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鏡魔術師 地下 sideカナタ

 村に着くとアリスが燃えている家に向かって火を放っていた。

 その行動を見て意味が分からず止めようと近づく。

 しかし、クルスの使い魔が飛びついてきたので歩みを止め顔から剥がす。


「何すんだよ」

「今は近づかない方が良いよ」

「しかし、あれを止めさせないと」

「僕が頼んだことだ」


 その言葉に思考が止まる。

 何故という疑問符が浮かぶまで


「炎が何故燃えるか教えたよね?」

「ああ、空気中の酸素を炭素と結合する科学現象だろ」

「その通り、つまり酸素が無ければ炎は燃えなくなるんだよ」

「それが家を燃やすことにどう繋がるんだ?」

「ただ燃やすだけじゃ意味が無いけどね。

 今回は、風魔術もあるから外界からの酸素の供給を止めることが出来る」

「やっと追いつきました」


 振り返るとマリアとミッシェルがいた。

 ミッシェルは鏡をみて魔術を行使し続けている。

 何をしているか最初は分からなかったが、燃える家の煙が真上に上っている所を見ると空気の壁のような物を作っているのだろう。


「ようやく酸素が無くなったみたいだ」


 クルスの言葉を聞きアリスが燃やしている家を見るとみるみるうちに火の勢いが弱まっていく。


「ミッシェル、まだ魔術を解いたらダメだよ」

「うん」


『地脈につたわる生命の放流よ。

 クルスの名の下に水の力を与えたまえ。

 月のもとに願うは水球なり

 鎮火せよアクアボール』


 クルスが珍しく詠唱してから魔術を使う。

 出て来た水の球は、炎が見えない程度まで弱まった家全体を包むように落ちた。

 水球は形こそ多少変わるが、スライムのようにうねうねとして家を覆う。


「よし、完全に鎮火したね。

 ミッシェルありがとう、魔術を解いてもいいよ」

「他の燃えてる家はどうするんだ?」

「そのままにしておく」

「俺の家もあるんだぞ!」

「分かってるよ。

 でも僕たちが生きている所を誰かに確認されるわけにはいかないんだ」

「じゃあ、何でこの家は消火したんだよ」

「見ていれば分かるよ」


 クルスがそう言うと家を覆っていたスライムみたいな水球がズレていき家の跡には、鉄の床が出て来た。

 いや、鉄の扉か?

