トーヤ 戦神と呼ばれた男 中編
「負けは決まった。なら最後は派手に逝こうぜ!」
そう言って背中を叩くアーヴァインに頷くと、俺達は敵兵に突っ込んでいった。
勝ち目がない戦いだが、最期まで自分の選んだ道を貫き通そうと決めた俺はアーヴァインと2人で戦い続けた。
幸いなことに昨日受け取った剣の性能が素晴らしく、敵を剣ごと叩き斬ることが出来た。
アーヴァインも凄まじい槍術で見事に敵兵を圧倒していた。
だけど所詮は数だった。
次第に大勢の敵兵に囲まれると……俺達は覚悟を決めた。
「なぁノエル……短い夢だったけど良い夢だった」
アーヴァインの言葉に俺も答えた。
「そうだな……。そう思う事にするよ」
俺はいい夢とは思えなかった……死にたくなかった。
距離を開けた敵兵が放つ弓矢が俺達に向かい死を運んでくる中で思った。
覚悟は決めたのにはずなのに……生き残りたいと願った。
「君はおもしろいね。少し話をしよう!」
その声が突然頭に響くと、俺はいつの間にか何もない真っ白な空間にいた。
突然のことに驚いた俺は辺りを見回すと……
光る球体が目に映った。
俺はその球体に近付くと次第に形を変え始め、人の形へと変化すると話し掛けてきた。
「やぁ!ボクは神様だよ!」
神様?
何を言ってるんだ?
混乱する俺に神を名乗るそいつは話し始めた。
「信じるかどうかは君の自由だよ。でも君はボクに助けを請わないと間違いなく死んじゃうよ?」
確かにそうだろう……でも信じていいんだろうか?
考える俺に神を名乗るそいつは言った。
「ここで死ぬ事は君の運命だ。だからボクはどっちでも良いよ?ただ君が死ぬ直前に何を思うのか観てたら…今まで観た中でダントツ一番の強さで「生きたい」と願ってたから呼んだだけさ!」
そう言って笑うそいつ……神に聞いた。
「なら俺が生きたいと頼めば助けてくれるのか?」
「助けないよ?ただ君に「力」をあげる」
話が見えない俺は戸惑っていると神が説明を始めた。
「君に力をあげる。その力はきっと君を救うだろうね!」
「でも代償は大きいよ?まず君の運命が大きく変わる……良くも悪くもだ!そして与える力には大きな責任が伴う。それは力を得てのお楽しみだね!」
そう言って俺の返事を待つ「神」に願った。
「頼む……俺に力をくれ!」
そう言って頭を下げる俺に神は手をかざした。
次第に体から虹色の光が溢れ出すと神は嬉しそうに言った。
「力は与えたよ!でもまさか「7色」だなんて……」
言葉の意味が分からず首を傾げる俺に気付いた神が言った。
「気にしないでいいよ……それより力の使い方を教えるね!まずは目を閉じるんだ!」
神の言葉に従い目を閉じると説明が続いた。
「意識を自分の中にどんどん沈めていくんだ!そしたら次第に「虹色」のキラキラした塊が見えてくる」
言われた通りに意識を自分の中に……暗い方に向けて集中すると確かにそれはあった。
「見えたかな?それは君達「人間」がボクから与えられた力だ。君には遥かに大きな力を与えたから上手に使うといいよ!」
「使い方は簡単。その「虹色」を握りしめてみて?」
言われた通りに握りしめると体の中から力が溢れ出すのを感じた。
神は嬉しそうに近付くと俺に剣を渡して言った。
「試しに剣に力を込めて振ってみよう!」
俺は神に背を向けると力を込めて振り下ろした。すると虹色の衝撃波が発生して激しく爆発した。
「凄い……この力があれば!」
そう喜ぶ俺に神が話を続けた。
「凄い力だ!でも剣が耐えられないみたいだね…じゃじゃーん「神剣」だよ!これもあげよう。目を閉じて剣を構えてみて?」
俺は粉々になった剣を手放して目を閉じると構える。
すると構えた手に神剣がいつの間にか握られていた。
「うん!それで神剣が出るし、手を離せば消えるようにしたから!」
俺は神剣を離すと確かに一瞬で消失した。
「あと、その力の切り方だけど……おでこに優しく拳を当てれば消えるからね!」
