこで、運悪く私が選ばれちゃったのね。いやいや、なんで私が魔王なんて倒さないといけないんだ。というか、どうやって帰るの? これ。私は早く袮音を見つけないといけないのに。
「所で……勇者様、お名前は」
名前か。そういえばまだ名乗ってなかったな。どう名乗るが正解なんだろ。異世界だしな、外国式の名前を前に持ってくる感じでいっか。
「えっと……アオイ」
「アオイ様ですね。自己紹介が遅れてしまい申し訳ありません。私はこのエレイナ王国の見習いシスター、アルファナと申します」
なるほど、ここはエレイナ王国って場所なのね。それでもって私を呼んだ目の前の彼女はシスターと。シスター? そういうのって魔術師がやるものじゃない?
「アルファナだね、よろしく」
「では、早速ですが王宮へ案内致します。王がお待ちになられておりますので」
「うん、わかった」
アルファナが私のことを呼んだのに王様はそれを知ってたの? それか王様がアルファナに指示をしたのか……うーん。てか、勇者嫌なんだけど!?
「うわ、でっか」
アルファナに案内されること数分。豪邸によくついてそうな、典型的な超巨大な門に着いた。多分、この先に王宮があるんだろうけど。いくら何でも大きすぎじゃない!? 見たところ十メートルとかそれくらいはあるよ、これ
「少し下がられててください。今、門を開けますから」
「えっ何それ……魔法? 」
アルファナの手が、緑の光に包まれる。そしてその手で門に触れると、音もせず静かに門は開いた。これが、魔法? なんか思ってたよりもすごいかも。開けるだけならまだしも、一切音を立てずに開けるなんて。
「もうすぐですよ。進みましょう」
「う、うん」
なんか、整理する時間を全くくれないなぁ。とりあえずこの先に行けば王様と出会うはずだから、そこから私の冒険が始まるって解釈でいいんだよね。
「エレイナ王、アルファナです。勇者様を連れてまいりました」
「入れ」
アルファナに案内されながら、宮殿の中を進んでいく。罠は特になかったし、作りも単純だったから侵入者とかでたらどう対処してたんだろう。王室なんてわかりやすく黄金の扉でできてるし。
「でかしたぞアルファナ。よくぞ連れて参った。そこの招かれし勇者よ。名は、なんと言うのだ? 」
なーんで王様も自分絡まず名乗ろうとしないんでしょうかね。まぁ王様だし、下手なことしたら即処刑とかも有り得そうだから言葉は丁寧に選んでおかないとね。
「お初にお目にかかります、エレイナ王。私はアオイ・ヒナザキと申します」
「アオイか。良い名だ。私はエレイナ王国五代国王、エスヘレス・エレイナだ。では、早速本題だが……アルファナから君が招かれた理由は聞いているな? 」
「魔王の討伐、ですよね」
「うむ。どれだけの月日がかかろうとも良い。忌まわしき魔王、ネオン・タカサキを討って欲しい」
ネオン・タカサキ。つまり、高咲袮音。私の、探していた人の名前。それを知った時、不思議と驚きはなかった。それはきっと、やっと見つけれたって気持ちの方が大きかったから、なのかもしれない。
「承知しました。このアオイ・ヒナザキ、勇者として魔王を討伐致しましょう」
「とても頼もしい返事であるな。アルファナ、街の説明は任せた」
「御意に。では、失礼します。……アオイ様、どうぞこちらへ」




