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          6 提案

 マリエールとっては思い付きに近い。海を覆って海産物を入手する発想は転生者ならではだろう。それが国の全ての海面を覆う事になるきっかけになるとは思わなかった。

            6  提案


 何時の世でも貧富の差はある。貧しい者、家のない者、孤児達は一定数居るものだ。これは国の良し悪しの問題ではない。こう言い切る事には抵抗があるが、仕方ない事だとマリエールは思う。しかし方策がない事もない。大々的にやる事は控えたいが自己満足の範囲でやる分には許されるのではないか。この世界の海は恐ろしい魔獣が住まう近づけない場所だ。特にクラーケンは陸上にもやって来るため海から100m以内には人が居られない。マリエールは考えた。海の一部を仕切って中にいる海の魔獣達を退治すれば海産物が食べられる。第1王子と提案すれば、第1王子の業績になる。

 早速、第1王子に提案した。半島と半島に挟まれた一辺1kmの正方形の海域だ。これと陸地を囲んでクラーケンの侵入を防ぐ。第1王子にはご負担は掛けませんので場所の使用許可だけとって欲しいと頼んだ。貧民対策にもなる事を強調した。王子には信じられなかった。海はかつて人を拒み続けた領域だ。マリエールには可能だというのか。マリエールには些細な事を王子としようと思っただけだ。貧民の助けに少しでもなればと思っただけだ。

 金銭的には問題ない。冒険者の報酬がある。表向き30層までしか行けていない事にしている。しかしダンジョンの稼ぎはいい。金に余裕がある。王子は国王陛下と宰相にマリエールの案を図った。

「マリエールはこんな事が出来ると言うのか。馬鹿なのか天才なのか。」

国王陛下は呆れ果てた。宰相は、

「出来ると言うなら許可を与えて下さい。国王陛下、第1王子。もし成功したなら、この国に大変革が起こりますよ。」

国王は即断してマリエールに許可を与えた。翌日、第1王子はマリエールに許可がでた事を告げた。

 一ヶ月後第1王子とマリエールは海辺の街を視察している。宰相も同伴している。漁港や養殖場、採卵場、孵化育成場などを見学して海産物を食べた。宰相は、

「これは美味い。食べた事がありませんよ。こんな美味い味、マリエール様は凄い事をしますね。」

煽てられたと思ったマリエールは、

「誰だって出来る事です。少しお金は掛かりますけどね。それだって海産物を売ればお金に成りますから元が引けます。」

実際かかっているのは貧民の人件費ぐらいで売り上げの方が何十倍何百倍ある。国王は、第1王子とマリエールの業績とした。

 国王陛下は第1王子とマリエールに拡張を命令した。一気に100倍の規模の面積の事業になった。マリエールが14歳になった時にはこの国の海面は開発し尽くされ、海産物が国民食になりそれを扱うマリエール商会が国一番の総合商社になるきっかけがただの思い付きだった事はあまり知られてない。

 しかしこの事業で多くの人が救われたのは確かだ。ロバートは腕のいい鳶職だった。医療も発達しておらず、社会保障制度もないこの時代、建築作業者にとって怪我は一瞬で生活基盤を失う原因だ。プライドが地上の清掃仕事を許せなかったのも転落の原因だ。ロバートにとって家族を貧民にしてしまった自責の念は強い。足は治っていないが養殖の作業に支障はない。兎に角必死に働いた。妻も子ども達も地獄から抜け出す事に必死だった。久しぶりにロバートの誕生日が祝われた。地獄から生還した事を実感した。

 この事業によって救われた人は多い。ロバートは優秀な鳶職だったが怪我のため職を失った。この事業に参加して救われた。

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