第七話 冒険者ギルドにテンプレ無し。
ようやく書けました。
ふぅ~。
ザバルティが11歳の誕生日を迎えた翌日の事である。
ザバルティは父アルカティの執務室に呼ばれていた。
「お時間です。」
「うん。」
ザバルティはミーリアに先導されて父アルカティの元へと向かった。
「失礼致します。ザバルティ様とお連れしました。」
「入れ。」
ミーリアに扉を開けて貰いザバルティは中へと入る。
執務室の中にはアルカティだけでなく、マカロッサ子爵家の騎士団のガルバ・セルフラン団長が筋骨隆々の身体にプレートメイルを完全装着した姿でアルカティの左手側にビシッと立っており、逆側にはロングローブを着た優男であるダルビット・フォラン魔術師団団長が杖を持って立っている。
さらに、教育係のジューネにキーファとポワロもいる。
そして、ザバルティの専用従者となっているロバートにアリソンにトーマスが壁際に立っていた。その彼等の横へとミーリアも並んだ。
ザバルティはそのまま父が座る執務用の机の前まで進むと、父アルカティは優しい笑顔で出迎えた。
「父上。御用とは何でございますか?」
「ふむ。ザバルティには本日より冒険者としての活動をしてもらう。」
「冒険者でございますか?」
父アルカティは頷いた。
そこからアルティの説明が始まる。
マカロッサ子爵家の子息子女は冒険者活動をする事が決まっている。
一族の掟とも言える【冒険者活動】は修学する13歳より以前におこなう事になっている。
早い者では10歳になって直ぐに始めた者もいるのだが、それは個人差がある。
遅い者で入学前の半年間など様々であるが、例に漏れる事なくマカロッサ子爵家の一族の者は必ず【冒険者活動】をおこなうのである。
目的は二つ。
【自己研鑽】と【社会科見学】である。
その二つを履行できる【冒険者活動】は、マカロッサ子爵家にとって都合の良いモノなのだ。
生粋の貴族家であるマカロッサ子爵家は世間知らずを嫌う。
貿易拠点であり、防衛拠点でもあるマカロッサ子爵領を守り栄えさせる事がマカロッサ子爵家に求められるからである。
「わかりました。彼等も私と同じ様に冒険者活動をするのですか?」
「うむ。もちろんだ。専属従者としての任務のスタートでもある。」
「わかりました。皆よろしく。」
「おう。俺に「はい!」」
ロバートの言葉を遮り大きな声で返事をしたのはミーリアだった。
「えっ?ミーリアはメイドだよね?」
「はい!」
「メイドのミーリアも冒険者?」
「はい!」
どういう事なのか?とザバルティは父アルカティを見る。
アルカティは首を振る。
「本人たっての希望だ。加えよ。」
「はい!」
ザバルティの代わりにミーリアが返事をする。
この場合は代わりではなく、意識を表現しているのかもしれないが。
「危険な目に遭うかもしれないけど、良いの?」
「はい!大丈夫です。訓練しました!私も戦えます!」
ミーリアの言葉は嘘ではない。
事実、暇を見ては訓練に励んでいた。
キーファやポワロなど、教えを乞う相手に困る事はない環境をフルに活用して訓練をしていたのだ。
それこそ血が滲む努力をしたのである。
「ザバルティ。私が許可している。連れて行きなさい。」
「かしこまりました。ではミーリアもよろしく。」
「はい!足手まといにならない様、一生懸命頑張ります!!」
見かねた父アルカティが仲裁するように話をしてザバルティは承諾した。
ザバルティ以下従者達はガルバ団長ダルビット団長に先導されて部屋を出て行った。
それを見送ったアルカティは先ほどまでの泰然とした態度から迷いのある顔へと変化していた。
「ふう。本当に大丈夫なのだろうか?」
「兄者。何度もこの話はしたではないか?」
「そうなのだが、やはりな。」
「大丈夫ですよ~。彼は成長しています。」
心配しない親は居ない。
どんなに強いと分かっていても不安になるのが親である。
指導を担当していたジューネの太鼓判を受けても、不安は拭い去れるモノでは無い。
経験していない事に対する不安は経験して初めて軽くなる。
経験を繰り返してようやく拭えるモノである。
「そうだな。私が信じなく誰が信じるのだという話だな。」
マカロッサ子爵家の家長であるアルカティは自分を奮い立たすために『信じる』という言葉で自分を納得させ、不安を押しのけようとしているという事を周りは理解し、苦笑いを浮かべる。
誰しもが同じ様な思いをしていたからである。
なぜ、こんなにもザバルティが気にかけて貰えるのか?
