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第十三話 対峙する友

あたり一面を鮮やかなオレンジ色に染めあげていた夕陽も沈み、明るみを侵蝕するかの様に闇夜が広がりを見せる頃、私は一人で森のにいた。

ここは村近くの森にある小さな広間だ。

幼い頃、大人達には内緒の遊び場を探していた時、ウルやアメリー達と見つけた場所だ。あたりには木の枝を組み合わせて作った椅子の残骸や子供が腰を掛けれそうなサイズの石、雨をしのぐため木々の間にかけられた板。

どれも当時、みんなで用意した思い出の数々だ。

そんな場所で私は、大きなため息を付きながら木にもたれるように地面に腰を降ろしている。


(思い出の場所にこんな複雑な気持ちで来る事になるなんて……)


私は今、ある人物がここをに来るのを待っている。

日も沈み、空気は冷たく、息をするたびに体から熱が抜け落ちていくような感覚の中で雲の流れを見つめながら私はその時を待っている。

寒くなる事は予想してたため、母の使っていた大きな黒いケープを着ていたので寒さはそれほど苦にはならない。どちらかと言えば、今日は食事をまともに取っていないので空腹感の方が気になる。

流れる雲の隙間から時折漏れた明かりで、きらりと、人差し指にはめた指輪が光る。母が私のために用意させたという指輪。

指輪のこと、母の友人(アピロさん)の事、執行者(アルバートさん)の事。

ここ数日でわからない事が他にもたくさん増えた。

だから一つずつ、わからない事をわかるようにしていかなきゃいけない。

そう、だからこそまずは……。


「やっぱり、ここにいたんだエーナ」


名前を呼ばれた方へ顔向ける。

木々の間にできた闇の中から、わずかな光に照らされた人影が薄っすらと見える。

その人影は徐々に近づき、そして広間に出るころにはその容姿が露わになる。


「ウル……」


私の視界に現れたのは最も解決しなければならない問題と謎(友人)だ。


「まさかあの状態から抜け出してるなんて思わなかったわ。どうやったのエーナ?」


不思議だなぁ、とつぶやきながら彼女はゆっくりとこちらへ歩を進める。


「魔法のかかりが甘かったのかしら?次からはもっと強く念じないとだめね。

部屋がもぬけの殻になってるときはさすがに焦ったけど、エーナの性格的に迷惑をかけないように隠れてるだろうって思ってこの場所に来てみたら正解だったみたいね」


彼女はそう言って私に微笑みかける。

けれどその笑みは、私が知っている彼女のモノではなかった。

彼女の家で見たときと同じ、どこか暗く悍ましくて、歪んだまるで別人のような微笑み。


「ねぇウル、どうしてあんな事したの?」

「どうしてって、また同じ質問?

言ったじゃない、私の言う事は全然きいてくれ……」

「本当?私が言う事を聞かないから、ウルと一緒にいかないから、あんな事したの?」


私はウルの言葉を遮るように、少しだけ強く言葉を吐き出す。

私がそんな反応すると思わなかったのか、ウルは少しだけ私の勢いに怯んだかのよう驚き後ろに体へそらす、がすぐに先程と同じようのな顔へと戻っていく。


「そうよ。私はエーナの事こんなに思ってるのに、エーナは私の事を見てくれないし、私と一緒にいてくれないんだもの。

もう一度聞くわ、私と一緒に行きましょうよエーナ。

私と一緒に行けばすべてが上手くいくわ。私の夢も、私の願いも、全部が上手くいくわ。さあ!」


ウルはそう言って私に手を差し出す。

手を取って、私と来て、再度呟きながら。

けれど、私にはその手を取る事は出来ない。

たとえそれが彼女の本心であるとしても、今の彼女からは。


「ごめん、やっぱり私は行けない。ううん、今のウルとは一緒に行けないの。たとえそれが本当に貴女の願いだったとしても」


あの時と違い、私は真っすぐにウルを見つめそう答える。


「そう……、これだけ言ってもまだ私の事を信用してくれないの。

いいわ、本当は嫌だけど、エーナにはまた少しキツイ目にあってもらうしかないかしらね」


そう言って彼女は見せつけるかのように、黒く細長い箱……、魔装具と呼ばれる道具を取り出す。

魔装具、封じた魔法を呪文を唱えずに使う事が出来る道具。

ウルの家に訪れたとき、私はあの道具によって身動きを封じられ手も足もでなくなってしまった。このままではまたあの魔法に捉えられてしまうだろう。


「エーナ、今ならまだ許してあげるわよ?」


彼女は不敵な笑みを浮かべ脅し文句を口にする。


「そんな道具、どこで手に入れたの?」

「あら、魔法使い志望だからやっぱり気になる?

これはね、王都にある古物店で手に入れたのよ。いいでしょう?素敵でしょう?

これを手に入れてからいろいろな悩みが解決したわ。

今まで私を馬鹿にしていた同級生、教師、態度の悪い使用人……。

ふふ、みんな報いを受けてもらわったわ。

エーナも欲しいなら私が融通してあげてもいいわよ。もちろん一緒に来てくれればだけど」

「ウル……、あなた私以外にもこんな事を?」

「仕方ないじゃない、あいつらが悪いんだもの、自業自得よ。

ああでも安心して、エーナにはあいつらにやったほど酷い事はまだしてないから。

けど、エーナの態度次第ではそうせざる得なくなっちゃうかもしれないのよね」

「何度も言うけど、今のウルとは一緒に行けないよ。

ねぇウル、もうやめようよこんな事。そんなもので無理やり相手を従わせようとしても、誰も幸せにならないよ」

「なるわよ幸せに、私がね。

さて、これだけ言ってもまだ理解してくれないみたいだし、仕方ないけどまた暫く動けなくなってもらわよ」


その言葉が言い終わると同時に、ウルが手持っている箱の表面に刻まれた文字が薄っすらと発光したのが見えた。

そして次の瞬間、私は体を地面に引っ張られるような感覚に陥る。あの時と同じ感覚だ。気づけば地面から伸びる黒い影が見え、私を地面にひれ伏させようとしている。

けれど、今回は違う。

私は念じた、強く、念じた。私を捕えようとしている黒い影は幻だと。

私はこめた、願いを、こめた。こんなものは存在しないのだと。

そしてその願いを込めた先は……。

その時だった、先ほどまで感じていた引っ張られるような感覚が突然消えたのは。

同時に、地面から這い出る黒い影も見えなくなっている。

どうやら上手く抵抗レジストできたようだ。


(よかった、ちゃんと言われた通りの方法でなんとかできた……)


私は大きく安堵の溜息をつく。

一方、目の前の彼女は何が起きたのか理解できていないのか、眼を大きく開き顔に驚愕の色を浮かべていた。


「うそ、なんで消えたのよ。術は発動していたはずなのにどうして」


どのように見えているのかはわからないが、どうやら彼女から見ても魔法の発動は失敗しているようだ。


(とりあえず、アルバートさんに言われた通りの方法で何とかなったみたね)


そう、あの魔法に対する対策法は彼から教えてもらったものだ。

口頭のみの説明で実際に試したのは今が初めてである。

私は思い返す、今から数時間前の出来事を。

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