「じゃあ説明は終わり!最後に何かボクに聞きたい事はあるかな?」
俺は首を横に振ると神が言った。
「そっか!じゃあボクから1つ……君は力を手に入れた。その力は君を幸せにもするけど不幸にもする。それだけは絶対に忘れないでね!」
そう言って姿を消すと風景が戦場に切り替わった。
すると弓矢が止まっているかのようにゆっくりと向かってきていて、アーヴァインは静かに目を閉じていた。
俺は構えると手に神剣が握られている事を確認すると、力を込めて敵に向かい横薙ぎに剣を振った。
七色の衝撃波が取り囲む敵兵や弓矢を通過し更に奥の敵軍を通過すると激しい爆発が起こった。
相変わらず時間がスローに流れていたので確認も兼ねて額を軽く握った拳で叩く。
すると周囲を取り囲んでいた兵士達はは吹き飛んで行き、難を逃れた敵軍の生き残りの間では突然の爆発に動揺が広がっていた。
友軍も突然の事態に驚いていたが上官が「神風が吹いた!全軍突撃せよ!」て叫ぶと周りの兵士達は勢いを取り戻した。
俺の一撃で敵軍は壊滅的被害を受けた上に、勢いを増した味方が攻め込んだ結果、数時間後には我が国が勝利を宣言する事になった。
終戦した為、俺達一般兵は役割を終えると野営地で勝利を喜びあった。
そんな中で、アーヴァインは俺を人気のない場所に呼び出すと聞いてきた。
「ノエル……なんだあの力は?」
そう言って肩を震わせるアーヴァインに事情を説明すると意外な反応が返ってきた。
「にわかに信じ難いが……助かった!ノエルのお陰で絶望的な状況からみんなで生き残れた!」
そう言って背中を叩くアーヴァインと2人で野営地に戻ると、再び仲間のバカ騒ぎに参加した。
それから2日が過ぎた頃、俺とアーヴァインに上官から呼び出し命令が掛かったので、2人で上級官吏がいるテントに向かった。
中に入り一礼すると上官がさっそく話を始めた。
「よく来た!貴様らは今回の戦争において多大な貢献を本国から認められた。急な話で悪いが今から我々と一緒に王宮へと向かって貰う!」
突然の話に俺とアーヴァインが固まっていると、上官達に馬車へと突っ込まれ王宮へと向かう事になった。
長い道中で俺達の身なりを気にした上官から服や鎧を買い与えられると、2週間ほど馬車に揺られた俺達は王宮へと到着した。
上官達の背を追いながら王宮内を進む俺とアーヴァインは、周りの豪華な雰囲気に圧倒されながら歩き続けた。
そして一際目立つ装飾が施された扉の前に辿り着くと、上官が俺達に言った。
「この先には国王陛下を始め国の中枢を担う方々がいらっしゃる。膝をついて何か聞かれるまでは顔を下げておくように!」
俺達は頷くと上官は衛兵に扉を開けさせた。
そして中へと進む上官の背中を見ながら俺達も入ると膝をついて頭を下げた。
「よくぞ参られた。両名とも我に顔を見せよ」
俺達は言葉に従い顔を上げると、そこには国王陛下が豪勢な椅子に座っていた。
「アーヴァイン・クラリスはどちらかな?」
その言葉にアーヴァインは「私でございます」と返事を返した。
「アーヴァインよ。此度の戦争において貴様の働きは見事だと聞いておる。貴様は「男爵」としてより一層この国に貢献する事を願う」
アーヴァインは頭を下げると今度は俺に声が掛かった。
「ノエル・ヴァレンシュタイン。貴殿の活躍で我が国は勝利を掴む事が出来た。その活躍は我が国全土から賞賛の声が聞こえてくる程だ!」
「ノエルよ。貴殿を我が名において「英雄」と認定する。我が国を守り敵国を打ち滅ぼす「剣」として力を貸して欲しい!」
国王はそう言って立ち上がると俺の前まで来た。
そして俺を立ち上がらせると宣言した。
「皆も立ちなさい。皆で英雄を祝おうじゃないか!」
周りも立ち上がると拍手が巻き起こり、アーヴァインも笑顔で拍手を送ってくれた。
その日……俺は「英雄」となった。
読者の皆様…ごきげんよう!
へっぽこ作者の秘密を1つ
実は昔…グレてました。
嘘です。 作者でした。
 