貴族だから?
長男だから?
美男だから?
神の使徒だから?
超越した能力者だから?
もちろん、それらも要素としてはある。
人に注目してもらえるという点ではそうだ。
しかし、継続的に気にかけて貰えるのには別の要素が大きい。
『素直』なのである。
ザバルティには前世の記憶がる。
その前世において、部下や後輩を多く持っていた。
つまり、人を育て指示を出した経験がある。
そして子供や孫も育てた。
子育てについては時代が許容する範囲が狭かった事もあり、妻に任せっきりの所が大きかったが、子供が大好きだった。
時間的余裕を見つけては子供をかまう様な人間だったのである。
孫に対しても同様に、間接的に関わりを持って育ててきた経験があるのだ。
その経験から、『先達の言う事はまずは素直に行動に移す。』という考えを持っているのである。
実は『素直』に行動を移すという事はとても難しい事なのだ。
経験がある人も多いのではないだろうか?
親の言う事を素直に聞けず、後悔した経験。
自身の経験から子供に伝えても聞いて貰えず、子供が苦しんでいる様子を見た経験。
先生の言う事を素直に聞き入れず、苦労した経験。
後輩に教えた事を後輩が聞かずに苦労している様子を見た経験。
そして、教えてもらっていた事の意味を理解できるのは苦い思いをした後だったりした経験。
それらの経験を存分にしているザバルティだからこそ、『素直』に応じる事が出来るのである。
『素直』に応じられた者達はどう思うのか?
これも経験があるのではないだろうか?
『素直』に応じた者に対して少なからず『好意』を抱くのである。
好きだとまで行かなくても憎く思う事はない。
憎くなければ、気に掛ける。
気に掛けるとアドバイスをしたくなる。
アドバイスを『素直』に受け入れるから『好意』を抱く。
この好循環のループに入るのである。
まさにザバルティの周りの人々がザバルティに対する思いは『好意』にまで昇華されているのである。
そして、さらにマカロッサ子爵家の家風がザバルティに合っていた。
これは『運』である。
この世界において、序列や公的立場による格差は大きい。
地球の様に緩和されていない。
『同じ人間に差などない。』のが基本である。
しかしながら、人間は個体として弱く群れを作る必要がある生物である。
群れを作るとその群れの運営を円滑にする為に代表が必要になる。
代表が必要になると、権限も必要になってくる。
そして権限がつくと権力がつく。
この権力というモノが人間に格差を作るのである。
もちろん、どこかの宗教が言う様な『全て平等である』等はあり得ない。
各個人差があり、全て同じ能力・容姿・環境などあり得ない。
既に産まれ出た時には差はあるのだ。
そこに、人間という生物は先に述べた様に必要に駆られて、群れが発生し、権力が産まれ権力を持つ存在による格差もつき、一筋縄ではいかない社会になっているのである。
そんな中で、『人は人であり、立場による責任や権限はあっても差は無い。』という考え方を基本としているマカロッサ子爵家は、反発する必要もなかった上に、周りの人間と接しやすい環境が整っていた。
この二つが大きくザバルティの味方になって、現状が出来ているのである。
「そうです。彼なら問題ありません。」
ジューネは窓の方を向いてそう言い切った。
ジューネの視線の先、強い日差しが強く差し込む窓には『光の輪』が見えていた。
◇◇◇◆◇◇◇
「いやいやいや。冒険者ギルドに馬車で乗り付けてはダメでしょう?!」
「いいえ。マカロッサ子爵家の御子息であられるザバルティ様であれば、当然です。」
キッパリと言い切るミーリアにザバルティは押され気味である。
助けを求めてアリシアやロバートにトーマスへと顔を向けるが、プイッと顔を反らされてしまう。
「わかった。わかったから、ミーリアも落ち着いて。ね?」
「分かって頂ければ問題ありません。」
『フンス―。』という音が聞こえてきそうな勢いであった。
