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ベル 決断の刻 前編

空中庭園


そこにソワソワしながら婚約者であるリリスの迎えを待つベルと、椅子に座って書類に目を通すノワールの姿があった。


ノワールはベルから頼まれていた婚約者への連絡をすると、日時を決めてベルに連絡した。


そして遂に約束を迎えた今日……ベルは正装に身を包むと、リリスの到着を落ち着きなく待っていた。


そんなベルの様子を見かねたノワールが口を開いた。


「ベル。少し落ち着きなさい……みっともないわ」

ノワールの言葉を聞いたベルは、自身が緊張して情けない行動を取っている事を指摘されてハッとなった。


「申し訳ございません。少し緊張していました。リリス嬢が到着する前に指摘してくれてありがとうございます」

ベルの言葉を聞いたノワールは部屋の隅に目をやると、ため息混じりに言った。


「何を今更。彼女は先ほどからベルの様子を眺めているというのに……だから注意したの」

ベルはノワールの言葉に驚きながら視線の先を見ると、そこには顔を赤くしたリリスが立っていた。


ベルと目が合うとリリスが嬉しそうに言った。


「ベルシュタイン様、私の到着をお待ちいただきありがとうございます」

リリスは、ベルが右往左往しながら自分を待っている様子が嬉しかった。


ベルはリリスの言葉に緊張しながら答えた。


「リリ、リリス嬢!お見苦しいところをお見せしてしまいました。今日はよろしくお願いします」

リリスはそう答えるベルの横に立つと手を繋いで言った。


「さっそく参りましょう」

お互いに真っ赤な顔になりながら転移していった。


ノワールはベル達が消えた場所に目をやると溜息をついた。


「あんな調子で大丈夫かしら……」

そう呟くと視線を書類に戻して仕事を続けた。



……


ベルとリリスが転移した先は街の中だった。

コンクリート造りの高い建物があちらこちらに建てられていて、道路も綺麗に舗装されていた。


ベルは呆気にとられていると、リリスが繋いだ手にぎゅっと力を入れて言った。


「ベルシュタイン様、歩きながらお話しましょう?」

リリスの提案にベルは頷くと2人はゆっくり歩き始めた。

歩き始めてすぐ、リリスはベルに聞いた。


「ベルシュタイン様、ベル様とお呼びしてもいいですか?」

ベルは激しく首を縦に振るとリリスは笑顔を見せながら話し始めた。


「ベル様も私をリリスとお呼びください。それで早速なのですが、この街の印象はどうでしょうか?」

ベルは照れながらも街並みに目を向けると言った。


「綺麗な街だと思います。清掃も行き届いてますし、住んでる人も幸せそうな顔を浮かべています。ヒジェル殿の努力の賜物でしょう」

ベルは率直な感想を答えるとリリスは嬉しそうに言った。


「ありがとうございます。ベル様の仰る通り父は領民を大切にしています。その事をベル様に見て貰いたかったのです」

そう言って笑顔を見せるリリスにベルは聞いた。


「街の話も気になりますが、僕はリリスの話を聞かせて頂きたいです。好きなものや趣味などを聞かせてくれませんか?」

ベルの言葉を聞いたリリスは嬉しそうに話を始めた。


「私は読書が好きです。古い本を見つけるとつい購入してしまいます。収入のほとんどは古本に使ってしまいます」



「本……ですか。僕も好きです!とは言っても伝記や物語などが中心ですけど……」

ベルの言葉にリリスは目を輝かせると言った。


「そうなのですか?是非見せて頂きたいです。私はまだ実入りが悪いので欲しい本が買えないです…」


「ご迷惑でなければベル様の書庫にある本をお貸しして頂けると嬉しいです!」

リリスの言葉にベルは質問した。


「実入りが悪いとは驚きました。失礼とは思いますが、ヒジェル様は領主ですよね?御息女であるリリスの実入りが悪いとは思えないのですが?」

そう尋ねるとリリスは笑いながら説明してくれた。


「父は領主ですが私を甘やかしたりはしません。欲しいものは「働いて買いなさい」と幼い頃から言われました」


「ですので、私は司書として働いて得たお金で生活しています」

ベルは驚いた。

リリスはしっかりしてると思っていたけど、話を聞いて納得すると言った。


「リリスは凄いんだね!司書としてちゃんと働いてたなんてビックリし……あ、失礼しました。驚いて言葉遣いを間違えてしまいました」

謝罪するベルにリリスは笑顔で言った。


「ベル様?私は普段の言葉で話をして頂いたほうが嬉しいです。」

その言葉にベルは話を続ける。


「ありがとう!話の続きなんだけど、働いて稼いだお金で本を買ってるなんて!僕も昔は教師をしてたんだけど、少しずつ貯金して本を買ってた事を思い出したよ!」

リリスはベルの話にびっくりすると聞いた。


「ベル様は教師から魔王になられたのですか!?」


「うん。もともと僕は兎族の獣人だよ。運動は苦手だったけど知識には自信があったから教師になったんだ!」


「ベル様!その話を詳しくお聞かせいただけますか?」

そう言って詰め寄るリリスにベルは言った。


「いいよ!なら一度、僕の家に行こうか」



そう言ってリリスの肩に手を置くと転移を始めた。


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