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城塞町の鏡(凶)魔術師 side black

 仮面を被った少年が連れてきた少女は、整った顔をしており見た目にはとても愛らしくそして可憐だった。

 真っ白な髪に透き通るような素肌が儚さを幻視させる。

 奴隷として売るにしても途轍もない価値になるだろう。


()()()()で造った子だけどとても気に入ってるんだ。

 ほら自己紹介して」

「……フランです」


 この子の何所がつぎはぎなのかは分からないし、何故眼帯をつけているのかも分からない。


「この眼帯は、この子の力を抑えるためだよ。

 基本的に外さないようにね。

 まだ制御出来てないみたいだから。

 この子が良いと言うまで外さない方が身のためだよ」


 楽しそうに話す少年。

 不穏な言葉は無視して訊ねる。


「で、その子の面倒を見ろと?」

「ああその通りだよ。

 モリモトは話が早くて良いね」

「分かった。

 何か注意すべきことはあるか?」

「さっき言った眼帯を外さないようにすることだね。

 僕的には外れた方が楽しいんだけど」

「それは、分かっている。

 十二分に注意するさ。

 他に気にすべき点はあるか?」

「そうだね強いて言うなら手は出さない方がいいよ」

「言われなくても出す気はねぇよ」


 鏡の中の世界を見た後じゃ、こいつが連れて来る人間を抱けるわけねぇだろ。

 俺達はそこまでイカれてねぇ。


「何で?

 こんなに可愛いのに」

「見た目で欺される気はねぇよ

 何が、()()()()()()分かったもんじゃねぇ」

「ははは、よく分かっているじゃないか。

 まあ、用心棒代わりにはなるし最低限家事は出来るように教えているからその程度に使ってあげて」


 用心棒、ね。

 強化されている俺達より強いということか。

 なおのこと手は出せねぇな。

 更に言えば監視役とも言える。

 ただ見た目が見た目だけに悪目立ちはするだろうな。


「他の奴に挨拶するには嘗められそうだな」

「嘗められる?

 いや、こんなに可愛いんだからステータスになるよ」

「それもそうだが、見た目の可憐さを利用するのは貴族と娼婦だけだ。

 中途半端な力しか持たない裏の人間にはあまり縁は無いステータスだ」

「見てくれで威圧するならは厳つい顔の奴を雇えばいい話だよね?」

「……確かにな」

「厳つい方も僕が用意しようか?」

「それくらいはこちらでやるさ」

「流石、裏社会のボスだね」

「小さな町のだけどな」


 目の前の少年がこの程度の町で収まるほどの人物でないのは重々に分かっている。

 少年の目的は分からないが、人の敵ではないことは確かだ。

 倫理と道徳からほど遠く。

 しかし、最も人のことを知っている。

 死霊術士が可愛く見えるほどにこの世の道理から離れた存在。

 故に恐ろしくされども安心出来る。

 この世の不条理を上塗りする。

 この少年についていればなんでも出来そうなそんな借り物の万能感。

 しかし、傲ってはいけない。

 傲ってしまい少年の怒りに触れれば、待っているのはあの地獄のような場所だ。

 そこまでのことをしてないと言っても関係ない。

 少年は、俺達にとって新たなる不条理だから。


「その子の面倒は見るが、その子を預けに来ただけって訳ではないだろう?」

「まあね。

 今度公都に向かうことになってね。

 どうせなら一番学習している君に探して貰いたいんだよ。

 裏側の社会構築するのに使えそうな人をね」


 ああ、あの絶望を他の人に与える役割か、悪くはない。

 俺達だけあの理不尽を受けるのは納得がいかなかったんだ。


「分かった。

 しかし、ここはどうする?」


 問題点はそこだ。

 俺がここを離れれば間違いなく好き勝手する奴が出て来る。

 ただでさえ下の奴らは、頭の悪い奴らばかりなのに上の方まで動き始めるとまた最初の面倒くさい処理をしなくてはならなくなる。


「その点は大丈夫だよ。

 ケン、入って来るんだ」


 呼ばれて来たのは、俺達と瓜二つの人物だった。

 俺達の驚く顔を見て満足そうに続ける。


「君そっくりに造ったからね。

 それにこれだ」


 少年が取り出したのは透明な球だ。


「遠くに居る人と話が出来る不思議な球だよ」


 その言葉を聞いた俺達に衝撃が走る。

 何故ならもし少年が話すことが本当なら国宝クラスの術具アーティファクトと言うことになる。


「これだけならまあ、まだこの世界にあるものだからね。

 最後にこれを渡しておくよ」


 そういって少年が渡してきたのはモノクルと呼ばれる片眼鏡だった。


「それの名前は精神交換機サイコチェンジャーと言ってね。

 ケンと精神を入れ替えることが出来るんだ。

 君たちにとっては相性が良いよ。

 誰か一人の精神を入れ替えるだけで良いからね」


 さらっととんでもない物を渡してくる。

 話は理解できたが、理解したくなかった。


「普段はケンを使ってくれても良いし使わなくても良い。

 ケンは演算能力に特化させている魔術師だから戦闘で使う場合は、後衛に立たせることをおすすめするよ」

「分かった」

「用意が出来たら勝手に公都まで行ってくれればいいよ

 何か必要なのであればフランに言ってくれれば良い。

 彼女が見聞きしたことは僕に届くからね

 何か聞きたいことは?」


 疑問に思っていた部分を訊ねる。


「ケンは、俺達に入れ替わっているときは魔術は使えるのか?」

「ああ、そうだね。

 君たちの体でも使えるよ」

「具体的にどんな魔術が使えるんだ?」

「触れたものを破裂させることが出来るんだ凄いだろう?」


 少年が言った事に絶句する。


「……それは、人に対して使えるのか」

「生物非生物問わず破裂させられるんだけど魔力が篭もっているものに対しては効果が小さかったね。

 だから、魔術師には効果がかなり薄いから一応土魔術も覚えさせている。

 基本的に魔術師として立ち回り魔術師だと思って魔術的防御が低い者が近付くとパンッて弾ける魔術を使うように訓練した。

 君たちの体で使ってもらう時はうまく使うんだよ」

「あ、ああ、分かった」


 本当のことを言っているということは重々承知しているが、見た目が少年に見えるため言っている内容が子供の戯れ言に聞こえてしまう。


「それじゃあ僕は戻るよ」

「ああ、じゃあな」


 少年は、普通に扉から出て行った。

 それを見送り俺達は盛大に息を漏らした。

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