表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/115

セリナ それは莎漠に降る雪 後編

勅令……


いったいどんな命令が下されるのだろう?

不安そうにする私の手をティオが握ると、男は勅令書を開き内容を読み上げた。


「剣勇・ティオ。王の名において貴殿を「名誉騎士」と認定し命じる。これより隊を率いて越境し敵軍と玉砕せよ」


「剣姫・ネージュ。 王の名において貴殿を「名誉騎士」と認定し命じる。これより部隊と合流し敵軍と玉砕せよ」


「以上である」

そう言って男は去っていった。

要するに「出来るだけ敵を殺して力尽きたら死ね」と私達は命令されたのだ。


するとティオは空を見上げると私に言った。


「ネージュ……敵を全部倒せば帰ってこれるんだ!何がなんでも生き残ってやろう!」

そう言って私に笑顔を向けるけど……流石に笑えない。そんな私にティオは言葉を続けた。


「大丈夫!俺がなんとかするから!」

そう言って彼は私を抱きしめるた。


「約束だ!さっさと終わらせてネージュを迎えに行くから、その時さっきの返事を聞かせてくれ」

私に笑顔を向けるとキスをして彼は部隊に戻っていった。


私は剣を取ると司令本部に向かった。

そこで部隊と合流すると私は新たな戦場に向かう事になった。


私が剣姫と知っていたのか……仲間達は遠巻きに私を見ていたけど私は黙々と進み続けた。


そしてたどり着いた戦場で敵を殺し続ける日々が始まった。


これまでもずっとそうやって生きてきたけど、傍にティオが居ない事に凄く違和感があった。


だから毎日聞く各地の戦況連絡は楽しみだ。

だってティオの部隊が残ってる事を確認できるから。


部隊が無事という事は、彼がまだ生きてることの証明だ。


大丈夫……彼は私を迎えに来てくれる!

その日を心待ちしながら私も戦い続けた。




……だから私は信じなかった。


それはいつものように戦況連絡を聞いていた時、私の耳に飛び込んできた。


「剣勇ティオは名誉の戦死を遂げた。皆も彼に倣って敵軍に臆することなく……」

私は途中で聞くのをやめるとその場から逃げるように飛び出した。


ふいに立ち止まると、体から力が抜けて涙が止まらなくなった。

そんな私の頭の中では彼の言葉が繰り返されていた。


「嘘つきっ!私を迎えに来てくれるんじゃなかったの?その為に頑張ってたのに!!」

私の叫びは空に吸い込まれていった。



翌日


私は迫り来る敵を見て思った。


お父さんを殺して……次はティオも……なんで私から大切な人を奪うの?

私は歯をくいしばると込み上げてくる感情に震えた。


「今度は私が奪ってやる。私から彼を奪ったように!」

私は自分の中に意識を集中させると……

確かに彼が教えてくれた通り「それ」があった。


決して使ってはいけないと言われていたけど、約束を先に破ったのはティオだ。


私は周りに呼びかける。


「みんな私から離れて……そして私が死ぬか倒れるまで近付かないで。」

その言葉に仲間達は私から離れると距離を開け始めた。


私は振り返って距離を確認すると目を閉じて「それ」を握った。


そして気がつくと、私の周りには死体が溢れかえっていた。ふと先を見ると逃げ出す者の姿が。


私はそれを追いかけると1人残らず斬りつけた。

あれ……あんなに遠くにいたのに…それにこの兵士……停まってるみたいに動きが遅い。


暫くすると、周りに動く者がいない事に気がついた私に体を裂くような痛みが襲いかかった。


「っ!」

その痛みに耐えきれなくなった私は気を失って倒れた。



……


私は目を覚ますとテントの中にいた。


軋む体を起こして外に出ると、仲間達は馬鹿みたいに騒いでいた。その様子を眺めていると私に気付いた仲間達が嬉しそうに言った。


「剣姫殿!見事な戦いでした!」

仲間達はそう言って私を讃えると状況を話してくれた。


私が敵兵の大部分を倒すと混乱する敵軍を仲間達で殲滅し、この地の制圧に成功した。

そして敵がいないから呑気にバカ騒ぎしていたみたいだ。


話を聞いた私は既に真夜中になっていた風景を見ながら彼を想った。


ティオもこんな気持ちだったのかな?