 クルスが鉄の扉に触れると扉がひとりでに開いた。

 扉の下には地下へ続く階段があった。


「万が一の時のために用意していた避難口だよ。

 流石に村人全員の分は用意できなかったけどね」


 クルスが、いろいろとこそこそしていたのは知ってはいた。

 しかし、こんなものを用意しているとは気が付かなかった。


「いつの間に用意していたんだ?」

「君たちを改造チートを施した時からだよ」

「それじゃあ、かなり前からあったのか」

「そう言うことになるね」


 クルスは小さい体をアリスに預けるように飛び上がるとアリスは、しっかりと抱き留める。


「さあ、行こうか、皆を待ってるよ」


 クルスがそう言うとアリスが先頭となり階段を下っていく。


「でも扉は良いのか?」


 俺の疑問にクルスが答える。


「大丈夫だよ。

 特定の魔力が近くに無いと出現しない仕組みだしもし気付くような存在が居たとすれば僕としても本気で対応しなきゃならない存在だからね。

 その時は、その時に考えるしか無い。

 だから心配無用だよ」


 不安が若干残る言い方が気になるが、クルスが大丈夫と言う以上俺は信じることしか出来ない。

 階段を降りきると開けた場所に出た。


「さあ、着いたよ」

「ここが避難所?」

「そうだね」


 地下とは思えない明るさに驚いた。

 しかも、村と比べてかなり住み心地が良さそうな空間になっている。


「取り敢えず、助かった人は、一カ所に集まって貰ってるから行こうか」


 クルスの使い魔を抱えたアリスを先頭にして正面にある扉へ向かう。

 扉を開くと大きな円状のテーブルがあり知っている顔が並んで座っていて、俺は安堵の息を漏らした。

 両親とも無事だったからだ。

 そして、ここに居ると思ってなかったクルスの姿もそこにあった。



----------



「みんなおかえり」


 僕が、そう言うとアリスとミッシェルが飛び込んできた。

 ああ、アリス一応その使い魔は、僕の半身みたいな物だから放り出さないでほしい。

 マリア、ナイスキャッチ。


「どうして今まで姿を見せてくれなかったのよ!?」


 姉さんの強い非難の声に謝りつつ説明する。


「ごめん、やることがあったんだ。

 それに万が一にも僕が、生きていて君たちと一緒に居るところを見られるのは不味かったからね」

「そんなに困ることなの?」

「ああ、僕が何故生きているかを突き止めようとする輩が現れるととても困るからね。

 その危険性は回避したかったんだ」

「クルスなら何とか出来たでしょ!」

「姉さんそれは買い被りすぎだよ。

 今はまだ大丈夫でもいつバレるか分からないからね

 僕は、この後姿を変える」


 僕の言葉にアリスとミッシェルは、嫌そうな顔をする。


「そんな顔しないでくれよ。

 別に二度とこの顔を見られなく訳じゃないから」

「クルスの魔法?」

「そうだよ」


 ミッシェルの問いかけに首肯する。


「皆にも掛けるのですか?」


 使い魔を抱えたマリアが尋ねてくる。

 皆というのは、家族達の事だろう。


「外に出るときはそうなるけど、基本的にはこのままかな。

 皆が、外に出られるようにするには、それこそ誰かが領主レベルの権力を持つ必要があるよ」


 僕の言葉に幼馴染み達は、苦悶の表情を浮かべた。

 まあ、家族をこんな空間に閉じ込めたままなんてとても嫌だろう。


「領主になるには、どうしたら良いの?」

「僕が知っている限りでは、冒険者ギルドに登録して冒険者ギルドのギルドマスターになること。

 領主に養子にしてもらい跡を継ぐこと。

 そして、開拓地で開拓して新たな土地の領主になること。

 以上の三つかな」


 まあ、土地を持つだけならいくらでも方法があるが、管理者レベルになる必要があるからね。

 そのレベルとなると限られてくるのが実状だ。


「その選択肢ですととれる選択は一つだけに思えますが」

「その通りだよマリア」

「どうして?」


 ミッシェルが不思議そうに質問してくる。


「単純な話、まず領主の養子になるには、条件を満たす必要がある」

「条件?」

「ああ、領主、言い換えれば貴族の養子になると言うこと自体は、有ることなんだけど何処かの知らない誰かを養子にする何てことはあったことが無い。

 だから、ツテのない僕らが領主の養子になる何てことは不可能に近いんだ。

 そして養子になるための条件だけど分からない」

「ええ?」

「おいおい、持ったぶっといて分からないのかよ」


 カナタが野次を飛ばしてくる。

 まあ、気持ちは分かるよ。


「前提条件として養子が必要な貴族がいることがあるからね。

 その貴族の要求する条件が最低限の条件だからまずは、養子が必要な貴族を探さないといけない」

「まどろっこしいな」

「それじゃあ、私達は冒険者になれば良いのね」

「結論から言えばそうなるよ姉さん」

「それならそうと言いなさいよ。

 細かいのはよく分からないしこれからも使い魔として一緒にいてくれるんでしょ」


 うん、頼られるのは嬉しいんだけど主体性が無いな。


「まとめると冒険者になり知名度を上げて領地を貰えるように活躍すれば良い。

 と言うことでよろしいでしょうか?」

「まとめてくれてありがとうマリア。

 まあ、そんなところかな」

「それでは、今後の方針は、冒険者になり知名度をあげ貴族になる事で良いかしら?」

「それでいいわよ」

「賛成」

「そうだなそれでいい」

「それでは、その方針でリーダーは、誰がやりますか?」

「マリアでよくないか?」

「そうね、それがいいわ」

「賛成」

「……いいでしょう。

 クルスさん良いですか?」

「勿論だよ。

 マリア頼んだよ」

「はい」


 マリアは、僕の言葉に嬉しそうに応えた。


「ところで親父たちは無事なのか?」


 話が区切りを迎え次の話題へと移る。

 勿論、家族達の身の心配だ。

 いくら僕が幼馴染みだと言えども自分の目で確かめないことには安心出来ないだろう。


「ああ、勿論だよ。

 それぞれ部屋が割り振られてるから案内するね」

「分かった」


 僕を先頭に奥へ進んでいく。

 さて、どう説得したものか。

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