人界に残った魔族 「エルフ」 前編
「トーヤは創造神の夫だよ」
その言葉にチャールズは絶句するが、話は続いた。
「そして僕達「魔王」の一人で「魔神ノワール様」の夫でもあるよ!」
ベルの言葉にチャールズはエトワールの話を思い返した。
創造神様が「人界が一瞬で終わる」と言った真意を理解するとベルの話に耳を傾けた。
「僕達「魔王」は人界に存在する眷族を守護する事が主命なんだけど…君達の愚かな同胞がよりにもよって魔王の…トーヤの身内に手を出した結果、人界に流星群が降り注いだんだ」
その話にチャールズが冷や汗を流すと、気付いたベルは笑顔で言った。
「大丈夫だよ。その件は関係者の命で償わせたから!」
ベルのその言葉にチャールズは問いかけた。
「矛を収めて頂きありがとうございます。しかし…無くなった者の中には赤子や罪なき者も含まれていますが…どうお考えでしょうか?」
その問いにベルは魔王として答えた。
「君達の愚かな同胞が「何をしたか」知ってる?トーヤの奥さんを奴隷として扱ったんだ…」
チャールズはベルの言葉を聞いて後悔した。
まさか魔王の妻を奴隷として扱ったなんて夢にも思わなかった。
しかしベルはチャールズの後悔をよそに話を続けた。
「トーヤの妻は君達に何かしたかな?「罪なき者」に先に手を出したのは君達の同胞だよ。文句があるなら「愚かな同胞」にいうべきだね」
「それでもまだ話を蒸し返すなら…僕が単独で君達を殲滅するよ?」
チャールズはベルの話が止まったタイミングで謝罪した。
「私の失言でした…深くお詫び致します。そんな愚か者がいたとは考えもしませんでした…」
チャールズの謝罪にベルは笑みを浮かべて言った。
「うん。あ、今の話はみんなに広めてね!そうすれば手を出す愚か者はいなくなるだろうし!」
ベルの笑顔に安心したチャールズは、ある話をふと思い出した。
「そういえば我領内にある森に魔界の眷族が住み着いていますが…ご存知でしょうか?」
ベルは少し考えると思い出した。
「そういえば初代に頼んで森に住まわせて貰っていたね!君の話から察すると…彼等はまだいるのかな?」
チャールズはベルの問いかけに頷くと言った。
「はい。確かに森で生活を続けているようなのですが、一切の交流がないので状況は分かりません」
その話にベルが言った。
「相変わらずなんだね…そういえば僕も暫く行ってないから、挨拶だけでもしておこうかな!」
ベルは立ち上がるとチャールズに頭を下げて執務室を後にした。
チャールズはソファーに座ったまま、しばらく動く事が出来なかった。
執務室を出たベルはさっそく森の入り口へと転移した。
懐かしい森の風景に目をやりながら歩き続けると、ベルに声を掛ける者が現れた。
「今すぐ森から去れ。ここは我が一族の領地だ」
そう言って姿を現したのは、エルフと呼ばれる古の魔族の男だった。
ベルは男の警戒に笑顔で言った。
「僕はベルシュタイン・ラビットハート。たまたま近くに用事があったから、ついでに寄らせてもらったんだ!」
ベルの言葉に男は驚くと、すぐに膝をついて謝罪した。
「まさか…魔王ベルシュタイン様とは思いもせず、大変失礼しました。それで…この森に何かご用でもありましたか?」
「突然やってきた僕が悪いんだから気にしないで!それより、久しぶりに森の中を見て歩きたいんだけど…いいかな?」
男はその言葉に頷くと、慌ててどこかに走り去っていった。
ベルは気を取り直してしばらく歩いていると、数人のエルフが現れ、そのうちの1人が口を開いた。
「ベルシュタイン魔王!ぜひ私達の集落へお越しください!ささやかではありますが歓迎の宴を開きます!」
「ありがとう。せっかくだからお邪魔するね!」
ベルは答えると、エルフたちの案内で集落に向かった。
ベルは集落に着くと、相変わらず木々の間に家を作って生活するエルフ達の姿に安心した。
彼等エルフは干渉を嫌う為、他の種族との交流はほとんどない。
だからこそ、かつて見たエルフ達と変わらず生活を営む彼等の姿に懐かしさを感じた。
エルフ達はベルに気付くと歓迎の言葉を口にした。
その声に応えていると、広場で宴の準備が整ったと声が掛かったので早速向かった。
そこには沢山のエルフ達が集まっていて、皆に促されるまま族長の隣に座ると宴が始まった。
ベルは皆が盛り上がる様子を笑顔で眺めていると、族長が話しかけてきた。
「ベルシュタイン様がお見えになって皆が喜んでます」
「僕も歓迎してもらって嬉しいよ!」
ベルが返事をすると、族長が懐かしい話を始めた。
「かつてベルシュタイン様が我々エルフをこの地に導いてくださった事は、本当に感謝しています。私は存じあげないのですが、何故エルフに手を貸してくれたのですか?」
その疑問にベルは答えた。
「それは……」




