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NEET ねぎらう

空中庭園。


そこでノワールは書類の山に目を向けると溜息をついた。


仕事をする時間は無限にあるというのに、彼に割ける時間が全くと言っていいほど無い。

……会いに来てくれてないかな?


ノワールはそう考えていると……本当に彼が現れた。



……


「やぁ!ノワール。久しぶりだね!」

俺が声を掛けるとノワールは微笑みながら立ち上がった。


「トーヤ。いらっしゃい……何か用事でも?」


「たまにはゆっくり話したいなと思って!」

俺はそう言ったものの、よく見るとテーブルには書類が山積みになっていた。

出直そうか考えているとノワールは山積みの書類を片付けて言った。


「今日は暇だったの……さぁ座って。」

え……でも仕事してたんじゃ?

俺はノワールに聞いてみた。


「忙しいんじゃないの?俺ならまた時……」


「今日は暇だったの……さぁ座って。」


「俺ならまた来るか……」


「すごく暇だったの…さぁ座って。」

……まぁノワールがそう言うなら。

俺は座るとノワールも隣の席に座って紅茶を淹れてくれた。


静かに紅茶を飲んでいるとノワールが話し始める。


「トーヤ……会いに来てくれて嬉しい」

そう俺に言うと紅茶を口に運ぶ。


「そう言ってくれると俺も嬉しいな。あ、そうそう!エルダからノワールに預かってるものがあったんだ!」

俺はそう言うとアイテムボックスからサンドイッチを出した。


それを見たノワールは少し驚くと、しばらく眺めて手にとって食べ始めた。


「美味しい。本当に美味しいわ」

そう言って笑顔で食べるノワール……カシャ。うん!やっぱり綺麗だなぁ……保存。


おっと?

口元にソースが付いてる……その事に気付いた俺はハンカチを出すとさっと一拭きすると、ノワールは俺をじっと見て言った。


「……ありがとう」

あれ?

なんか怒ってる?

俺はそう思っていたけどノワールは全く別の事を考えていた。すると考えをまとめ終わったノワールは俺に聞いた。


「ねぇトーヤ?私の事を好きなの?」

その問いかけに驚いた俺は飲んでいた紅茶を気管に注ぎ込んでしまい激しくむせる。


「ねぇトーヤ?私の事を好きなの?」

ちょっと待って!

今は咳が止まらなくて答えられない。


「ねぇトーヤ?私の事を好き……」

呼吸が整ってきたのでノワールの問いに被せて答えた。


「うん。好きだよ」

俺の答えを聞くとノワールは満足そうに笑みをうかべて聞いてきた。


「私のどこが好きなの?」

その問いかけに俺は少し考えて答えた。


「まずは俺の事を俺より考えてくれるところが好きだね。そしてセリナとエルダを大切に思ってくれてるところも好きだ」

静かに聞くノワールに話を続けた。


「優しいところも、怒るとちょっと恐いところも全部ひっくるめてノワールの事が好きだよ?」

そう答えると……ノワールは庭園にソファーを出して俺に言った。


「座って」

……言われた通り座るとノワールは俺の太ももに頭を乗せた、

え、逆ひざまくら?

状況に戸惑う俺にノワールは甘え始めた。


「髪を撫でて」

言われるまま髪を撫でると、柔らかくてサラサラしていた。


しばらく撫で続けるとノワールは寝息をたて始めた。よっぽど疲れていたのかな?

俺はしばらく撫で続けると、目を覚ましたノワールは体を起こした。


そして「次は私の番ね」というと太ももをポンポン叩いて「頭を置いて」と言ってきた。


戸惑いながらも頭を置くと俺に言った。


「髪を撫でても良い?」

「良いよ」と答えるとノワールは優しく撫で始めながら俺に話しかけてきた。


「私もトーヤのこと好きよ。あなたの綺麗な髪が好き。真っ直ぐな瞳が好き。優しいところも……私の髪を撫でてくれる温かい手も好きよ」

静かに聞いている俺にノワールは話を続けた。


「ねぇトーヤ?キスしてもいい?」

驚いた俺は顔をノワールに向けると、また聞いてきた。


「ねぇトーヤ?キスしてもいい?」


「いいよ」

そう答えると目を閉じて顔を寄せてきたので、俺はノワールの頬に手を添えると唇を重ねた。


しばらくして顔を離すと顔を薄紅に染めるノワールは自分の唇に手を当てると口を開いた。


「もう一回」

そう言って俺の顔に手を当てると唇を押し付けてきた。

そして顔を離すと笑みを浮かべて言った。


「もう一回」

……10回目以降は数えるのをやめた俺は、満足そうに笑うノワールの膝から起き上がった。


ノワールは立ち上がるとテーブルに戻って紅茶を淹れて一口飲むと言った。


「甘かったわ……」

俺も椅子に座り紅茶を口に運ぶとノワールは話を続けた。


「トーヤの唇は甘かったわ。甘くて好きだったはずの紅茶が今は少し苦く感じるの」


「あなたは私の知らない世界を見せてくれる人」

そう言って苦そうに紅茶を口に運ぶノワールが、少しだけおかしくて愛おしく思った。



さて、そろそろ帰るか。

立ち上がって帰る事を告げると、ノワールは駆け寄ってきて俺に言った。


「またいつでも来て」

そう言ってまたキスをすると俺は転移した。


そして1人になった庭園に、書類の山を出したノワールは笑顔で書類に目を通し始めた。


いつも読んでくれてありがとうございます!

ブクマ31件目…ありがとうございます!

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