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ザ・ブラインド  作者: 千勢 逢介
エピローグ
171/172

4

 事件後、リッチーは十九分署の署長代理に就任した。

 相変わらずよれよれのコートを着て、相変わらず煙突みたいに煙草を吸いながら、これまで以上に忙しくなったことをぼやき続けている。それでも、増えた収入を別れた妻子の生活費にまわせると喜んでもいる。彼とは今度、一緒に父の墓参りをする予定だ。


 アルは長い警察官人生において、はじめて無遅刻無欠勤と服務規程違反ゼロ以外の栄誉を手にした。向こう見ずな新人警官の命を救った事務員としての功績だ。

 そんな彼と奥さんのあいだには、もうじき待望のひとり息子が生まれるらしい。


 マクブレイン署長は事件の首謀者として裁判にかけられ、その後有罪が確定。

 膨大な件数にのぼる殺人教唆のかどで終身刑を言いわたされたその翌日、留置所で首を吊って自殺した。刑務所でリンチにかけられる恐怖に屈したからか、それともわずかに残った警察官としての矜持がそうさせたのかはわからない。


 だが一連の計画は、これで幕を閉じた。いまごろ死の国で、マートンと十五年以上前に死んだ前署長との再会を果たしているのかもしれない。


 トチロウはミヤギ氏の葬儀をひっそりと終えてからも、ひとりで<ホワイトフェザー>を切り盛りしている。

 少しずつ立ち直れていることには安心しているが、わたしがたまに店に顔を出すと必ずといっていいほど口説いてくるので、そのたびに誘いをかわすのに苦労させられてもいる。

 それでもときどき祖父が恋しくなるのか、寂しげな表情をのぞかせることがある。


 キャシーは忽然と姿を消したミスター・ウェリントンを思って一週間泣き続けた。

 それからビルを説得してなんとか厨房に入る許可を得ると、ウェイトレスの傍ら<ノアズ・パパ>のコックとして腕を磨いている。

 しばしば彼女の料理の実験台にされている身として率直な意見を言わせてもらえば、いまのところ料理のほうは歌声ほど才能に恵まれてはいないようだ。

 それでも、充実した毎日を過ごしているキャシーを見られるのはわたしも嬉しい。

 ビルも同じ考えなのだろう、真剣に厨房に立つキャシーを見て、以前とくらべてほんの少しだが笑顔が増えた。


 そしてわたしは……

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