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ザ・ブラインド  作者: 千勢 逢介
第二章
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113

 半日以上にわたる捜索の結果、署内に爆弾は残されていないことがわかった。わたしたちは安堵のため息をついた。

 爆弾が残されている可能性がかぎりなく低いことと、まったく存在していないこととの差には大きな違いがある。


 この後、爆弾処理班を派遣してもう一度本格的な捜索をするらしいが、わたしはなにも発見されないと予想した。

 サム・ワンの目的が警察署に打撃を与えることだとしたら、それはすでに充分に果たされていたからだ。


 臨時ではあるが、リッチーには引き続き現場の指揮をするよう本部から指示が出ていた。

 とはいえ負傷者の搬送はあらたか終わっていたし、管轄区の対応にはほかの署が応援を出してくれているので、当直以外の者は一時帰宅の許可がおりた。それでも多くの有志が署内に残った。

 わたしは非番だったので家に帰ることにした。署内にとどまって作業を手伝いたい気持ちはあったが、それ以上に署長のオフィスで見つけたメモリーカードの中身を確かめたい思いが強かったからだ。


 日はすっかり暮れ、乗り込んだダッジの中の空気はひんやりとしていた。

 シートに沈むように腰かけ、イグニッションに鍵をさした途端、全身ががくがくと震えだした。いまになって今朝の出来事が、津波のように一気に押し寄せてきたのだ。


 マイクの死、サム・ワンの姿、体をかすめた銃弾。

 あらゆる光景が順序もばらばらに、スライドショーのように脳裏をかすめていく。

 わたしは目をかたく閉じると、両腕を抱きながら震えがおさまるのを待った。


 どれぐらいの時間が経っただろうか、落ち着きを取り戻したわたしはゆっくりと目をあけた。空には月が昇っており、昼下がりから明るい夜へと装いを変えていた。遠くで車のクラクションが鳴り、窓ごしにくぐもった音が届く。


 ポケットに手を入れると、ハンカチごしにメモリーカードのかたい感触が伝わってくる。

 それからわたしはポケットに差し込んだ手をゆっくりと抜き、ハンドルを握った。

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