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ミモザの花のお屋敷  作者: 白百合三咲
4/9

大広間

 花祭りから帰ってきたキララと春花を出迎えてくれたのは金髪のロングヘアに黄緑のジャケットにズボンの美成年であった。

「あら、ピエールいらしてたのね。」

キララの態度がどこか冷たい。

「これは花祭りのミモザの花ではないですか?僕にプレゼントですか?」

ピエールはキララの手の中のミモザの花を1輪取ろうとする。

「違うわ、これは明日オルガ伯爵にあげるのよ。気安く触らないでくださる?」

キララはピエールの手を振りほどくと2階に上がっていく。春花も会釈しつキララに続く。










 翌日春花はバロンド公爵家のメイドにドレスを着せてもらう。コルセットを腰に巻き、ペティコートを何着も履く。その上お気に入りのからピンクのドレスを着る。髪にはティアラと桃の花の髪飾り。これが春花のお気に入りのスタイルである。

「春花さん」

キララがやってきた。黄色いドレスに髪は夜会巻きに纏めている。

「まあ、その簪。」

春花はキララの頭上に目をやる。昨日買ったミモザの花を簪のように挿していたのだ。キララの傍らにはメイドのナターシャがいた。青いドレスを着ている。彼女も同行することになったのだ。同じブラウンの髪に同じ髪型だ。

 オルガ伯爵の屋敷は歩いていけない距離でもない。しかし少女達の相次いでおきる失踪事件のことも気になり皆で馬車で行くことにした。

 馬車を降りると春花はバロンド家の執事にエスコートしてもらう。前の馬車からはキララがピエールに手を取られ降りてきた。しかしどこか機嫌が悪そうだ。その後ろをナターシャが着いていく。



 舞踏会の会場になったのはシャンデリアが輝く大広間だ。広間へと続く階段をエスコートされながら春花は歩く。日本にも鹿鳴館という舞踏会のためのホールができたことは知っていたが春花は訪れたことはなかった。

 オーケストラの演奏が鳴り響くとと共にオルガ伯爵が階段を降りてくると春花の元へとやって来る。白い軍服姿の貴公子だ。

「貴女が日本から来たお嬢さんですか?」

「はい、大橋宮春花と申します。本日はお招き頂きありがとうございます。」

春花はドレスのスカートを摘まみお辞儀をする。

「バイオレット・ド・オルガです。」

オルガ伯爵は春花の手を取ると甲に口づける。

「お嬢さん、私と踊って頂けますか?」

誘いは嬉しい。しかし春花はキララの方を見る。

「あのわたくしよりもキララさんを。」

「春花さん、私は後でもいいわ。どうぞ行ってらして。」

春花はオルガ伯爵の手を取る。キララはピエールと踊り出すがやはりどこかむすっとした表情をしている。

「お嬢さん、お友達が心配ですか?」

躍りながらオルガ伯爵が話しかける。

「ええ、キララさん彼の前だと不機嫌で。」

「まあ、喧嘩でもされたのでしょう。彼はキララ嬢の婚約者ですから。」

「婚約者?!」

春花は訳が分からなくなった。婚約者がいるのにオルガ伯爵を好きになるのか?

「といっても本人達の意志を無視して親同士が決めたのですから。」

その時


落雷音がすると会場は真っ暗に包まれる。

「きゃあ!!」

「お嬢さん」

春花はオルガ伯爵に抱きよせられる。 

会場は騒ぎになっている。

 屋敷の執事がとっさに灯りを入れてくれたため騒ぎはすぐに収まった。しかし


「キララさん?!」


広間にキララの姿はなかった。

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