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NEET 再会する

「なんだここは?」


俺は気がつくと何もない真っ白な空間にいた。

あたりを見渡すが何もない。


その場にへたり込むと、自分の体にあったはずの傷が綺麗に消えている事に気付いた。


「確かに斬られた筈なのに…」

動揺する俺に突然声が聞こえた。


「やぁ。また会ったね!元気にしてたかい?」

驚いた俺は立ち上がって声がした方に体を向ける。

するとそこには人の形をした「何か」が立っていた。


「お前は誰だ?ていうかここはどこだ?」

俺の問いかけにそいつは答えた。


「ボクは神様だよ!前に会った時にも自己紹介したんだけど、今の君はその記憶がないから仕方ないね!」


「この場所は死後の世界…と言ったら分かり易いかな?君は死んだ事を理解してる?」

神を名乗る存在はそう答えた。


…そう。

俺は確かに死んだ。

ネージュと生き残って一緒になる夢は、叶う事なく死んでしまった。


悔しくてたまらなかったけど、それが俺の運命なら仕方がないと思った。


数多の敵兵を殺した俺にはネージュと幸せになるなど無理な話だったんだ。


俺は俯き涙を流すと、様子を見ていた神を名乗る存在は笑いながら言った。


「君は死ぬ程の苦しみを抱えながら生きて、そして絶対に生き残りたいタイミングで死ぬ事になる」


「そして君は死んだ。でもね…君はまた間違えたね?」


間違えた?

俺が?


訳が分からず混乱する俺の前に光る板が出現すると、そこにはネージュの姿が映し出されていた。


久しぶりに見るネージュの姿に安心した俺は、映像を見ているうちにネージュの違和感に気付いた。


ネージュの傍から味方が距離を取ると、彼女は意識を集中させた。

そして…俺と「同じ力」を使って敵兵と戦い始めた。


「なんで……なんでネージュが…」

あの力は使うなと言った筈なのに…


愕然とする俺に神が言った。


「君が教えたんだよ?そして彼女との約束を先に破ったのも君じゃないか!」


「あの力は君の前世でボクが与えた力なんだ。そして前世も選択を間違えたように、今回も間違えちゃったね!」


間違えた?選択?

なんの話か分からず沈黙する俺に神は言った。


「君は彼女に力の使い方を教えちゃいけなかったんだ!そうすれば君達は死ぬまで共に戦う道を選べたのに…」


「…彼女が一番苦しむ選択をしてしまったね?力を使う度に死ぬ程の苦しみが待ってる事は君も知ってた筈なのに…」


「彼女は君の「死」をきっかけに戦いに明け暮れるんだよ?力を使い続けながらね!」

神は笑いながら映像を指差すと、そこには戦いでボロボロになって倒れこむネージュの姿が映し出されていた。



「ネージュを助けてくれ!」

俺は必死に懇願するが、神は笑いながら言った。


「これは君が選んだ結果だからボクは介入しない。それよりネージュの物語がもうすぐ終わるよ!」


映像に目を向けた俺に、味方から胸を貫かれ膝から崩れ落ちるネージュの姿が映ると…突然ネージュの思いが頭に響いた。



「ねぇティオ…何処にいるの?」


…ごめん。傍にいれなくて。


「私…1人でここまで頑張ったよ?」


…ネージュは良く頑張った。ちゃんと見てたよ。


「約束したでしょ?私を迎えにくるって…」


…約束守れなくて本当にごめん。



「返事を聞きにくるって言ったじゃない?寂しいよ…寒いよ…痛いよ……。」




…なんでだよ。

なんでネージュがこんな目に…


俺か…俺のせいか……。


「そうだね!間違いなく君のせいだ…って言いたいんだけど今回は仕方ない部分が大きいかな?」

神はそう言って話を続けた。


「ネージュの運命を弄ったのはボクだからね。本来なら彼女は君と出会う戦場で死んでいたんだ!」


「だから君と出会う運命をねじ込んだ。結果は最悪だけどこれで彼女の来世の運命に介入出来るから良かったよ!」

そう言って笑う神に俺は言った。


「良かっただと?俺と出会わなきゃネージュは…」

俺は違和感に気付いて言葉を止めると考えた。



俺と出会わなかったらネージュは幸せになれたのか?


ネージュの生い立ちを知る俺は違和感の原因に頭を抱えていると神が言った。


「そうだね。君と出会ったから今回は最悪の死に方だったけど、そのお陰で来世は幸せな人生が約束されてるよ。かつて君が恋したフレイヤのようにね!」

俺が話に困惑していると、神が説明を始めた。


「君には力があるよね?あれはボクが前世で君に与えた力だよ。そして君はその力の使い方を間違えた。その結果、数多の命を奪ったうえにフレイヤを死なせた…それが君の罪だね!」

神の話を聞いた俺は質問した。


「つまり、俺は前世での過ちを償うためにネージュと出会ったのか?」

俺の疑問に神は即答した。


「ちょっと違うかな。ネージュの運命に介入する為に君と出会わせたんだ。その理由はまだ教えてあげられないけど、いつか必ず答えに辿り着くって信じてるよ!」


「だから君にはまだまだ頑張って貰う。物語をハッピーエンドで終わらせる為にね!」

その話を聞いた俺は神に言った。


「いつ終わるんだ…俺とあんたが始めた物語は?」


「…その質問には答えられないよ。何故ならボクにも分からないからね!」

神はそう答えると話を続けた。


「ただ…ボクは君達を不幸にしたい訳じゃないんだよ。むしろ幸せになって欲しいんだ!だから……あ」

神は話を止めると慌てた様子で言った。


「ごめん…話はここまでだ!」

神は俺にデコピンすると、俺の意識はすぐ消えた。


「まさかノワールどころかヴァイスまでもが介入してくるなんて……」

神はそう呟くと空間から姿を消した。




目を覚ますと涙を流すセリナと、ノワール、そしてヴァイスが目に映った。


セリナは俺が目を覚ました事に気付くと涙を拭いながら言った。


「旦那様!大丈夫ですか?」

大丈夫って何が?

セリナの言葉の意味を考えているとノワールが口を開いた。


「トーヤ…彼女と何を話したの?」

あの子?

誰の話か分からず困惑しているととヴァイスが言った。


「ノワール姉さん…多分トーヤは記憶を消されてるわ。この状況が分からないって顔してるもの…」

その通り!全くわかりませ……


いや…1つだけ頭に浮かんだ言葉があった。


「これは「ボクと君が始めた物語」って言われた気がする…どんな意味だろ?」

俺が呟くと、ノワールとヴァイスが表情を強張らせた。



そして少しの沈黙の後、ノワールが口を開いた。



「間違いないわ…彼女は消えてなかったのね」


いつもお読みいただきありがとうございます!



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