こうしてザバルティはミーリアの言に従う事になった。
ミーリアは直ぐに馬車の用意をしに行った。
「ちょっと。助けてくれても良いだろ?」
「ムリ―。」
「右に同じく。」
「左に同じく。」
「いやいやいやいや。何でだよ?」
「だってミーリアだもん。ことザバルティ様の事になると、周りが見えなくなる子だもん。無理に決まってるぅ~。」
「それにザバルティ様だって、結局認めたじゃないですか?」
「そうですよ。ザバルティ様が負ける相手に俺達が敵う訳ないですよ。」
事実である。
主人であるザバルティが敵わないミーリア相手に、その従者が敵う訳はないのである。
元々準備していたのか、直ぐに馬車が城の前に用意された。
今日は登録のみの為にフル装備ではなく、それぞれが武器のみ所持しているだけである。
ザバルティも父アルカティより与えられたロングソードを帯剣している。
このロングソードは魔法の武器であり名工の打った名器である。
名前を【マルゼンスキー】と言う。
この世界における魔法の武器とは多種多様に存在する。
属性魔力を付与されていたり、魔法が撃てたりする物もあるが、【マルゼンスキー】に付与されているのは【自動修復】と【高速化】である。
【自動修復】は言わずもがな、自動で剣の状態を修復する魔法である。
【高速化1.5】は所持者の行動スピードを1.5倍にしてくれる魔法である。
【自動修復】は勝手に修復してくれるものだが、【高速化】は自分の意志により発動出来るという魔法であり、所持しているだけで数値アップするというモノでは無い。
貴族様だからこそ持ち得る代物であるのは間違いないが、貧乏貴族ではこうはいかないであろう。
見た目は何処にでもありそうな外見なのだが、刀身を見ると分かるモノには分かる代物となっている。
アリソンは杖『リニアクイン』。
ロバートは幅広の大剣『ラッキールーラ』。
トーマスは長剣『ハードバージ』。
各々が、マカロッサ子爵家の従者に選ばれる存在である為に、それぞれ名工の作の武器を携帯している。もちろん、ザバルティが持つモノ魔法の武器には劣るのだが普通の武器に比べて質の高いモノとなっており、それぞれに銘がつけられている。
貴族だからこその装備品である。
流石に鎧までは装着していない普段着であるが、それも高貴は洗礼された服である。
その上で、マカロッサ子爵家の家紋が確りと刻まれた高級馬車で乗り付ける。
どう考えても、貴族らしい装いである。
「はぁ~。」
前世の記憶を持つザバルティは前世よりの感覚である。
もちろん貴族としての11年間の記憶もあるし、貴族としての考え方も理解している。
理解している事と感情は別なのである。
つまり、恥ずかしいのである。
「どうしたんですか~?」
アリソンがザバルティの溜め息を見て疑問を口にした。
「なんでもないよ。」
パレードをおこなっている身でありながら、恥ずかしいと思う気持ちを持ち続けている自分はいったい?という思いはあるし、『郷に入れば郷に従え』という考え方も持っているのだが、やはり目立つ行為はまだ苦手としていた。
「お待たせしました。」
マカロッサ子爵家の家紋入りの馬車がザバルティの前に到着するタイミングで、ミーリアが戻って来た。
服装もメイド姿から外着へとチェンジしており、腰にはショートソードと巻かれた鞭がぶら下がっている。
急いだからなのか、少し顔が赤い。
が、肩で息をするような事はなかった。
「よし、じゃあ行こう。」
「「「「はい。」」」」
ザバルティはミーリアの装いを見て、腹を決めた。
貴族としての振舞をするという事を。
そして全員が馬車に乗り込むと馬車はゆっくりと動き出した。
人とはちょっとした事でも気持ちが変わるモノである。
しかし、影響力が有るのか無いのかは大きい。
ザバルティは知らず知らずのうちにミーリアの影響を強く受ける様になっているのかもしれないな?と思い一人苦笑いを浮かべ馬車の外へと視線を向けた。
◇◇◇◆◇◇◇
