NEET 瞬殺する
純魔評議会
純潔魔族による支配を理念とする組織に魔王側から決闘書が届いたので、さっそく代表が読み上げるとその内容に場が沸き立った。
忌々しい存在であった魔王達が我等34の純潔魔族と決闘したいと申し出てきたのだ。
しかも、我等が勝利した暁には魔神の身を我等に捧げるとも書かれていた。
奴等……特に蛇姫には煮え湯を飲まされていたので報復する絶好の機会でもある。そして魔王で戦力になるのは3人しかいない事は知っていた。
我々も多少の犠牲を払う事になるが得るものの方が圧倒的に大きい。さっそく多数決を取ると満場一致で申し出を受け入れる事が決まり、場が更に沸き立った。
そして決闘の報せが全ての魔族に通達されると……
3日後。
その場所には多くの魔族が集結していた。
ヴァルバトス闘技場
魔族の正当な決闘を行うその場所で、俺達魔王チームと純魔評議会が顔を合わせた。
それを確認すると決闘の仕切りを任された男が宣言した。
「今より決闘を開始する!それぞれ1人ずつ場に代表を出し、死をもって決着とする。連戦するかは各自の自由だが、1度退場すると再度の出場は認めない。では、さっそく代表の1名以外は退場せよ」
その言葉に、事前にじゃんけんで順番を決めていた俺達の中からジークが場に残った。
そしてジークと相手の2人だけになると、さっそく決闘開始の鐘が鳴り響いた。
ジークは大剣を召喚すると相手も剣を抜き、じわじわ距離を詰め始める。
すると最初に攻撃を仕掛けたのは相手だった。
素早い動きと剣さばきに防戦一方のジークは、たまに大剣を振り下ろすが掠りすらしなかった。
少しずつ身体中に出血が目立ち始めると、相手の攻撃は更に激しさを増していった。
その様子を心配そうに見ている俺にシアが言った。
「大丈夫じゃ!そろそろ始まるぞ!」
そう言って笑みを浮かべるシアの言葉は正しかった。
ジークは大剣を振り下ろすと相手が距離をとった瞬間に力を込め始めた。
その様子に気付いた相手は距離を詰めて斬りかかるが、ジークは加速すると相手を上回る速度で一閃した。
相手はその場に崩れ落ちると終了の鐘が鳴り、俺達は最初の一勝を手にしたことを喜んだ。
その後、2人に勝利を納めると力を使い果たしたジークは退場を宣言すると戻ってきた。
そして俺達に「済まない、あとは頼む」と言うとフラフラとへたり込んだ。
俺はジークを椅子に座らせていると、順番が回ってきたゼルが気合を入れていた。
そして「じゃ、行ってくる!」と俺達に言うと場内に向かって歩き出した。
そしてゼルと相手が会場に入った事を確認すると合図の鐘が鳴った。
ゼルは両手に銃を召喚すると相手に向かって発砲した。しかし相手はレイピアで弾を弾くと とゼルに凄まじい勢いで刺突を繰り出した。
浅くだが、あちこちに刺し傷を受けたゼルは撃ち返すが相手の回避が速く当たらない。
消耗戦だと不利な状況を見守っていると、ゼルが不意に笑みを浮かべた。
何かする気だな?
俺が様子を見ていると、ゼルは場内の至る所に向かって発砲し始め、そして両手に力を込めると場内にばら撒かれた弾が光り始めた。
ゼルは相手に向かって銃口を向けると引き金を引いた。
すると場内の玉が全て相手に向かって一斉に加速を始め、相手を穴だらけにした。
死亡が確認されるとゼルは俺達に銃を向けて、撃つ仕草を見せると笑顔を向けた。
その後も快進撃は続いたが、9人目を倒したところで退場を宣言した。
フラフラしながら戻ると「あとは任せた……」と言って倒れこんだので、ベルは駆け寄ると肩を貸して席に座らせた。
そして順番が回ってきた俺に「トーヤ!頑張って!」と声を掛けた。
するとシアとメイは……敵の1人に目を向けて固まっていた。そしてシアは震えながら目を大きく見開くと俺に頼みごとをしてきた。
「トーヤ……あの男はあたしがやるのじゃ!」
視線の先には未だ余裕を浮かべる1人の男が仲間と談笑していた。
事情は分からないが何か因縁を感じた俺はシアに言った。
「分かった。なら他は俺が相手をするから……何があっても負けるなよ?」
そう声を掛けるとシアは「任せるのじゃ……」と、いつもと違う低い声で答えた。
俺は皆に拳を突き出すと同じように拳を突き出してくれた。
命をかけて戦う仲間との信頼関係を再確認すると、俺はゆっくり場内へと進んだ。
そして場内を見回すと……椅子に座るノワールを見つけた。
ノワールは俺を目が合うと何かを呟いて頷いたので、俺も力強く頷くと敵側に提案した。
「なぁ……1つ提案があるんだ。そいつ以外全員と俺で戦わないか?」
俺はシアが言っていた男を指差すと敵側は笑い出した。
「おいあいつは誰だ?」
「さぁ?のぼせ上がった新参者だろう?」
「どうする?我等に損はないが?」
「いいんじゃない?あいつをさっさと片付ければ、残るは蛇姫だけよ?」
敵側は話を終えると21人がまとめて入場し、俺を嘲笑し始めた。
そして開始のベルが鳴っても動きすらしない相手達に俺は溜息を漏らすと、さっそく魔威を10%程で発動した。
すると異変に気付き始めた相手が慌てて臨戦態勢に入ったが、俺は最大出力に威力を上げると全員その場に崩れ落ちた。
場がシンと静まり返る中、仕切り役が全員の死亡を確認すると終了を知らせる鐘が鳴った。
少し経って会場に魔族達の歓声が上がる中、ノワールに手を挙げると俺は退場を宣言した。
そして俺は皆の元に戻るとベルが「お疲れ様!」と労いの言葉を掛けてくれたので「うん!」と返事をすると、シアに話しかけた。
「シア……あとは頼んだ!」
俺がそう声を掛けると、怒りに満ちる表情を浮かべるシアが唸るように言った。
「任せるのじゃ……あいつだけはあたしがこの手で必ず……」
俺にそう言うと、シアは場内に進み始めた。
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