エトワール ボクと君が始めた物語 後編
「な……んで?」
エトワールは砕けた神剣を握りしめると呟いた。
「自分で言ってたじゃないか?俺を殺したくないって。そんな思いで創造した神剣じゃ俺を殺ないんじゃないか…多分だけどな」
エトワールは呆然としながら俺に聞いた。
「ボクには殺せないと分かってワザと斬られたの?」
「違う。俺はあんたになら殺されてもいいと思ってるよ…でも死にたい訳じゃない」
「あの時…俺は死にたくなくてあんたに縋った。そしてフレイヤとネージュを巻き込んで、やっとここまでたどり着いた」
「そして俺は「選択」し続けた。だから次はあんたが「選択」する番だ!」
エトワールは俺の言葉に後ずさりすると、姿勢を崩して尻餅をついた。
震える肩を手で押さえるエトワールの傍に膝をつくと聞いた。
「最初の選択は俺を「殺す」か「殺さない」かだ」
エトワールは小さく「殺したくない」と呟いた。
「次は「愛したい」か「愛されたい」かだ。1度しか聞かないから、あんたの本心を教えてくれ…」
「…あい……されたい。ボクも愛されたいよ」
知ってるよ。
最初から素直に言えばいいのに…。
不器用な愛し方しか知らず、愛され方が分からない。
「あんたは…いや、エトワールは選択を間違えたって言ったけど、今こそ俺の「選択」の時だ…」
その言葉を聞いて驚くエトワールに言った。
「俺が愛してやる。かつてエトワールが人界を愛したように…そして俺を愛してくれた以上に…」
目を見開いて口元を押さえるエトワールに話を続けた。
「だから「俺と始めた物語」を終わらせよう…エトワール…最後の選択だ」
「俺と一緒にここで「死ぬ」か、俺と一緒にこれからを「生きる」かの2択だ」
俺はどちらでも構わなかった。エトワールが居なければ…既に存在すらしないのだから。
だから命を賭けよう。
「エトワール…どうする?」
俺がそう聞くと…エトワールは俺に顔を向けて言った。
「一緒にいてくれるの?ボクを愛してくれるの?」
「うん。これでもかってくらい愛してやるよ!」
「本当に?」
「本当だ!」
俺はエトワールを抱きしめると、彼女も俺の背中に手を回して力を込めた。
そしてしばらく俺の胸で泣き続けると、俺を突き飛ばして立ち上がった。
「ノワール!ヴァイス!いつから見てたんだよ!?」
エトワールの言葉に振り向くと、確かに2人の姿が見えた。そしてさっそくヴァイスが言った。
「トーヤ…心配して見に来た私が馬鹿だったわ!エトワール姉さんも久々に会ったと思ったら、相変わらずメチャクチャね!」
「トーヤ…私に続きエトワール姉様まで攻略するなんて…とても驚いたわ」
ノワールの言葉にエトワールが笑いながら言った。
「あとはヴァイスだけだね?」
そんなエトワールの言葉にヴァイスは猛反発した。
「私!?私はごめんよ…同じ男を選ぶなんて…姉さん達はおかしいわ!」
そう言って顔をそらす。
するとノワールがエトワールに問いかけた。
「それでエトワール姉様はこれから「人界」をどうするつもりなの?」
「ボクは長く放置してたけど…ノワールとヴァイスのおかげで平和な世界になった人界に、今更干渉する気はないよ…」
そう言って目を細めるエトワールにノワールは言った。
「エトワール姉様…面倒だと考えてない?」
「えっと…じゃあ引退するよ!ボクはこれから自由に生きるんだ!ヴァイスも立派に成長してくれたし…あとは任せるよ!」
その言葉にヴァイスが激怒した。
「はぁ?エトワール姉さんが何を言ってるのか分からないわ。散々好き放題しておいて今更「自由に生きる」なんて許さないわ!」
エトワールは言葉に詰まると俺を見て言った。
「そうだ!ボクの代わりにノエ…じゃない…トーヤ!トーヤに人界の神になってもらうってのはどうかな?」
俺に振りやがった…
「俺は無理だよ。そもそも人間じゃないし…」
その言葉を聞いたエトワールは思いついたように言った。
「なら…人界の王様を集めて上手いこと統治するようにボクが言えばいいかな?」
そのアイデアにノワールが言った。
「なら、いっそ「魔族」の存在も伝えてしまう?今の人界なら争いになる事は無い。それに無用な諍いを避ける為にも「神」の存在を報せるのは良い案だと思うわ」
その提案にヴァイスも同意した。
「私も賛成よ!だいたいエトワール姉さんがいなかったから面倒を見てただけで、姉さんが戻ってきた以上はそうするべきだと思うわ!」
するとエトワールは諦めたように頷くと、さっそく人界をどう管理するか話し合いが始まった。
それぞれ椅子に座ると、話が始まる前にエトワールが俺の耳元で囁いた。
「ボクと君の新しい物語が始まるね!」
俺はエトワールに軽くデコピンすると……
エトワールは幸せそうに微笑んだ。
第1部 完
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