表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ザ・ブラインド  作者: 千勢 逢介
第二章
122/172

85

   7



 ジョンが語る過去の話も折り返しをむかえた。


 ここでわたしはひとつ告白をしておかなくてはならない。

 いや、刑事としての立場からすれば、これはむしろ懺悔と言えるだろう。わたしは刑事でありながら、ジョンが過去に犯した犯罪の告解を見過ごしたのだ。

 これから、そのあらましを記していこうと思う。物語めかした肉付けまでして彼の少年時代を綴ってきたのも、ひとえにそのためだ。


 これから話すのは、ジョン・リップという男がいかに生まれたかについてだ。

 もちろんこれまで語られてきたのもやはりジョン・リップという少年の半生ではあるのだが。彼は子供の頃に自分自身の名付け親になってからジョン、あるいはジョニーと呼ばれてきた。

 だがそれは、ただ自分のことをそう名乗っていたにすぎない。


 いみじくもジョンは記憶を島に喩えていた。絶海に浮かぶ孤島の話だ。そして、そこに生えたおあつらえむきの椰子の木の話も。

 シシーと別れて娼館の集金係を辞めるまで、ジョンの記憶の小島に椰子の木は生えていなかった。

 ただ種なのか根なのか、そうしたたぐいが地中深くに埋まっていただけ。木が生えるのはこれからだ。


 ここからの話は、いかにしてジョン・リップがジョン・リップとなったか。

 つまりはこうも言える。ただのマフィアの下っ端が、なぜ大都市ニューオーウェル随一の殺し屋になったか。


 つまりここから先は、<ザ・ブラインド>が生まれるまでの話だ。




 運命を司る悪魔がいたとして、それはジョンの人生に多くの罠を仕掛けていた。ほんのいたずら程度のものから、とんでもなく大きく危険な罠まで。


 わたしはそのすべてを、彼の言葉で聞いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