この世界にはいくつものジャポネス帝国の遺産と言われるモノが存在する。
たとえば、『通貨』の様な『物』であったり、『歴』の様な『基準』であったり多種多様な遺産がある。
その中の一つに『ギルド』という『組合組織』がある。
それも統一されたからこその規模で運営されている『組合組織』である。
『組合組織』は国が管轄するモノであるのが一般的であった。
それがジャポネス帝国の統一によって統合された。
つまり元々はジャポネス帝国とういう統一国家による統制を受けていた『組合組織』であったのだが、ジャポネス帝国の崩壊によって国は分断されたのだが、世界規模にまで成長した『組合組織』は残ったのである。
中には分裂した組織もあるのだが、そのほとんどの『組合組織』は世界規模のまま残った。
それは単純にその方が『都合が良い』からである。
そして今の様に国に縛られない世界組織になったのである。
その中の一つに『冒険者ギルド』がある。
世界規模で国に縛られないで存続できた『組合組織』の一つである。
理由は簡単。
人類全体の敵である『魔物』が存在しているからである。
そんな『冒険者ギルド』のギルド員にはギルド証という身分証明書が発行される。
身分証にはランクがつけられており、F級からスタートするのが一般的である。
もちろん例外処置はある。
その一つに『飛び級試験』がある。
その試験は単純明快で『力』を示す事である。
では、冒険者ギルドにおける『飛び級試験で示す力』とは何か?
それは、『戦闘力』である。
依頼はクラスによっては受ける事が出来ないモノがある。
それは冒険者を育成するという観点から出来たルールであり、能力に応じた報酬を払う為のルールでもあり、依頼成功率を上げるモノでもある。
その中でも『人を死なせない』『育成する』という観点から、戦闘力が一定以上あるとギルドが認めた場合に限り飛び級が認められる。
その最初の力を示すというタイミングはこの『飛び級試験』となる。
飛び級試験で受かればD級からのスタートになる訳だが、それにも理由がある。
如何に戦闘力が高くてもそれだけが、冒険者に求められる資質では無いからである。
多種多様な依頼をこなすのが冒険者と呼ばれる存在であるからこそ、罠を見抜くとか、戦術を練るとか、サバイバル技術であるとか、戦闘力だけでは測れない資質も考慮してランク昇級をする必要があるからである。
ちなみに、冒険者ランクにより身分証としての役割を担える範囲が決まっている。
F:登録地の所在地域が所属する領内のみ
E・D:国内全域
C・B:大陸全域
A以上:世界全域(冒険者ギルドが建てられている国に限る)
これは同時に登録者情報の共有がなされる範囲を示してもいる。
F級は何処でも加盟する事が出来る代わりにその地域での活動をする事を制限されてしまうという訳である。
これは、登録地での活動を推進したい所属地域のギルド側の思いと世界規模での貢献をする必要がある本部との折衷案であるが、こうする事で事実的にバランスを取りやすいという側面がある。
その上、国単位での制限がある分だけ、国側としても一定以上の戦力確保をする事が出来て魔物の被害を一律に出来るメリットを享受できる。
高ランカーとよばれるC・B級にA級以上を留めたい国は国として頑張って引きとめる事をする事で確保出来る仕組みになっている為、冒険者ギルドに協力するという形を得やすいという思惑もある。
現実的に、世界規模になっている冒険者ギルド本部が把握するべき冒険者を絞るという意味合いもある。
冒険者ギルドには『本部』があり『大陸統括部』があり、『国統括部』があり『エリア統括部』があり『支部』があり『営業所』がある。
本部:世界全域
大陸統括本部:大陸全域
国統括本部:国全域
領地統括本部:領地全域
支部:街周辺
営業所:町周辺
出張所:洞窟前や村など
それぞれに統括すべき対象が分かれており、権限も役割も違いが有る。
冒険者ギルドは統括をしっかりする事で世界規模の組織運営をおこなっているのである。
