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姉と弟 ~ 可愛い弟のためならね。~

作者: チャイーR

読みに来てくださってありがとうございます。

久しぶりに書いてみました。

よくあるようなお話ですが、書きたくて仕方なくて勢いで書いてしまいました。

よろしくお願いします。

私の弟が危ない。あの女はおかしい…… 何かが違う。。



半年ほど前に弟である第一王子ジョシュアの婚約者が決まり、王子妃教育のために十日前に隣国の王女であるエストリア王女がやってきた。

以前にお会いした通りの可愛らしい姿であったが、私だけは彼女は何か違うと感じていた。


ずっとおかしいと訴えているのに誰も気づかない。

弟は「大丈夫だよ。ナナ姉の思い過ごしだよ。」と笑っている。


おとなしい性格で甘やかされた姫なのに高飛車なところなどない彼女はすこぶる評判がいい。

元からそういう噂をきいていたからその通りなのだが、私の目はごまかされない。


ずっとずっと機会を伺って、やっと今日。

弟と彼女が王家しか入れない庭を二人っきりで歩いているところを見つけたのだ。

この庭は王家のもの以外入れない。側近たちも庭の入り口で待機している。

この機会を逃してなるものか。

私は先回りをして、二人が来るであろう道の側にある大きな木の上に隠れた。

そして彼女がその下に来た瞬間に、私は飛び降りた。


「お前は誰だ!!」


私はエストリアの頭に飛びかかった。


「ふわぁぁぁぁ。ごめんなさーい!」


次の瞬間、彼女から『ポンッ!』という音がして彼女の頭に犬の耳が現れた。

たぶん、ドレスの下に尻尾も出ていることだろう。


「え?何? 君、獣人だったの?」


ジョシュアはビックリしている。そりゃそうだ。隣国の王女様が獣人なんてあり得ない。

そう、この子は偽物の王女なのだ。



「だから言ったのに! 私の嫌いな匂いがするんだもん!

 どうして、ジョシュアは信じてくれないの!」



「ナナ姉さま、ごめんなさい。

 でも頭に飛び掛かるのはレディとしてどうかと……」


「仕方ないじゃない、こうでもしないと正体を見破れないって思ったんだもの!」


「とりあえず、降りて…… 彼女から話を聞こう。」


「どうするの? 衛兵を呼ぶの?」


「うーん、まずは話を聞きたいんだけど、ダメ?」


「私が一緒ならいいわ。 何かあったら私があなたを守るから。」


「ナナ姉さま、ありがとう。」


そう言って、ジョシュアは私を抱きしめてくれた。

姉なんだもの当然よ!


とりあえず、皆で四阿へと移動する。

そこには休憩するためのテーブルと椅子があり、私はジョシュアの横にぴったりと座る。

彼女は正面の椅子に座るよう言ったが、地べたに座って頭を下げていた。

ジョシュアはどうしよう?って感じで見ていたけど、私からしたら当然だと思う。

思ってることが伝わったのか、ジョシュアはため息をついてそのままで話を始めた。


「で、あなたは誰なのですか? エストリア王女の替え玉さん」


彼女が少しだけ顔を上げた。


「その通りです。私はエストリア様の偽物です。

 しかも、獣人族です。

 私の名前は ココです。平民なのでそれ以外の名前はありません。

 半年前、いきなり攫われて王女様の代わりになれと言われて淑女教育を受けさせられました。

 付け焼刃の淑女教育で王女様の代わりになんかなれないと何度も言ったのですが、聞き入れてはもらえず、家族を人質にとられてしまっていたので、仕方なく王女様のふりをしておりました。

 だけど、平民の私では長いことだませるなんて思っていません。

 でも私が身代わりにならなければ、家族に何をされるかわからないし。

 いつばれるか、怖くて……

 なにより、私は、何故、私が身代わりになったのかわからないのです。」


涙目で頭の上の耳もしょぼんと垂れ下がっている。

見えないが、尻尾も同じだろう。

でも私は警戒を緩めはしない。


「だから、いつも俯くようにしていたのですね。

 それにとても無口な方だからとてもおとなしい方だとばかり思ってました。

 本当は怯えていたのですね。」


「ジョシュア、あなたもう少し用心したがいいわよ。

 この仔、無害なのだろうけど、いけ好かないわ。」


「うん、ナナ姉さまにはそうだろうけど、僕はそう思わないよ。

 家族を人質か……」


ココがボロボロと涙をこぼし始めた。


「ごめんなさい。 ごめんなさい。

 何もできないんです。」


それを見ていたジョシュアが悪い顔をして私を見た。

嫌な予感がする。


「ナナ姉さま。

 あなたの弟の心からのお願いですが……」


私は苦虫を噛み潰したような顔でジョシュアを見る。

この可愛い弟は私の扱いが上手い。

その愛らしく、美しい顔をスリスリと私に寄せてくる。

こうして、お願いされるとどうしても断れないのだ。


「ナナ姉さま。 ココの家族を助けてもらえませんか?

