NEET 和解する
突如庭園に姿を現した天神が俺達に頭を下げると言った。
「此度の件は全て我等天界の不始末と認め、謝罪するために伺いました。対話の機会を頂けませんか?」
天神の言葉に俺達は何も言えず沈黙すると、空気を読まないシアが言った。
「やい天神!ノワール姉様はやる気満々じゃ!さっさと帰って首でも洗っ……」
「シア。黙りなさい」
「分かったのじゃ……」
立腹するノワールの言葉にシアはすぐ黙ると、ノワールが天神に話し掛けた。
「久しぶりねヴァイス。元気そうで何よりよ……」
ノワールはそう声を掛けると話を続けた、
「それで何しに来たの?そこの天使には既に伝えたけど話すことはないわ。我等魔族は間もなく戦線布告を正式に行い……愚か者共を殲滅するわ」
その言葉を聞いたヴァイスはノワールに提案した。
「姉さんの怒りは理解できる……此方に非があることは明らかだし。ただ私達も黙って受け入れる訳にはいかないから1つ提案があるの」
静かに聞くノワールに天神は話を続けた。
「魔神の眷属を1人でも奴隷としている国家、都市、地域の領主やその関係者……あとは獣人を差別している個人を私の力で裁く事で手を打って貰えないかしら?」
ノワールはその提案を聞くと少し考え答えた。
「あなたの力というと……「聖なる裁き」よね?それでどんな処罰を与えるの?」
その問いに天神は笑顔で「死刑!」と即答すると、ノワールは俺を見て聞いた。
「トーヤ……どう?」
天神を含めた全員が驚いた。魔神たるノワールが他者に判断を委ねたからだ。
「俺に不満はないよ」
俺はそう答えるとノワールは天神に言った。
「ヴァイス。今この場で裁きを行うなら今回の一件は不問とするわ」
その言葉を聞いた天神は両手を胸の前で組むと目を閉じた。
すると天神の体から光が放たれ、光は人界全てを一瞬で包み込み消えた。
「姉さん……これでいいかな?」
「ええ。今回の一件はこれで不問とします」
そう告げると各魔王はノワールに頭を下げ転移していった。
天使達も天神の「先に帰りなさい」との言葉に一礼すると飛び立った。
そして庭園には天神、俺とノワールの3人が残った。
さて……俺も帰るか。
そう考えて転移水晶を準備しているとヴァイスが呼び止めた。
「待ちなさい。せっかくだから少し話しましょ?」
その呼び止めに素直に応じた俺は席に座ると俺達にノワールが紅茶を出してくれた。
最初に口を開いたのはヴァイスだった。
「それでトーヤ?はノワール姉さんと結婚したのよね?」
俺は頷くと答えた。
「はい。そうですね。」
その答えを聞いたノワールが一瞬顔を赤らめた。するとヴァイスはまた聞いてきた。
「私に敬語は要らないわ。それよりどうやってノワール姉さんを口説いたの?」
ヴァイスはそう聞くと返答を待っていたので、俺は少し考えて答えようとするとノワールがどストレートに答えた。
「私の一目惚れよ。私がトーヤを口説いたの」
ヴァイスはその答えに驚愕の表情を浮かべた。
「嘘でしょ?姉様から!?そんな事があるの!?」
……なんか失礼な事を言われた気がしたが、俺はあえて反論はしなかった。
するとノワールがヴァイスに聞いた。
「それよりヴァイス。私ともう話さないんじゃなかったの?」
ノワールは冷たい表情でそう言うと、ヴァイスは謝罪を始めた。
「だって私が謝罪に来なかったら神族と魔族の総力戦になってたでしょ?ノワール姉様が本気で怒ってるのは天界にいた私でも感知できたし……」
「それに「あの日」の事は私が悪かったわ。当時は姉さんの考えは到底理解できなかった。でも……あれから長い年月をかけて考えが変わったわ。だから……」
少しの沈黙の後ヴァイスが頭を下げると言った。
「ごめんなさい」
すると静かに話を聞いていたノワールがヴァイスに言った。
「ヴァイス……あなたを許しましょう」
そう言ってヴァイスに微笑みかけると、堰を切ったようにヴァイスが涙を流し始めた。
しばらく泣き続けた彼女は涙が止まると、替わりに話が止まらなくなった。ノワールは静かに……そしてたまに笑みを見せながら話を聞いていた。
すると話の途中でヴァイスが裁きの後始末の事を思い出すと、ノワールに「また来てもいい?」と聞いた。
ノワールが「いつでもいらっしゃい」と答えると「絶対にまた来るから!」と言って飛び立った。
ヴァイスが去り俺も帰ろうと席を立つとノワールが俺の背中に飛びついて言った。
「ありがとうトーヤ」
「何が?」
俺がそう聞くとノワールは嬉しそうに言った。
「トーヤのお陰であの日以来……疎遠となっていたヴァイスとの繋がりを再び戻す事ができたわ」
あの日……か。
ヴァイスも言ってたけどなんの話だろ?
気にはなったけど過去をほじくるのは良くないよな。
「俺のお陰かは分からないけど……良かったね!」
そう言うと、ノワールは俺から離れて椅子に座ると言った。
「そういえば私にもトーヤとシアの後処理があったわ。」
「ごめんなさい」
俺が謝るとノワールは微笑みながら言った。
「いいの……いつか返してもらうから」
……はい。
そう答えると俺は目からウロコ亭に転移した。するとセリナとエルダから質問責めにあったので、2人に明日説明する事を約束した。
そして俺はエルダの作った料理をペロリと平らげると、セリナと2人で部屋に戻った。
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鼻水がとまりません(^^)
 




