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トーヤ 戦神と呼ばれた男 前編

気が付くと俺は空を眺めていた。


青い空にはゆっくり雲が流れて暖かな日差しが差している。

周りを見ると広々とした訓練場で、いたる所で男達が剣や槍で模擬戦を繰り広げていた。


俺は……確かデータ弐を確認すると言った瞬間に意識をなくして気がつくとこの場所に居た。


「何がどうなってるんだ?」

困惑していると声が掛かった。


「よぉ!調子は戻ったか?」

声の方を見るとそこには俺に近付きながら手をあげる男がいた。


「調子が戻ったってどういう意味だ?」

俺がそう尋ねると男は溜息をついた。


あれ……なんだこの感覚は?

男の顔に妙な懐かしさを感じた俺は考え込んでいると男は言った。


「おいノエル!お前がそんな感じだと次の戦争で仲間がまた死ぬぞ?」

その言葉に突然の激しい頭痛と共に記憶が溢れてきた。


「ノ……エル?……そうだ。俺はノエルだ」



そう。


辺鄙な村で生まれた俺は、小さい頃に父と一緒に街へ野菜を売りに出た時に見た兵士に憧れた。


そして村に帰るとすぐに木の棒で素振りを始めた俺は周りからは馬鹿にされたけど、それでも続ける俺に父は錆びだらけの古い剣をくれた。


そんな剣でも喜んで受け取った俺は、野菜を作る手伝いをしながら毎日素振りを繰り返した。


そんな生活を10年ほど過ごしていると、こんな辺鄙な村にも兵士採用試験の募集が掛かった。

どうやら隣国との戦争に備えて出来るだけ兵士を集めたいようだ。


俺は両親を説得して街に向かうと、試験を受けて無事に合格することが出来た。


そのまま他の合格者達と街を出ると、国境付近の要塞に着いた俺達は粗末な鎧と剣を与えられた。


上官は俺達に訓練するよう命令すると、俺達はしばらく厳しい訓練に明け暮れた。


そして3ヶ月後……ついに開戦の日を迎えた。


両国間で正式に戦線布告が行われると俺達は国境にある平地に召集された。

離れた場所には多くの敵軍が陣を構えていた。


俺は最前線に配置されると上官の命令を待つ間は敵兵を見ていた。


今から彼らと殺し合いをする事が怖かった俺は正直後悔していた。

兵士になるという事は「こういう事」だと分かってなかった。


だからといって後戻りは出来ない。

……自分で選んだ道だから進み続けるしかない。


俺は気を引き締め直しているとついに命令が下された。


「歩兵は進軍。突撃せよ!」

その命令に俺達は進軍を開始すると敵軍もこちらへ向かい進み始めた。


そして互いの距離がある程度近くなった時、敵軍から弓の雨が降り注いだ。


俺達は盾を頭上に構えながら進軍すると、先頭が敵部隊に向かって走り出した。

その流れで俺も敵部隊に走り出すと戦闘が始まった。


向かってくる敵兵の剣を躱すと首を一閃し、それが俺が初めての「殺人」の経験だった。


すると、恐怖や後悔の感情が頭を支配する中で俺の背中を叩く者がいた。


「ボヤッとするな!前を見ろ。次はお前が死ぬぞ!」

そう俺に言って前へと進む男の言葉に気を取り戻した俺は戦い続けた。


ひたすら敵兵と斬り合う中で、撤退命令を報せる音が戦場に響き渡ると俺達は撤退を始めた。


その日は18の命を奪い、全体では約1万の戦果を挙げたが……友軍もほぼ同数の被害を受けた。


陣地に戻った俺はしゃがみこんだ。

疲れもあったけど精神的な疲労が多かった。


周りには血を流し倒れている者や、うなだれる者の姿がそこら中に広がっていた。

敵もそんな感じなのかと考えていると声が掛かった。


「よぉ!お前も生き残ったか?」

声の主は戦場で俺の背中を叩いた男で、向かいあって座ると話しかけてきた。


「ぼけっとしてたから心配してたんだ!顔見知りが生きてて安心したよ。俺はアーヴァインだ!よろしくな!」

アーヴァインはそう言って俺に笑いかけた。


確かに一緒に訓練した中に、彼の顔を思い出した俺はアーヴァインに挨拶した。


「あの時は助かったよ……俺はノエル。よろしく」


「ノエルか!覚えとくぜ!しかし仲間がこの調子だと明日はやばいかもな……」

そう言って嘆くアーヴァインに聞いた。


「やばいってどういう意味だ?」

俺の疑問に彼は詳しく説明してくれた。


「明日からは戦場に騎兵が前線に投入される。俺達ははっきり言って勝ち目がない。歩兵と騎兵じゃリーチも機動力も桁違いだからな」


「だから俺はノエルに提案がある。2人で騎兵を倒して馬と武器を奪おう!ノエルが騎兵の攻撃を受けてる間に俺が騎兵を攻撃して倒す」