 魔法に秀でた姉さまなら大丈夫でしょう?」


ジョシュアにうるうるとした瞳で見つめてゆっくりと瞬きをされる。

ダメだ。逆らえない。


「…… わかった。

 ココ、あんたの家族って何人?

 どういう顔してるの?」


「わ、私の家族は弟だけです。

 弟は私とは全く似てない、猫の獣人なんです。」


「猫の獣人? 本当の兄弟じゃないの?」


私が確認するとココはすがるような目と祈るような手をする。


「はい、私の弟は私と一緒に捨てられたんです。

 二人でずっと一緒に暮らしてきました。

 アークといいます。」


ずるい、これはずるい。

助けなかったら私が悪者じゃん。


思いっきり大きなため息をついてから、私は四阿の前の空間に魔方陣を描く。


「もう!弟の為だからね!あんたのじゃなくて、私の弟の為だからね!」


空中に浮かぶ魔法陣に爪をひっかけて、飛び乗る。


「□□□□□□□□、☆☆☆☆☆☆!」


私にしか使えない魔法の言葉でココの弟を迎えに行く。



=====================================


「つ、疲れた……」


なんでか、わからないけどあっちに行ったら怒涛の展開となってしまった。


まず、アークを迎えにあっちに転移したらエストリアの部屋で、アークはエストリアの膝枕で寝ていた。

しかも泣き疲れて寝たって感じ!

ちょっとびっくりして立ちすくんでたら、私の姿を見たエストリアが


「ナナ様!!!!」


ってすっとんで抱き着いてきたから、膝の上の子が床に転がっちゃったのよね。

エストリア、いい子だよ、知ってるけど、そのさ、急に抱き着くとかそういうのやめて、びっくりして

毛が逆立っちゃった。


「あー、熱烈歓迎はうれしいけど、ちょっとその仔をうちに連れてくから離れてくれない?」


「ということは、やっぱりココのこと、ばれちゃったんですね。

 じゃぁ、私も連れてってください!」


と嬉しそうにキラキラしたお瞳(おめめ)でいうけど、「じゃぁ」って何よ?


「あなた、うちに来たくなかったんじゃなかったの?」


って聞いたら、必死に頭をぶんぶんと横に振るじゃない。


「お父様の暴走なんです。

 私をお嫁に出したくなくて、無理やりココを身代わりにしたんです。

 私はジョシュア様のところに行くのを楽しみにしてたんです。

 だって、ナナ様がいらっしゃるのですから!」


なんかよくわからないけど、この国の王陛下が、娘可愛さに暴走したのね。

国際問題になるってわかってても、たぶん、理性が本能、いや父性(親バカ)に負けたのか。


ちょっと考え込んでるといきなり扉が開いた。

「しまった!!」と身構えるも、そこにいたのはこの国の王妃様でした。

実はこの人も要注意人物なの。

だって……


「ナナさまぁぁぁ!!!」


って王妃らしからぬ振る舞いで走りこんできて、エストリアごと、抱きしめられてしまった。


この二人義理の親子なのにこういうところ似てるのよね。

だから私は苦手なんだ


何とか二人を宥めて、事の顛末を聞くまで結構かかったんだけど、当のアークはすごいおとなしく、

ジッと床に座って私たちを見ているだけだった。

おとなしい子なのね。というか怯えてる?



