NEET パパになる
…思いつかない。
俺とセリナは一生懸命に考えたが、なかなかいい名前を見つけられずにいた。
2人で頭を抱えていると、その様子を少女がクスクス笑いながら見ていた。
俺は少女の笑顔に癒されていると、ふと1つの名前を思いついた。
「ステラ…って名前はどうかな?」
俺の意見にセリナが言った。
「ステラ……良いと思います!」
セリナは笑顔で頷いてくれた。
あとは本人の気持ちはどうか確認するだけだと思った俺は聞いてみた。
「なぁ…ステラって名前はどう?」
すると少女は嬉しそうに言った。
「わちのなまえはステラ!うれしい!」
どうやら気に入ってくれたみたいなので、俺はさっそくステラに聞いてみた。
「ステラはお腹減ってないか?」
するとステラは元気いっぱいに言った。
「おなかぺこぺこ!たべたい!」
ちびセリナ…いやステラの可愛らしさに胸を打たれながらも、俺はステラに言った。
「よし!じゃあごはんを食べに行こうか!」
俺がそう言うとステラは「うん!」と元気に頷いた。
そしてセリナの膝から降りたステラを抱っこすると、3人で目からウロコ亭に向かった。
店に着くと、俺達に気付いたエルダが声を掛けてきた。
「お帰りなさい…ってその子は?…まさかセリナと子どもを作ってたの?いつの間に!?」
俺達はカウンターに座ると、驚くエルダにざっくりと事情を説明した。
するとエルダはうっすら涙を浮かべながら言った。
「そう…なら大切に育てないとね!私に出来る事があったら何でも言ってね!」
エルダはそう言うと、キッチンに入ってさっそく料理を作り始めた。
俺はその様子を見ながらステラに言った。
「ステラ…あの人はエルダ。君の2人目のママだよ」
するとステラは首を傾げて言った。
「わちはママがふたりいるの?」
その言葉に俺は優しく言った。
「ステラにはママが4人いるよ。みんなでステラを大切に育ててあげるからね」
そう言って頭を撫でるとステラは嬉しそうに言った。
「わちにはママがたくさんいてうれしい!」
そう言ってセリナの膝の上ではしゃいでいると、エルダが皆の食事を運んでくれた。
すると、エルダを見たステラが照れくさそうに言った。
「エルダママ…ありがと」
その言葉にエルダは笑顔を浮かべると言った。
「どういたしまして!これからはママが美味しいごはんをたくさん食べさせてあげるからね!」
エルダの言葉にステラが笑顔で「うん!」と返事をすると、4人で楽しく食事を始めた。
ステラがスプーンを上手に使って食べる様子に和んでいると、エルダが俺に聞いてきた。
「そういえばオーロラ凄かったよね?あれって何だったの?」
「あれはエトワールがどっかの国の王様に力を見せて欲しいって言われて、適当に出したって言ってたよ」
そう答えたらエルダは納得したように言った。
「やっぱり神って凄いんだね!」
そう言うとまた食事を続けた。
そう。
あの一件からすぐ、2人にはエトワールを嫁として迎える話をした。
セリナもエルダも喜んで受け入れてくれたけど、前世の話は一切しなかった。
俺のエゴと言われても仕方がないけど、2人が今「幸せ」ならそれが一番だと考えたからだ。
エトワールは2人ととすぐに仲良くなると「転移」と「念話」の力を与えた。
その力で2人は頻繁にエトワールのいる「神の座」に遊びに行くと、仲良くお茶会を楽しんでるみたいだ。
「パパ?パパ?」
少しボケっとしていた俺にステラが声を掛けてきた。
「エルダママのごはんおいしいね!」
ステラはそう言って俺に笑顔を見せた。
「そうだね。エルダのごはんは俺…パパも大好きだよ」
俺がそう答えるとステラはまた食事を続けた。
するとエルダが思い出したように聞いた。
「そういえばステラって何歳なの?」
エルダの言葉に俺とセリナはハッとした…そういえば聞いてなかったな。
ステラはスプーンを置くと指を折り曲げて言った。
「えっとね…いま6さいだよ」
あまりの可愛さに悶絶する俺をよそにエルダが言った。
「じゃあ来年からは町に出来る学校に通わせるの?」
俺はその問いかけに少し考えて答えた。
「ステラが望むなら通わせてあげたいけど…今はのんびり過ごして欲しいかな」
そう答えるとセリナが言った。
「今は必要な事だけ教えれば良いと思います。のんびり育ってくれたら…それだけで良いです!」
セリナはそう言うと、食事を終えたステラの口元についたソースを拭いてあげた。するとステラは嬉しそうに言った。
「ママありがと!」
その言葉にセリナは胸を射抜かれると、ステラをぎゅっと抱きしめて言った。
「ステラ?ごはんを食べ終わったら「ご馳走様でした」って言わなきゃ駄目よ?」
…驚いた。
セリナの敬語以外の口調を初めて聞いた事にも…母親としてちゃんと教えてる姿にも…。
するとステラは「ごちそうさまでした」と言ってセリナを見た。
セリナはステラの頭を撫でて「よく出来ました」と言って笑顔を向けると、ステラも笑顔を見せた。
その様子を見た俺は安心した。
…俺はステラをちゃんと育てていけるのか、少し不安があった。
でもステラを教育するセリナと、見守ってくれるエルダを見て思った。
…俺は1人じゃない…きっと大丈夫だと。
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