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小さな村の小さな英雄達5

 洞窟の奥までたどり着くとゴブリン共と一匹のホブゴブリンがいた。

 ホブゴブリンの姿を見てこれまでのゴブリンたちの動きに納得する。


「あいつがボスか」


 如何にもな杖を持ちローブを羽織ったホブゴブリンが騒ぐように話すゴブリンの話を聞いてい怒る。

 ゴブリンの一匹の頭を掴みあげると喚くように呪文じゅもんを唱える。

 するとホブゴブリンの手の平から炎が噴き出す。

 捕まれたゴブリンは、熱に苦しみ暴れる。

 そして、ホブゴブリンは、ゴブリンを適当に投げると他のゴブリンに指示を出した。

 ゴブリンたちは、慌ただしく駆け出して来る。

 全部で七匹、隠密で仕留めるのはかなり難しい。

 なのでここは、水鏡を使う。

 ゴブリンたちの前にゴブリンたちと同じ大きさの水鏡を作り出す。

 ゴブリンたちは目の前に現れた水鏡に驚く。

 その隙に魔法を展開する。


『身を映す愚かな者どもを連れ去れ、魔鏡召喚

 現れろ触手アクアウィップ


 水鏡から出て来た液体状触手がゴブリンたちの口を塞ぎ体を絡め取り水鏡の中に連れ去る。

 ……誰得な絵だが、手っ取り早い手段が思い浮かばなかった。

 この魔法は対象を閉じ込めておく間魔力が消費され続ける。

 たいしたことが無い消費量だが、無駄は出来る限り省きたいので残ったホブゴブリンはさっさと倒すことにする。

 呪術師が相手だ。

 倒す直前ほど危ないからな。

 こちらの存在が気付かれる前に仕留めるよう皆に伝える。

 するとマリアが隠密魔法を解いて訊ねてくる。


「私が隠した方がいいのでは?」


 マリアの意見に首を横に振る。


「今回は相手が一匹で、即座に倒せる必要があるからこれを使う」


『魔鏡よ対となり世界をつなげ』


 僕達の前とホブゴブリンの後ろに鏡が現れる。


「カナタ、鏡から向こうに行ける。

 行ったら一旦待機だ。

 ホブゴブリンの前に鏡を出し注意を引きつけるからその時に首を切り鏡に向かって突き飛ばせ」

「分かった」

「ちょっと、私たちの出番は?」

「無いよ」

「全然活躍できてないのに」


 すねた顔をする姉は可愛いが、呪術師は死ぬ間際が一番厄介なんだ。


「姉さんが活躍できてないのは、うまくいってる証拠だよ。

 姉さんは、切り札だからね」


 あからさまにおだててみる。


「ふ、ふん、分かってるわよ。

 いざというときは任せなさい」


 ……ちょろいなぁ。


「うん、いざというときは頼んだよ」


 まあ、ある程度鉄火場に慣れた方が良いのだけど術師の類が前線に出ることほどバカなことは無い。

 つまり前線に出ている僕はバカである。

 ……仕方がないんだよ僕以外は純粋な魔術師だし僕が一番強いんだから。

 そんなことはさておき。


「カナタ、頼んだよ」

「ああ」


 カナタが恐る恐る鏡に入ると向こう側の鏡から出て来る。

 それを確認し鏡を消して新たにホブゴブリンの前に鏡を出す。

 鏡を出した直後、カナタがホブゴブリンの首を半ばまで切り鏡に突き飛ばす。

 鏡の中に呪術師が取り込まれる。

 ゴブリン程度なら触手で引き込めるが、ホブゴブリンは少し大きいし抵抗される。

 なによりあくまでも触手で取り込むのは問題の先送りにしかならない。

 つまり、ゴブリンだけならまだしもホブゴブリンも一緒に戦うことになるのは洒落にならないのだ。

 鏡を出し鏡の中を確認する。

 やはりと言うべきか、ホブゴブリンがゴブリンたちにボコボコにされている。

 よっぽど恨まれていたのかあるいは怖れられていたのだろう。

