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小さな村の小さな英雄達2

 草木が生い茂る森の中5人の子供が物騒な格好で進んでいた。

 と言うのが僕達を客観視したときの見た目だろう。

 僕達は、ゴブリンを倒すために森に踏み入っているところだ。

 本当は、大人か冒険者と呼ばれる職業の人、あるいは領主の兵士の仕事だ。

 しかし僕達は、大人も含めて村の中で飛び抜けて強いため自ら名乗り出たのだ。

 もし僕達が死ぬような怪物がいたのならそれはもう村にいてもやられる事になる。

 早いか遅いかの違いだ。

 そんな行軍中一人遅れていたので声を掛ける。


「姉さんまだ目的地は先だよ」

「分かってるわよ!」


 僕の言葉に元気に応えたのは僕の姉だ。

 彼女の名前はアリスと言う。

 炎魔法を扱うことを得意としている彼女は僕より身長が低く初対面の人から見れば妹と勘違いするかもしれない。

 その身長のせいか身体能力が低めだ。

 だからどうしてもこういった移動するとき彼女は遅れてしまう。


「あいつらが悪いことする前に倒しに行くんだろ。

 それとも姉さんもうへばったの?」

「貴方達が早すぎるのよ!」

「アリスが、遅いの」

「うるさいわよミッシェル!」


 ミッシェルは、僕達の隣に住んでいる幼馴染みだ。

 おっとりとした性格の

 彼女の頭には、小さな鳥が止まっていてとてもファンシーな見た目になっている。

 因みに小さな鳥は、ただの小鳥ではなく風の精霊でかなりの力を持っている。


「まあまあ、少し休みましょう。

 付いたときに疲れてたら戦いが大変になります」

「マリアの言うとおりだよ。

 そろそろ一休みしよう」


 マリアが休むように進言してきてカナタがそれに追従する。

 マリアは、光魔法が得意で回復が出来る存在だ。

 お淑やかな性格で、何かもめごとが起きた時に仲裁役になる事が多い。

 皆の折衝役である。

 カナタは、僕と同じく前衛で戦う。

 主に敵の注意を引き受けるので防御力を高めることの出来る土魔法を軸に戦う魔法剣士だ。

 僕、アリス、ミッシェル、マリア、カナタの五人が今のパーティーのメンバーである。


 前衛が二人、後衛が三人とややバランスが悪く感じるが、実際の所、後ろの三人も近接戦闘もそれなりに強いので前衛、後衛の区分は余り意味が無い。

 男であれば女性を護るのは当然なので僕とカナタが前衛として戦うことななっている。

 僕は、腰に吊していたガラスで出来た水筒を姉に渡す。


「ほら、これ飲んで一休みしよう」

「ありがとうクーは飲まなくて良いの?」


 ああ、クーは僕の呼び名だ。

 クルスと言う名前だが、姉だけは僕のことをクーと呼ぶんだ。


「勿論飲むよ」

「じゃあ先に飲みなさいよ。

 補充もしないといけないでしょ?」

「そうかな?」

「そうよ」


 姉さんの言い分に首を傾げつつも少し喉が渇き気味なので軽く水を口に含めて飲む。

 水筒の中には僕が生成した水が入っている。

 川の水はそのまま飲むのはあまり好ましいことじゃない。

 別に飲んだからと言って何があるわけでもないが、僕の改造計画に狂いをきたすわけにはいかないので成分が分からないものは極力接種を控えるようにしている。

 水筒を姉に渡して他の三人を見る。

 三人は各々自分で水筒を持っているためわざわざ僕が渡す必要もない。

 しかし、僕が持つ水筒は、常に冷やしているので羨ましそう見ることは仕方ないだろう。

 全員分の水筒を持つわけにも行かないしね。

 一息ついたところで手を叩き注目を集める。


「さて、一息つけたことだし、この後は戦闘あるのみだから調整しておくか」


 僕の言葉に一人が渋い顔を一人があからさまに嫌そうな顔をする。

 まあ、嫌そうな顔をしているのは姉なのだけどね。

 特に気にしてない様子でカナタが僕の前に立つ。


「さっさと終わらせて行こうぜ」

「話が早くて助かるよ」


 僕は、彼の胸に手を当てる。


「ぐっ」


 カナタが少し苦悶の声を漏らす。


「はい、調整完了」

「早いな」

「まあ、戦闘前に本格的に調整するわけには行かないからね。

 ちょっとしたクロックアップだ。

 君はスロースターターだからね。

 いいかい、カナタ。

 重要なのは、如何に自分の中に力を溜め込むかだ」


 僕の言葉にカナタは頷く。

 逸る心を抑えて解放の時を待つ。

 何、カナタは既にそれをすることには慣れている。

 そう調整してきたから。

 戦闘に入る頃には、最高のコンディションになっているだろう。


「次はミッシェル」

「はいなの」


 僕の呼びかけにミッシェルは手を上げて返事をして、僕の前までさっと来る。


「じゃあ、目をつぶって」

「はいなの」


 返事をしてミッシェルは、目をつぶった。


「僕が開けて良いと言うまで目を開けちゃ駄目だよ」

「はいなの」


 僕は、ミッシェルの目に被せるように顔に手を当てる。


「いいかいミッシェル。

 重要なのは、目に頼りすぎないことだ。

 風を空気の流れを感じるとるんだ」


 僕の言葉にミッシェルが頷く。

 良い子だ。

 言われずとも空気の流れを感じているようだ。

 僕は、数秒間した後、眼から手を離す。


「さて、もう目を開けても良いよ」


 僕がそう言うとミッシェルは、ゆっくりと瞼を開ける。

 そして少し困った表情を浮かべる。


「なんと表現したら良いかなぁ?

 いつもより空気が濃く感じる」

「ああ、それでいい」


 霊獣使いは、それぞれ相棒となる霊獣と感覚が近くなる。

 風の霊獣使いであるミッシェルは、風を感じればより霊獣の感覚に近くなる。

 あとは自分を保てればそれでいい。

 まあ、まだそれが必要な段階までは来ていないんだけどね。


「次はマリアだ」

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