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殲滅 sideカナタ

 最初に仕留めるのは、集団のトップ。

 それが出来たら大抵の集団は、混乱する。

 ただし、バックアップが居ると立て直しが早くなる。

 とは言え今回はそれはないみたいだ。

 怒りが頭を埋め尽くした時、自分に異変が起きた。

 腕は禍禍しい甲殻に覆われて視界が今まで以上に開けた。

 そして、村までまだ距離があるのにしっかりと敵が見える。

 あの姿は、明らかに盗賊然とした格好だけど違和感がある。

 略奪らしきことをしているように見えないからだ。

 何より何所から現れたか分からないオーガとの戦闘を見るに規律があることも分かる。

 あの戦っている人物が一番強い人物と見ていいだろう。

 あれより強い奴となるとクルスの力を借りる必要が出て来る。

 とりあえずここからでも矢を撃ちこめば敵に当てる事は出来るだろうけども致命傷に出来るかどうか。

 戦闘中の動き回る的に当てるのは難しい。

 狙うとすれば、戦闘後一息つくタイミングだ。


 戦っている男がオーガの間合いの外で剣を薙ぐような動作をするとオーガの体が上下に切り分けられる。

 何らかの魔法か魔道具だろう。

 真っ二つに分かれたオーガの頭に剣を突きつけ何かを呟くと剣の先から黒い槍が飛び出しオーガの頭を貫く。

 そして、オーガの頭が弾ける。

 男が勝ち鬨の声を挙げると回りも叫ぶ。

 ここだ。


 弦を引き狙いを定める。

 そして離す。


 放たれた矢は真っ直ぐ目標に到達する。

 矢は男の頭に突き刺さる。

 頭に矢が刺さった男は倒れた。

 唐突に起きたことに困惑してかここまで聞こえてきた声がなくなる。

 さて、ここからが本番だ。

 動きを止めた部下たちの上空に向かって矢を放つ。

 矢には鏃を入れた袋を付けている。

 それを複数放ちそして唱える。


『鏃に宿れ、尖雷』


 袋に入った鏃が弾けるように敵の集団に降り注ぐ。

 この攻撃はあくまで敵の動きを止めるためのものだ。

 当たらなかった者から優先的に矢を打ち込んでいく。

 逃げ出す者もいるが、走る程度の早さなら仕留めることが出来るので問題ない。


「あー、やっぱりそうなるか。

 けれど、思ったより冷静そうでよかったよ」


 直ぐ隣から声が聞こえた。


「クルスか」


 横を見ると今は使い魔として動いているクルスが立っている。


「皆殺しにするつもりかい?」

「ああ、勿論だ」

「せめて一人、そうだな、あの指輪を付けた男は僕に譲ってくれないかい?」

「いや、いいけどよ。

 頭に矢を受けてんだぜ?

 もう死んでるだろ」

「カナタはもう少し目を鍛えた方が良いね。

 目を凝らしてごらん。

 そして、魔力の流れを見るんだ」


 言われたとおり目を凝らす。

 男の魔力を目で受け取るように見る。

 すると男の魔力の流れを見ることが出来た。

 死んでる者には、魔力が流れない。


「何で死んでないんだ?

 確かに頭は射抜いたぞ?」

「咄嗟に障壁を張ったみたいだね。

 威力を殺しきれなかったけど即死にいたらなかったみたいだ。

 死にかけてるけどね。

 ただ、普通の人だったら爆散してたと思うよ。

 その腕で放たれた弓はね」


 自分の腕を見る。

 人とは思えない硬質な甲殻に覆われた腕だ。


「これって、何なんだ?」

「変異性質が感情によっては引き出されたんだ。

 心配しなくとも時間が経てば元に戻るけど深呼吸すれば多少元に戻るのが早くなるよ。

 さて、鏡よ」


 クルスは話が終わったと言わんばかりに簡略化された呪文をとなえる。

 すると頭を撃ち抜かれた男の下に鏡が現れ飲み込んでいった。


「ほっとくと死ぬから少し使い魔と切り替わるね。

 何かあったら使い魔に話しかけてくれ」

「分かった」


 使い魔は緊張が解けたようにくつろぎ始めた。


「さて、これからどうするかな」


 一通り倒せたが、盗賊全てを殺すには多すぎた。

 何人か逃げてしまった。


「標的を確認排除しますか?」


 隣から聞こえてきた無機質な声の方へ顔を向ける。

 黒い霊獣が振り向くように尻尾の下からこちらを覗き込むように見ている。


「そうだな。

 頼めるか?」

「了解しました。

 マスター出番です」


 誰に言っているのかと疑問に思ったが、使い魔の視線を追って合点がいった。

 


「分かってるわよ。

 大体あなた私の使い魔なのに何であなたに指示されなきゃいけないのよ」

「それはマスターがすっとろいからです。

 早くしないと逃げられますよ」

「分かってるわよ。

 ちゃんとサポートしなさいよ」

「それをしなかったら僕の存在意義が無くなっちゃうからしっかりとやらせてもらうよ」


『天を満たせ深紅の真炎』

『対象特定中、……対象確認、誘導準備完了、待機中の魔術を発動要求』

『燃やし尽くせ真紅の深炎』

『魔術の発動を確認、魔術の誘導開始、誘導成功、着弾まで3.2.1、……標的沈黙』


 俺から見えない敵に向けて魔術を誘導されたので着弾の確認は取れない。

 しかし、無機質な詠唱がそれが間違いなく行われたことを信じさせる威容があった。


「ここからよく見えるな」


 思わず感嘆の言葉が出る。


「目に頼ってるようじゃまだまだだね」


 そう言いつつも上向いて得意げにしている霊獣の姿は、かわいげがある。

 相変わらず無機質な声だが。


「敵はもう居ないの?」

「ええ、居ませんよ」


 その言葉を聞くとアリスは、急ぐように村の跡に向かう。

 俺も急いで向かいたいが、ここから見て分かる。

 あの村の状況じゃ、生き残りは居ない。

 枝から降りて村に向かうが、足を怪我たでもしたかのように重たい。

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