014 2人のトップ合格と面倒臭い国(1)
本日2回目の投稿です。
一章 八話(1)
「わっはははっははー。カナデ、サクラよくやった。文句なくのトップ合格だ。そして、どちらも歴代最高記録更新だ。ふふふふふふ。これで、あのいけ好かない大臣のふざけた要求も無視できる。いやー愉快愉快」
ここは、フェロンさんが紹介してくれて、つくも(猫)も常連客になっていた食堂だ。名前を『コパンの店』という。
今は、私とサクラさんの合格祝いの真っ盛りだ。
私もサクラさんも試験の結果はトップ合格だった。共に歴代最高記録更新のおまけ付きだ。
そして、なぜかラウネンさんがかなりはしゃいでさっきから同じ事を何回も繰り返して言っている。
「ラウネンさん。ありがとうございます。これも、皆さんのご指導のおかげです」
「何、改まっているのよ。若いんだから、もっと、こう、パーとはしゃぎなさいよ」
フェロンさんが、私の背中「バンバン」叩きながら絡んでくる。
いや、はしゃぎたくてもラウネンのテンションが高すぎてついて行けないんですが……。
「ところでラウネンさん。さっきから繰り返している、『大臣の無茶な要求』て、なんですか」
少し気になってきたので聞いてみた。
「あ、それ私もさっきから気になっていました」
私の隣で、つくも(猫)を抱えたサクラさんが賛同した。
「ああ、まあ、なんだ。もう、話してもお前らが気にして実力が出せなくなるなんて事はないからな。それに、いろいろ周りがうるさくなるかもしれなからな。知っておいた方がいいな」
ラウネンさんは、カルミア様の方をちらっと見て、カルミア様がうなずいたのを確認すると、事の次第を話し始めた。
「サクラはもちろん、カナデもこの大陸にある7つの国のことは知っているよな。」
「はい、『エレウレーシス連合王国』『カロスト王国』『アルエパ公国』『マイアコス王国』『ディスポロ商業連合国』『ストラミア帝国』『ナダルクシア神国』ですよね」
「ああ、正解だ。じゃぁ、その7つの国の中で魔法が使えるのはどの国だ」
「えっ、全ての国で使っていますよね」
「カナデさん、外部から影響を受ける魔力のことじゃないですか」
「ああ、なるほど。なら『エレウレーシス連合王国』『カロスト王国』『アルエパ公国』『マイアコス王国』『ディスポロ商業連合国』の5つです」
「どうして、他の国は使えないと思う」
「木魔がないからですね。魔素は、木魔から発生していると考えられています。ただ、まだ実証はされていないですね」
「さすがだな。よく調べてある。そこら辺はB級試験で出される範囲だぞ」
「ええ、調べ始めたら結構おもしろくてついつい余計なところまで調べていました」
「……歴代最高記録更新者になるはずだわ……納得したわ」
フェロンさんが、あきれている。
「カナデさんですからね。当然です」
猫がサクラさんの腕の中で右前足をペロペロ舐めている。
「でだ、話を戻すが、その木魔が全く生息していない国、それが『ストラミア帝国』と『ナダルクシア神国』だ」
「大陸の東にある国ですね。この『大樹の森』とは1万メートル級の山で遮られていますから、大きく迂回しないとたどり着けない国です。『ストラミア帝国』は、大陸で一番広い国ですよね」
「……何でそこまで詳しいのよ」
フェロンさんが、ジト目だ。
「カナデさんですからね。当然です」
猫が、お腹を舐めている。
「でも、地理についてはこれ以外のことが資料を見ても書いてないんだよ。これって、これ以上は調べるな……て事かなー。木魔のこともどこにも書いてない」
「正解だ。どの国も、もっと詳しい資料は厳重に保管されていて、許可がないと閲覧できないようになっているはずだ」
「何でそんな面倒臭いことしてるんですか」
「ストラミア帝国が、面倒臭い国だからさ」
「……詳しく」
「ここじゃー言えねえな。また、いつか、教えてやるよ」
「わかりました。じゃ、明日で」
「……てめえ、けんか売ってるのか」
ラウネンさんの目つきが怖い。
「……じょ冗談ですよ。やだなー……ははは」
「冗談に聞こえなかったぞ」
当たりです。本当はすごく気になっています。
「あのー、『大臣の無茶な要求』の話しの続きが気になるのですが」
サクラさんが、腕からぴょんと飛び降りた猫を気にしながら控えめに言った。
「おっと、そうだった。えーとだな、おおそうだ、ストラミア帝国に木魔はない。これはストラミア帝国も認めているので言っても問題ない。
でだ、木魔がなければ魔素は薄い。だから、外部魔力の威力も弱い。でも、それでは強い魔物とは戦えないってわけだ。どうだ、困るだろう」
「困らないですよ。だって、魔素が薄ければ、魔物だって弱いじゃないですか」
「カナデさん。強い魔物は、森にいるだけではないですよ」
「森以外にいたっけかなー……」
「さすがの優等生も、行ったことがない場所のことは知らないのね。ちょっと、安心したわ。『ダンジョン』よ」
フェロンさんが、勝ち誇ったように言った。
「ダンジョン……ってあるんですか」
私が本気でびっくりしていると、
「何言ってるの。あるわよ。大樹の森にだっていくつかあるわよ」
「うわー知らなかったです。あれ、どうしてだろ。試験にも出なかったですよ」
「だから言ってんだろう。面倒臭い国だって……」
その言葉でピーンと閃いた。
「……はい、全てつながりました。つまり、木魔のないストラミア帝国には、ダンジョンは多数あるのですね。
だから、ストラミア帝国はダンジョンに関しては、いろいろ面倒なことを言うわけです。そして、ストラミア帝国も受ける試験には、ダンジョンの問題は出さないんですね」
「…………なんで分かる」
「カナデさんですからね。当然です」
つくも(猫)はテーブルの上でへそ天だ。
「なんだか、だんだん腹が立ってきたなあ。おい、カナデ。てめえならどうする。外部魔力に頼らなないで、どうやってダンジョンの強い魔物を倒すか言ってみろ」
「やだなー、そういうの私の国では『八つ当たり』っていうんですよ……でも、そうですねー」
私はしばらく考えてから思いついたことを話し始めた。
「外部魔力は、周りの魔素を取り込む。ダンジョン内には、魔素があるはず。だって、なければ魔物は生存できない。なら……その魔素を使えば、強い魔法が使えるはずだよなー……。
なるほど、ダンジョン内の魔素は、魔物が生存するために使ってしまうんですね。だから、攻撃に使える魔素はない。
ならどうする……。魔石か、魔石を使えば強力な魔法が使える。じゃない、魔道具だ、魔石を使った魔道具を工夫すれば、強力な武器になる。……ですね」
「……なんでそこまでたどり着けるの……おじさん自信無くすよ……」
「同感だわ……」
「カナデさんですからね。当然です」
猫が,ラウネンさんの頭の上にぴょんと飛び乗り丸くなる。
ラウネンさんは、落ち込んでやけ酒を飲み始めた。フェロンさんも付き合っている。
本日5時頃3回目の投稿をする予定です。