ザバルティ一行の馬車が停止した。
マカロッサ子爵家の領都アンバーには領地内を統括する領地統括本部としての機能を果たす冒険者ギルドとなる。
大きさも街に比例している為とても大きい。
もちろん、海に面している領地である事も考慮されており、領都アンバー内には出張所も用意されており、港付近に一つと街の出入口付近に一つで計二つ用意されている。
今回はもちろん、領地統括本部にて登録する事になっている為、街の中央付近にある大きなレンガ造りの建物の前に馬車は停止した。
従者達から降り最後にザバルティが降り立つと、道が開けられザバルティが先頭に立ち冒険者ギルドの建物の中に入る。
すると、一人の職員らしき女性が立っていた。
「ザバルティ様。お待ちしておりました。私はこのギルドで副ギルドマスターをしております。アリーヤと申します。よろしくお願いします。どうぞこちらへ。」
ザワザワする周りを無視して、案内に従って進むザバルティ達は受付を越えた先にある部屋へと通された。
その部屋の中にはドンとソファに座る男が白髪交じりの男が一人座って待っていた。
「ようこそ。冒険者ギルドへ。父君より話は聞いておりますぞ。私はこの領地統括本部のギルドマスターをしておるガルツと申します。よろしく頼みますぞ。」
そう言ってニカっと笑顔を向けて手を伸ばした。
その手を握り返したザバルティも挨拶返してメンバーを紹介した。
どうやら、領地の息子が来ると言う事でギルドマスターが態々出迎える事にした様である。
ザバルティは『面倒くさいな』と思いながらも貴族の務めであると思う事にして対応したのだが、ギルドマスターは最初の挨拶だけで、その後は案内したアリーヤに全てを任せて顔を出さなかった。
その後、ザバルティ達は『飛び級試験』を受ける事になり見事全員合格した。
試験内容は単純で、試験官と呼ばれる元冒険者との一騎打ちでおこなわれる。
武器は木製のモノに換えての模擬戦である。
幼少より訓練に訓練を重ねてきたザバルティ達が苦戦する事はなかった。
「これで皆さま、D級ランクからのスタートでございます。おめでとうございます。」
「ありがとう。」
代表してザバルティが答える。
ここは最初に通された別室である。
試験の後に再度通されて、待たされた場所でもある。
目の前には副ギルドマスターのアリーヤとその横にもう一人ギルドカードを持ってきた女性職員が居る。
「早速ですが、皆様は冒険者活動をされるとお聞きしております。パーティー名などはお決まりですか?」
「いや。まだ決めていない。」
「そうですか。かしこまりました。パーティー名はご依頼をお受けになるまでには決めておいてください。」
「わかった。」
ザバルティは頷き了承を伝える。
パーティー名は冒険者活動をする上でどうしても必要になるモノである。
臨時パーティー以外にはそのパーティー名を利用して活動する事になるからである。
管理するにしても名前がないのは管理しにくいからでもある。
「では、皆様の専属受付嬢をご紹介します。キャミこっちへ。」
「はい。皆さま飛び級合格おめでとうございます。皆さまの専属受付嬢となりましたキャミと申します。以後宜しくお願い致します。」
「こちらこそ。今後は他の冒険者と同じ様に受付に行かせて貰うつもりだ。面倒な事もあるかもしれないが、よろしく頼む。」
「はい!お待ちしております。」
キャミと名乗る受付嬢は頬を赤く染めて頭を下げた。
「それに、ギルドマスターにもお礼を言っておいて欲しい。若輩の身である私の為に、気を遣わせてすまないと。」
「わかりました。お心遣いありがとうございます。」
こちらは副ギルドマスターのアリーヤが請け負う形で返事を返す。
そんなやり取りをした後に、ザバルティ達は待っていた馬車に乗り込み冒険者ギルドを後にした。
こうして、ザバルティ達の冒険はスタートが切られたのである。
冒険者ギルドでのテンプレがないままに・・・。