第四十四話 ザマンティード
『アメリーへ
元気にしていますでしょうか。
久しぶりに村で会った時から、早二カ月くらいが経とうしています。
村を出てから後の事は話せずじまいになってしまっていたのでこの手紙を書こうと思います。
あの後私はアピロさんと会うためにアルバートさんと一緒に王都へと赴き、
新しい友達との出会いやちょっとした問題に巻き込まれたりしました。
お友達はキャトルズといい、お調子者ですが明るくて優しい魔法使い見習いの子です。彼女は王都の魔法協会でお手伝いをしながら魔法を教えてくれるお師匠様の元で日々学んでいるそうなので、もし王都で会う事があればアメリーともきっといいお友達になってくれると思います。
ちょっとした問題については、一応は解決したし私もケガとかはないのだけど、文字に起こすとうまく伝えられないし長くなっちゃうのでまた今度会った時にお話しするね。
さて、前置きが長くなったけれど本当はアメリーには大事な事を伝えたくてこの手紙を書いています。
アメリーには断った方がいいと言われたけど実は私魔法の学校に……』
「うーん、前置き長すぎるかな。でもいきなり学校の事を書くのもなぁ」
友人への手紙の内容を考えながら、私エーナ・ラヴァトーラは机に向かい筆を走らせていた。
アメリーは私の幼いころからの友人で二カ月前村で起こったとある事件以降、連絡をとれていなかった。
いろいろ彼女にはお世話になってたくさんの心配をかけていたから、流石にそろそろ近状報告を送らないといけないと思ったのだ。
ふと、もう一つの手紙に目を向ける。
小さな蝋燭の光にともされた机の上には既に書き終えた一通の手紙がある。
この手紙アメリーと同じくもう一人の幼馴染にあてた手紙だ。
ウル、私のもう一人の友達。
そして村で起こったとある事件の犯人。
私はその事件に巻き込まれて、初めて魔法というものに関わったのだ。
ウルの起こした村での騒動は私以外に巻き込まれた被害者はおらず
その時に助けてくれたアルバートさんという魔法使いのおかげで一端の終息を迎えた。
その事件の後、ウルは私に謝罪の伝言を残して以来音沙汰がない。
だから、彼女に事件の事はもう気にしていない事と私の近状、ウルが今どうしているかという事、そしてもしウルが大丈夫なら一度会って話をしたい事、その事を手紙に綴った。
(ウル、会ってくれるかな……。会ってくれると嬉しいな)
私が被害にあったとはいえウルも一応は巻き込まれた側ではあるのだ。。
結局のところウルの起こした事件は王都で頻発しているという違法な魔装具によ犯罪事件の延長でしかなかったのだ。
魔装具、それは魔法使いでなくとも魔法を簡単に使う事ができる道具。
本来は魔法使いを補助するための道具らしいのだが、それを魔法使い以外に売って金銭を得ている者がいるという事だ。
ウルは王都での何らかの事情があってそれに手を出してしまったのだろう。
ただ、村での被害者は私だけだが、ウルと対峙したあの時の会話からすると
他にも被害者はいそうではあったため、彼女のその後についても気になってしまうのだ。
(できれば、アメリーも一緒に三人で話ができたらうれしいけど。あと新しくできた友達もいるからもし都合が合うならその紹介もかねてもいいかもしれない)
もしそうなってくれたらうれしいと思い顔に少しだけ笑みがこぼれる。
そのためにもアメリーにはちゃんと現状を理解してもらえる内容の手紙を書かなけば。多分下手な事を書いたら会ってくれるだろうけどものすごく怒られそうだ……。
そんな時だ、リンリンリンとこの小さな部屋に尋ねてきた人物がいる事を告げる呼び鈴の音が鳴り響く。
私は慌て書きかけの手紙を引き出ししまうと、ハイと返事をして急いで部屋の扉をあける。
扉を開けた先にいたのは、背の高い紺色のとんがり帽子にローブを羽織った目つきの鋭い一人の女性であった。
「こんばんは、エーナ」
「こんばんは……ナハト先生」
挨拶をしただけでぴりぴりとした緊張が走る。
先生は私の後ろの明かりのついた机をに目を向ける。
「部屋から光が漏れてるきがしたのだけど、こんな夜遅い時間まで何をしているのかしら?」
「えっと、その……友達に手紙を書いていました」
「手紙ねぇ……、こんな夜遅い時間に書かなくてもいいんじゃないのかしら。あなた昨日も授業に寝坊したわよね?」
「はいそうです……」
「昨日まではまあ何とか目を瞑ってあげたけど……、今度も同じことがあればその時はわかってるわよね?」
「は、はいすいません!もう寝坊して遅刻しません!!」
「よろしい。前も言ったけどアピロの弟子で特別入学だからって私は特別扱いしたりしないわよ、いいわねエーナ・ラヴァトーラ?」
「も、もちろんわかってますナハト先生!」
「そう、ならいいわ。じゃあ明日に備えて早く寝る事ね。それじゃあおやすみ」
「はい、おやすみなさい……」
カツカツと乾いた足音を立てて去っていく先生を見ながら私は何度付いたかもわからない大きなため息を付きながら部屋のドアを閉めた。
けれど、なんでこんなことになってしまったのだろうか。
部屋に唯一、一つだけ存在する窓開け、外を眺める。
視界に映ったのは星たちと月の光に照らされた、鬱蒼と茂る緑色の森と時折存在する古い朽ちた建物達。私はそれを上から見下ろしている。
今私がいるこの場所、古くとても大きな石造りの要塞のような建物。
ここはザマンティード魔法学園。
この国では唯一の魔法を学ぶ若人達が集まるという学び舎である。