「それが出来たら後は俺が騎兵を倒すからノエルも適当な馬に乗ればいい!」


アーヴァインの提案は間違ってないと理解した俺は、話を受け入れると明日に備えて早めに休んだ。


翌日、向かいあった敵の中に騎兵が50ほど目に映った。

アーヴァインの言った通りの展開に驚いていると、誰かに背中を叩かれた。


「ノエル……始まったら一緒に行動するぞ」

アーヴァインは俺にそう言うと俺は頷いた。


すると間もなく進軍命令が下ると俺達は前進を始めた。そして昨日と同じように敵軍との距離が縮まると先頭が走り出したので俺達も前に続いた。


敵兵をアーヴァインと協力しなが倒していると騎兵がこちらに向かってきた。


「ノエル!足止めは頼むぞ!」


「分かった!」

俺達も騎兵に接近すると、さっそく騎兵からの槍撃が俺に激しく襲い掛かった。


距離を取りながら騎兵の槍撃をギリギリのところで躱し続けていると、ムキになった騎兵の攻撃が大振りになった。


アーヴァインはその一瞬を見逃さなかった。

剣を騎兵の首めがけて投げつけると狙い通りに喉に刺さった。そして馬から騎兵を落とすと槍を構えて俺に言った。


「ノエル!敵を蹴散らしに行くぞ!」

そう言って敵兵を薙ぎ払うアーヴァインと共に前進を続けると、異変に気付いた他の騎兵達が向かってきた。


アーヴァインは「任せろ!」と俺に言うと見事な槍使いで騎兵達を瞬殺した。


俺も馬に跨ると武器を槍に切り替えてアーヴァインと敵兵を薙ぎ払った。


槍術・馬術は一通り訓練で教わっていたけど実際に役に立つとは思ってなかった。


ただ槍はあまり得意ではなかったので、自然に俺は敵兵を、アーヴァインは騎兵を倒す流れになっていた。


その後、敵兵は撤退を開始すると俺達にも撤退命令を報せる音が聞こえたので陣地へと戻った。


野営地で俺達は仲間達に囲まれ賞賛の声を掛けられていると上官が姿を現した。


「第46訓練中隊所属のアーヴァインとノエルはお前達だな!私について来い!」

その言葉に場が静まり返る中、俺とアーヴァインは上官の命令に従うと後に続いた。


着いた先は上級官吏が野営するテントで、中に入ると数名の上官が俺達を拍手で迎えた。


訳が分からず立つ俺達に呼び出した上官が話を始めた。


「貴様ら両名の戦果は見事だ。よって明日からは「騎士見習い」として我々の傘下に加わってもらう」

「騎士見習い」とはなんだ?

質問していいのか考えていると上官の話が続いた。


「平民の貴様らには夢のような話だ。明日からもより多くの戦果を挙げることを期待する!」

そう言うと俺には立派な剣、アーヴァインには立派な槍が渡された。


「それでは解散。戻って明日の戦に備えよ!」

その言葉に一礼すると俺達はテントを後にした。


一般兵士の野営地に戻る道中で俺達は少し話しをした。


「ノエル!やったな!?俺達もいっぱしの兵士と認められたんだぜ!」

嬉しそうに話すアーヴァインに聞いた。


「そんなに嬉しいか?俺はいまいちピンとこないんだ」

そう聞く俺に興奮しながらアーヴァインは言った。


「そりゃ嬉しいさ!この戦が終わったら俺達は「準貴族」だぜ?もしかしたら領地が下賜されるかもしれない。そうなったら領主だ!」


嬉しそうに話すアーヴァインを見ながら野営地につくと仲間達が駆け寄ってきた。

アーヴァインは上官からの話をみんなに聞かせると深夜までちょっとした騒ぎになった。


騒ぎも治まり眠りにつく俺にアーヴァインが言った。


「ノエル!明日も2人で暴れよう!」

俺は背を向け横になったまま答えた。


「分かったから早く寝ろ……」

そう言って俺が眠りにつくと、アーヴァインは横になって空を見上げながら眠った。


翌日



戦場に立つ俺達に絶望が待っていた。


敵軍が明らかに増えていた。その数は前日と比べて軽く2倍……いやそれどころではなかった。


すると周りの兵士達の1人が呟いた。


「連合だ!奴ら他国と連合しやがった……」

その兵士の呟いた言葉は真実だった。敵国は他国を味方につけて連合国軍を結成していた。



味方が混乱する中……敵国は進軍を開始した。


いつも読んで頂きありがとうございます!


この話…多分長くなります


4000字とかになるのは避けたいので

キリのいいところで分割掲載します汗


感想とか頂けると大変ありがたいです!

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