シーズン1 第3話 ダンジョンの番人 スカルドラゴン
スカルドラゴンの咆哮が響き渡る広間。死者の気配をまとう巨体は、その身を覆う白骨を軋ませながら、四人に襲いかかってきた。鋭い鉤爪が振り下ろされ、そこから放たれる死の炎が、容赦なく彼らを追い詰める。バザンたちは、寸前のところで攻撃をかわし続けるが、その猛攻に反撃の糸口すら見つけられない。
「くそっ!まったく効かない!」
ゴードンの斧が、リリアの矢が、フィンの魔法が、スカルドラゴンの骨の皮膚に当たっては弾かれ、まるで手応えがない。圧倒的な力の差に、彼らの顔に焦りの色が浮かぶ。
その時、バザンの手から、不意にドラゴンの卵が滑り落ちた。コロンコロンと音を立てて階段の方へと転がっていく卵。しかし、その瞬間、さらなる混乱が訪れた。
「ほう、見つけたようだな。それは俺様のものだ」
振り返ると、そこに立っていたのは悪名高き極悪スカベンジャー、ライブハだった。その顔には下劣な笑みが浮かび、ギラついた視線はドラゴンの卵に釘付けになっている。ライブハと部下たちに卵を奪うため階段へ走る。
四人の後ろを追いかけてきていた極悪スカベンジャーのライブハとその部下達は、卵の存在に気づき、階段を駆け上がってきたのだ。彼らは転がった卵を奪い、逃げようとした。スカルドラゴンの苛烈な攻撃が迫る。間一髪でそれをかわすと、懐から奇妙な武器を取り出し、スカルドラゴン目掛けて発射した。
それは、まるでショットガンのように、聖なる液体を広範囲に撒き散らす武器、聖水のショットガンだった。
ドパァン!と、乾いた発射音が広間に響き渡る。聖水がスカルドラゴンに降り注ぐと、その骨の体がキシキシと音を立て、禍々しいオーラがわずかに揺らいだ。スカルドラゴンは、苦悶の咆哮を上げる。効いているのか?そう思った矢先だった。
スカルドラゴンは、再び猛然と突進し、階段付近から聖水のショットガンを放ったライブハを壁に叩きつけた。呻き声を上げる間もなく、ライブハは息絶える。残りのスカベンジャーたちも、戦う間も与えられず、次々とスカルドラゴンの犠牲となっていった。
圧倒的な力の差。目の前で仲間たちが無残に殺されていく光景に、バザンたちは凍りついた。自分たちも、同じ結末を迎えるのか。絶望が彼らを支配しようとした、その時。
バザンの視界の隅に、倒れたスカベンジャーが落とした聖水のショットガンが映った。彼は迷うことなく、その武器へと駆け寄った。
「バザン、何をする気だ!」
フィンの叫びも耳に入らない。バザンは聖水のショットガンを拾い上げると、震える手で構えた。重く、冷たい感触。そして、スカルドラゴンが次の攻撃を仕掛けようと、ゆっくりと頭をもたげる。
狙いは、奴の剥き出しの骨、特に頭蓋骨だ。
バザンは、一歩踏み出した。
ドパァン! ドパァン! ドパァン!
彼は、残された聖水の弾を全弾、スカルドラゴンに撃ち尽くした。聖なる液体が連続してスカルドラゴンの全身に降り注ぎ、その骨の体が激しく溶解していく。
グオオオオオオオォォォォォォォォ…
スカルドラゴンは、断末魔の叫びを上げ、その巨大な体がゆっくりと崩れ落ちていく。やがて、完全に動きを止め、ただの白骨の山と化した。広間に、静寂が訪れる。
バザンは、力を使い果たしたように、その場に膝をついた。彼の呼吸は荒く、心臓が激しく脈打っていた。傍らには、空になった聖水のショットガンが転がっている。
奇跡だった。あの圧倒的な力の差を持つ魔物を、まさか自分たちの手で倒せるなんて。しかし、その勝利は、他のスカベンジャーたちの犠牲の上に成り立っていた。