 ホブゴブリンが力尽きると鏡の中のゴブリンたちが動きを止める。

 呪いだ。

 呪術師には、これがあるから厄介なのだ。

 認識した存在を呪うこと。

 代償が大きければ大きいほど威力を発揮するのだ。

 代償の大きさは自分が大事にしている物ほど大きくなる。

 つまり呪術師が最大の威力を発揮するのは自分の命が尽きようとしたとき。

 そして、その時に呪術師に敵意をもたれている者はとても強力な呪いをその身に受けることになるのだ。

 鏡をのぞき込む僕に姉が話しかけてくる。


「なにしてるのよ」

「ちゃんとうまくいってるか確認したくてな」

「なにが?」

「ゴブリンたちがホブゴブリンを仕留めているかどうかですわね?」

「ああ、その通りだよマリア」

「どういうことよ」


 どうやらカナタ以外で僕のしたことを分かっていないのは、僕の姉だけである。

 ミッシェルもなんで姉が分かっていないのか不思議そうに姉を見ている。


「最初にゴブリンが焼かれたのは見たでしょう?」

「ええ」

「つまりゴブリンたちはホブゴブリンにいじめられてたの」

「それで?」

「はあ、少しは自分で考えなさいよ」

「ゴブリンをいじめていた奴を弱らせてゴブリンと一緒に閉じ込めたんだどうなるかわかるだろ?」

「えっと、いじめられたくないゴブリンがいじめた奴を助けることはないよね?」

「ああ、その通りだ」

「じゃあ、逆にいじめられたくないから倒しちゃう」

「そうだ」

「えへへ、なでてー」


 そう来たか。


「よしよし」

「ちょっと、姉に甘すぎないですか?」

「どうしたマリア急に、今更だろ」


 カナタが戻ってきた時にマリアが発言したためカナタが困惑している。


「そ、それはそうですが」

「そんなことより閉じ込めたゴブリンどもはどうなった?」

「この通りだよ」


 鏡にパンチをして割る。

 すると割った鏡から石になった六匹のゴブリンと事切れたホブゴブリンが出て来た。


「なんでゴブリンが石化してるんだ?

 クルスのせいか?」

「こんな悪趣味な倒し方はしないよ

 ホブゴブリンの呪いでやられたんだよ」

「うへ、おっそろしいな」

「だから態々倒したホブゴブリン鏡に入れたのですね」

「ああ、その通りだ」


 マリアの言葉に頷く。

 周りをきょろきょろと見まわしながらカナタが言う。


「それじゃあ、これで終わりか?」

「そうだな、ひとまず村に報告するために戦利品を持って帰ろう」


 戦利品と言ってもゴブリンたちが使っていたのは殆どが棍棒とかで金属製の武器を使って居たのは数匹、それも錆びきった手入れのされていない物だ。

 利益としては無いに等しい。

 まあ、いいこのぐらいのことは予想できていた。

 今回の目的であるゴブリン討伐は表向きの理由で、実は僕だけ他に目的がある。

 そのためにもわざわざゴブリンを鏡に入れたんだから。

 見落としがないかだけ確認して僕たちはその場を後にした。



----------



 空が燃えるように赤くなりあたりが暗くなり始めるころにかがり火をたき始めている村が見えてくる。

 何やら騒がしいのは、僕たちが帰ってきたからだろう。

 村の入り口には、僕たちの親たちと村長が待ち受けていた。


「おお! 無事に帰ってきてくれたか!」


 村長が、嬉しそうに出迎えてくれる。


「ただいま」

「して、どうだった?

 ゴブリンどもは倒すことはできたかの?」

「はい、大きい勢力ではなかったので簡単でした」

「そうか、よかった。

 皆の者、我らが勇者たちをもてなすぞ!」

「「「おー!」」」 

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