NEET 自業自得だと思う
「実は見合いの席で選んだ子達の中にすんげぇ可愛い娘がいたんだ!」
ゼルは興奮しながら俺達にそう切り出すと話を続けた。
「話も噛み合ったし……もうこの娘でいんじゃね?って思って話を進めたんだよ!で、早速その娘とデートしたんだ!」
「そしたらやっぱり楽しくてさ!気が利くし!もう最高だったんだ!……その瞬間までは……」
そう言ってゼルは体を震わせた。
いったい何があったのか気になった皆が彼の話に耳を傾けると、ゼルは話を続けた。
「そしたらたまたま可愛い娘とすれ違ってさ……ちょっと目がその子に向いたんだ…そしたら見合い相手が急にキスしてきて「今は私を見て?」って可愛い事を言うんだ!そこまでは良かった」
「キスが終わると……見合い相手が俺の目を狙って指を突き刺してきたんだ…「ゼル様が他の娘を見るのは、その目が視えるせいですよね?」って言いながら!」
皆が沈黙する中、ゼルの話はまだまだ続いた。
「とりあえずその場は謝ったら許して貰えたんだが…次は見合い相手が通りかかった猫を見て「可愛いですね!」って聞いてきた。俺は同意すると「私とどっちが可愛いですか?」って聞いてきたからちょっと考えたら……見合い相手の目が急に闇に染まると俺の首を絞めながら「私の方が可愛いって言えない喉なんて要らない!」って……」
俺達は自業自得と思いながらゼルの話を聞き続けた。
「何とか手を振り解くと「ゼル様の為に喉を潰そうとする私の邪魔をする手なんか要らないわ!」そう言いながらゆっくり俺に近付いて来たから、俺が「君と手を繋ぐ為には必要だろ?」って言うと何とか機嫌を取り直したから、その後はとにかく機嫌を損なわないよう配慮しながらデートを続けたんだ……」
「ようやく命懸けのデートを終えた俺は2人で空中庭園に戻ると話を断るつもるだった……なのに……」
「見合い相手が俺とキスした話をした途端にノワール様が「おめでとう。素敵な相手と結婚が決まって良かったわね。心から祝福するわ……」って言っちまったんだ……」
「俺はノワール様に頼んで少し離れたところで「ノワール様、この話お断りします」って伝えたんだ。そしたらノワール様が「キスしておいて責任を取らないなら死をもって償いなさい」って激怒されたんだ……」
「その場で結婚が決まると見合い相手は帰っていった……俺は激怒するノワール様に「用がないなら帰りなさい」って言われて……慌てて転移してここに来た」
「なぁ皆……助けてくれ!」
ゼルの話が終わるとジークは一言。
「一途ないい娘じゃないか。おめでとう!」
そう言って目を逸らした。
「おめでとうなのじゃ……」
シアもそう言って目を逸らした。
「ゼルさん。幸せになって下さい!」
あのセリナでさえ目を逸らした。
「ジークの言う通りだ!ゼル……彼女を幸せにしてやれ!」
皆に倣って俺も目を逸らした。
すると場に静寂が戻る中、ベルが帰ってきた。
「みんな!ノワール様に事情を説明したら連絡を取ってくれたよ!さっそく明日会いに行くことが決まったんだ!僕……頑張るよ!」
そう言って笑みを浮かべるベルに皆が言った。
「良くやったベル!段取りを話し合おう!」
そう言って笑顔を浮かべるジーク。
「流石はベル!男を見せたのじゃ!」
そう言ってベルを褒めるシア。
「良かったです!きっと彼女も楽しみにしてます!」
そう言いって喜ぶセリナ。
「よし!早速話し合って計画を練ろう!」
そう言って張り切る俺!
するとベルはゼルに気付いたが無視して話を始めた。
「それで明日さっそく会いに行くんだけどプレゼントは何が良いかな?」
その問いかけにセリナが答えた。
「形あるものを貰えると嬉しいですけど……今の状況を考えるとら花束なんて頂けたら……私は嬉しいです!」
セリナの提案に皆で頷くとベルは言った。
「それはいいアイデアだね!明日は花束を持参してリリア嬢に会いに行くよ!」
嬉しそうなベルに皆が笑顔を向ける中、ゼルがベルに言った。
「ベル!俺は大事な話をしてんだ!邪魔すんじゃねぇ!」
そう言ってベルに文句を言うゼルにジークは言った。
「お前の話は既に結論が出ただろう?みんなでお前に祝福の言葉を贈ったじゃないか?」
そう言ってジークは視線を逸らした。
するとゼルは周りから白い目で見られている事に気付く中、事情をシアから聞いたベルが笑みを浮かべ言った。
「良かったじゃないか!僕に勧めた「馬」とは比較できない程の可愛い娘との縁談がまとまって。僕もあれから素敵な女性と知り合うことが出来たんだよ!お互いに頑張ろう!」
そう言って余裕の表情を見せるベルにゼルは「覚えてろよ!?」と捨て台詞を吐くと転移していった。
俺達は気を取り直してベルの相談にアドバイスをしながら楽しい時間を過ごした。
相談を聞き終えるとベルは皆に向かって頭を下げる。
「みんなありがとう!僕……頑張るよ!」
そう言って笑顔を見せるベルの幸せを皆で願った。




