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ザ・ブラインド  作者: 千勢 逢介
第三章
155/172

3

「きみにはこの謀略の黒幕として責任をとってもらう。それできみの職務は完了だ」

「わたしを殺すのね」

「よしてくれ。きみは自分の手でけりをつけるのさ。違法な取締りによって事態に収拾がつかなくなったことに負い目を感じてね。小娘が主犯では説得力に欠けるだろうが、捜査の指揮はわたしが執る。どうとでもなるさ」


 マクブレインがわたしの端末を使って書き残した遺書には、おそらくそうした嘘の告白が記されているのだろう。


〝優秀だったから〟と昨夜ビルの屋上でうそぶいたことが思い出される。


 見当違いもいいところだ。

 マクブレインはアルベローニ・ファミリーへの反撃に打って出る際、つなぎとしてのジョンのお目付け役を必要としていた。そこに相棒との不仲で問題ばかりを起こしていたわたしが目に止まった。

 マクブレインにとって、わたしはさぞ後腐れのないうってつけの存在に見えたことだろう。おまけに問題続きの厄介者を殺人課から遠ざけることもできる。

 今回ばかりは警察も<ザ・ブラインド>の自浄作用の恩恵を賜ったというわけだ。もっとも、排斥された本人としては皮肉としか思えない。


 そしていま、マクブレインはこれを終わらせるつもりなのだ。すべてを闇に葬ることで。


「ジョンのことはどうするつもり?」わたしは言った。マクブレインの目指す結末に彼の話がひとつも出てこなかったからだ。「簡単にはいかないわよ。わたしが請け負う」

「たかが殺し屋ひとりになにができる。それにやつは目が見えない。証言台で告発しようとしたところで、顔もわからないわたしをどうやって指さすというんだ?」

「それも彼を雇った理由だったのね」

 マクブレインは肩をすくめると、「誇っていい。違法とはいえ、きみは結果的にこの街いちばんの悪を壊滅させることができるんだ」


 マクブレインは歩み寄ると、わたしのこめかみに銃を突きつけた。

 わたしを撃ったあと、死体に銃を握らせれば自殺した悪徳刑事のできあがり、というわけだ。


 ジョンに電話をしておくべきだった。

 あるいはティムに身辺警護をしてもらうべきだったか。信頼できる誰かにあらかじめ情報を伝えておけば……わたしにはその詰めが甘かった。


 頭の横で、引き金にかかったマクブレインの指に力がこめられていくのを感じる。わたしは最期の瞬間を待ち、かたく目を閉じた。

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