あの激痛を誰にも言う事なく、いつも笑顔で私達に接してくれていた。


見上げた星空に、私はいつか聞いた彼の話を思い出した。


「ネージュ。君の名前は俺の故郷で「雪」って意味なんだ。 俺の適当な名前と違っていい名前だな。あ、そういえば「莎漠の雪」って聞いたことある?」


「聞いたことない。教えて?」


「敵の国の話なんだけど莎漠の話はしただろ?そこに雪が降るなんてあり得ない。だから起こることのない奇跡の事を莎漠の雪って言うんだって」

ふーん、そうなんだ。

あまり興味のなさそうな私にティオが話を続ける。


「俺のあだ名が「莎漠」君の名前が「雪」だから莎漠と雪が出会ったって考えたら、俺達が出会えたのは奇跡みたいなもんなのかなって思った」


……そう言って彼は笑ってた。


バカ。

奇跡ならいま起こしてよ……私を迎えにきてよ。


あなたがいない世界はとても寂しいよ。


それは確かにどんなに願っても叶わない……「砂漠の雪」だった。



……


私の気持ちとは裏腹に、ここ数日は静かなもので仲間達はそれぞれ自由に過ごしていた。


私はティオの事を考え続けては涙を流す日々を過ごしていた。


そんな日々は軍から届いた新たな命令で終わりを告げると、私達はまた戦う事が日常となる戦場に赴いた。


やる事は変わらなかったけど、私はティオと同じ力を使うようになった。

しかも驚いた事に私の力は彼より遥かに強い力だった。


私達は戦地を転々としながら戦い続けた。


そんな日々が2年も経つと戦況は大きく好転し、敵軍は急速に衰退していった。


追い込まれた敵軍は自国へと撤退し戦力の集中を図っていた。


私達は命令を受けて国軍に参加すると、敵軍が集結している場所を目指して移動した。


恐らく最後の戦場となるその場所は広大な平地だった。


敵軍の総数は10万……私達は17万。


ほぼ勝利が決まっている戦いだった。

私の予想通り2日後には敵国が敗北を宣言すると呆気なく戦争は終わった。


周りが歓喜の声を上げる中で私はティオを想った。


……やっと全部終わったよ?


まだ迎えにはきてくれないの?


私、すごく頑張ったよ?だから褒めてよ……





ザシュッ!



「え?」

音と共に背中に痛みが走った。


背中から流れ出た血が次第に広がると、私の服を次第に赤く染めていった。


痛みに耐えながら振り返ると、先程まで歓喜に沸いていた味方兵士達が私を冷たい目で見ていた。


すると、状況が分からず混乱する私の耳に悲鳴が聞こえ始めた。


そんな私に兵士の1人が言った。


「お前達が最後の「敵」だ。これで平和が訪れる」

意味が分からず周囲を見ると……この2年共に戦った仲間達が次々と殺されていった。


なんで?

私達が死ねば平和になる?



……もしかして!?


1つの可能性に気付いた私は聞いた。


「私達が……反乱を起こすとでも思っているの?」

その問いかけに兵士達は笑うと言った。


「今は敵国だがこれからは我等の仲間となる国だ。剣姫……貴様は殺しすぎた。貴様の首を土産にすれば和平がすんなり運ぶと王はお考えだ」

そう言って笑みを浮かべる兵士達を見た私は悔しかった。


……こんな国のためにティオは


私は……


……仲間達は戦っていたの?




……許さない。



背中の傷は致命傷だ。

もって1時間……いやもっと短いかもしれない…


でもそれだけあれば十分だ。


これが私の最期の戦いだと確信すると、私は目を閉じて「キラキラ」を掴んだ。





……


そして私はついに膝をついた。


周囲には味方だったはずの兵士の死体。


胸には剣が突き刺されていて、私の脈拍に合わせて血飛沫をあげていた。


ねぇティオ……何処にいるの?

私……1人でここまで頑張ったよ?


約束したでしょ?


……私を迎えにくるって。


返事を聞きにくるって言ったじゃない?


寂しいよ……寒いよ……痛いよ……。



あぁ神様。


一目だけでいいから彼に会わせて下さい。

無理ならせめてあの日の返事を彼に届けて下さい。


そう願うと視界が真っ暗になり、私の意識は深い闇の中へと落ちていった。


ブクマが27件に!

ありがとうございます!


ちなみにセリナ編ですが、長くなってます…

キリのいいところで一度本編に戻ろうかと思いますが、いかがでしょう?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ぬるい設定の軽いストーリー展開だったのに、ちょっとシリアスな展開に。 時々予想を外す小気味の良い展開は、アクション映画のようで好みです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