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ザ・ブラインド  作者: 千勢 逢介
第三章
159/172

7

「さて、感傷的な話を続けても仕方ないわね」


 わたしはリッチーから端末へと視線を移した。

 画面にはマクブレインが捏造したわたしの遺書が映っていたが、その内容はわたしがいまこうして書いている文章とは似ても似つかない。


〝犯した罪の意識に押し潰される前に、自らの命で神の赦しを乞います〟 


 ご立派なことだ。そんな繊細な人間に刑事が務まるとは到底思えない。

 マクブレインが書いたお涙頂戴の名文を消すのに、少しの躊躇いもおぼえなかった。わたしは端末の電源を落とし、オフィスから持ち出したメモリーカードを引き抜いた。


「マクブレインを連行しましょ。このカードがあれば充分証拠になるわ」

「そうだな」リッチーは頷いた。あの若い警官の面影はなりをひそめ、そこにはいつものぼやきがちなベテラン刑事がいた。「まったく、今日は忙しいったらないぜ。警察署が襲撃されたかと思ったら、黒幕のひとりがまさか自分たちのところの署長だったんだからな。おまけに街のあちこちで捕物劇の大混乱だ。知ってるか? ベッドフォードのほうじゃ一時間前に爆発騒ぎまで起きたんだぜ」


 リッチーの言葉に、わたしは持ち上げていたマクブレインの両脚を床の上に取り落とした。

 胸騒ぎがした。ジョンの家のある方角だったからだ。


「リッチー、わたし行かないと」

「待て、どこに行くんだ。こいつはどうする?」立ち去ろうとするわたしをリッチーが呼び止める。

「あなたに任せる」

「さっき話してた殺し屋のところか?」リッチーは言った。どうやらかなり早い段階から、わたしとマクブレインのやりとりを聞いていたらしい。「なぜそこまで肩入れする?」

「わたしも最初はそんなつもりじゃなかった。でも、自分でもよくわからないけど、ジョンと一緒にこれをやり遂げると誓ったの」


 わたしはそう言うと、リッチーの制止も聞かずに家を飛び出した。

 地下に停めたダッジの存在を思い出したのは、ジョンの家に向かってたっぷり四ブロック分を走ったあとだった。

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