王妃様から聞いた話をざっくりとかいつまんで言うと


『今は亡き前王妃にそっくりのエストリア様を手放したくないがため、父性が暴走したバカ王の仕業』


え?ざっくりしすぎ?いいじゃない。それがすべてよ。

今、現王妃様と側近が揃って王を窘めてるところらしい。

ま、王様に協力して甘い汁吸おうってバカが何人かいたから、ちょうどいいので処罰したみたい。

そこのところはあっちの国の事情だから放っておくわ。


で、結局、エストリアは父宛に手紙を書いてこっちに来ちゃったってワケ。


そして、あっちでココと抱き合って泣いてるのがアークで、目の前にいるのが本物のエストリアよ。


ま、これで収まるとこに収まったわね。


私、疲れたから寝るわ。


後のことはジョシュアのお母様の王妃様と私の母の女王におまかせしておけばいいわよね?


え?ダメ? 疲れたんだけど。

……わかったわよ。一緒に説明に行ってあげる。


=====================================


「ほんとうにナナ様はジョシュアのことになると無謀なことをなさるのね。」


この国の王妃様がコロコロと鈴が鳴るような声でお笑いになった。


「すみません、ナナはジョシュア王子のことを本当に弟だとおもっているのですから。」


王妃様の膝の上にいる私の母、妖精猫(ケットシー)の女王が溜息をつく。

そう、私の母はこの国を守る妖精猫(ケットシー)の女王様なのだ。

この国は代々、強い魔法を使える妖精猫(ケットシー)の女王が国守となっている。

そして妖精猫(ケットシー)の主人はこの国の女王か、王妃と決まっている。

だから私の母は王妃様とずっと一緒なのだ。

そして私は彼女の一人娘の妖精猫(ケットシー)の王女でジョシュアより二年ほど先に生まれたジョシュアのお姉ちゃんなの。


実は母たちは最初からわかっていたらしいので秘密裏にあちらの王妃様と連絡をとりあって穏便に事を済ませようとしていたらしい。

が、なかなか事が進められず、あれこれと時間を取られていたら私の暴走である。

怒られるかと思ったらそうでもなかったのは、ことのほかあちらの王様は拗ねていて扱いづらかったから渡りに船?だったらしい。

強硬手段も私がやったのなら仕方ないで済むらしい。

……本当に済むよね?後から色々言わないでね。

心配する私に


「大事にならないよう、陛下にもお願いしておくから、もう大丈夫よ。」


王妃様は私の母の毛並みを撫でながら、微笑んで退室を促してくれた。

よかった。これで大丈夫、やっと昼寝できるわ、と思って扉の方へ振り返ったら


「ナナ……」


母の声が私を呼び止めた。


「なんでしょうか、お母様。」


嫌な予感はするが、首だけは母の方を向く。


「ココとアークをあなたの下へ付けますのでちゃんと教育してくださいね。」


「えぇ?!」


「あなたがこっちに連れてきたんだから、責任取りなさい。

 下のものを教育するのもいづれあなたが女王になる時に必要なことよ。

 ちょうどいいから、ココとアークを立派な侍女と従者になさい。」


「アークはまだいいけど、ココは……」


私の情けない声に笑いをこらえるような王妃様が


「お母様の言う通りよ。

 そろそろ犬嫌いも治さないといけませんものねぇ。」


ととどめを刺してくださった。


茫然とする私をエストリア様が抱き上げた。


「女王様、王妃様。私もお手伝いさせていただいてよろしいでしょうか?」


王妃様はにっこり笑って、


「構いませんよ。協力するのはいいことね。私たちのようになってほしいわ」


お母様は微妙な顔をして


「ナナもいずれエストリア様と一緒にこの国を治めるんだから仲良くね。」


あぁ、私の退路はない。


今、嬉しそうなエストリアは私の長い三色の毛に顔をうずめている。

この子、猫好きなのはわかるけど、私は猫じゃないのよ!

ジョシュア!そこで笑ってないで今度は私を助けて!!!



=====================================


その後、娘の置手紙に


『ココとアークにひどいことするお父様なんて大嫌い!』


と書かれていたのを読んだ隣国の王様が泣きながら詫びに来るのは後日の話。


そしてさらに、ココの「お風呂に入りましょう」攻撃にアークと二人で逃げ回る私たちを

城中が生暖かい目で見るのが日常になるのも後日の話。



稚拙なお話ですが、読んでいただきありがとうございます。

うちには女王様とナナのモデルになった女の子とアークのモデルになった男の子の3匹がおります。

毎日可愛くて仕方ないです。

ジョシュアはナナにしたのは猫の挨拶で、ゆっくりした瞬きは「好きだよ」「信頼しているよ」の合図だそうです。

もし面白かったと思っていただけたら幸せです。


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