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NEET 現場を視察する

翌朝


俺達3人が食堂で朝食を食べているとそいつは現れた。


「トーヤ殿!奥方!おはよう!」

領主はそう言って俺達に近付くと、ノワールに気付いて驚きながら言った。


「ト、トーヤ殿?そちらの女性はもしや……?」

そう聞く領主に俺は「2人目の妻……ノワールです」と雑に説明した。


すると領主は驚愕の表情を浮かべながらも、ノワールに「トーヤ殿の奥方……ご結婚お慶び申し上げます」と丁寧に挨拶をした。


ノワールは奥方と言われてよほど嬉しかったのか……領主に「ありがとう」と笑顔で返した。


ノワールに挨拶を終えると領主は俺に言った。


「しかしトーヤ殿。綺麗な奥方に囲まれて羨ましいぞ!」

領主は俺に羨望の眼差しを向けるが、俺は適当にお礼を言うと要件を聞いた。


「ありがとうございます。ところで何か用事があったんじゃないですか?」

領主が来ると面倒ごとに巻き込まれるから、用件を聞いてさっさと断ろうと思っていた。

すると領主は思い出したように言った。


「おぉそうだった!実は我が屋敷にトーヤ殿の知り合いを名乗る者が来ておるのだが……心当たりはあるか?ベルと名乗っておる」

ん……ベル……あぁ彼か!先輩魔王だ。


「ベルは確かに俺の知り合いです……分かりました。早速会いに行きます!」

そう領主に答えた俺は2人にどうするか確認すると、今日は「3人でお茶会」との事だったので、俺は領主と2人で向かう事になった。


そして領主の屋敷に到着した俺に気付いたベルは俺に駆け寄ると言った。


「トーヤ!約束通り来たよ!」

そう言って俺の傍に来たベルに笑顔で答えた。


「ありがとう。歓迎するよ。」

そのやり取りを見ていた領主が俺にベルを紹介しろとせっついてきた。まぁ本来の目的は領主に紹介する事だったから、適当に領主をベルに紹介した。


「ベル。この人が領主のセインさん」

俺が適当に紹介するとベルは領主に挨拶した。


「トーヤを呼んでくれてありがとう。僕はベルシュタイン王国のベル。改めてよろしくね!」

その挨拶に領主が固まった。


おいどうした?

……少し待つと正気を取り戻した領主がベルに膝をついて言った。


「ベルシュタイン国王陛下であらせられましたか。失礼致しました!」

あ!そうだ……ベルって国王だった。

俺も領主に倣って膝をつくと、ベルは俺に慌てて駆け寄ると言った。


「ちょっと!トーヤは僕達の仲間だよ?そんな事はしなくていいから。」

その言葉に俺は立ち上がると、ベルは「早速、例の場所を案内してよ!」と言って俺の膝についた土汚れを払ってくれた。


その様子を見た領主は訳が分からないって顔をして俺を見てきたので、簡単に事情を説明すると全てを丸投げして屋敷の中へと姿を消していった。


気を取り直して俺とベルは建設予定地へと向かった。


その道中で、ベルと雑談を交わしながら歩いていると彼がふいに聞いてきた。


「そういえば……シアが突然うちに来て「トーヤとノワール姉様が結婚するのじゃ!」って言いに来てね……流石に笑っちゃったよ。あれシアの作り話だよね?」

そう言ってベルは笑うが、俺は笑えなかった。


やっぱり魔王のベルが聞いても信じられないどころか笑い話になっちゃう程にあり得ない話なのか?


しかし仲間に嘘をつく訳にはいかないので、俺は未だに笑い続けるベルに言った。


「あのさ……その話……本当なんだよね」

俺がそう言うと笑うのをやめたベルは青ざめた。


そうだよね……相手は何と言っても魔神……俺達魔王にとっては絶対の存在だ。


するとベルは呟くように言った。


「トーヤ……僕は何も聞かなかった。今はそれで良いかな?」

そう言って俺を見るベルに頷くと、俺達は暫く無言で歩いた。



……


現場に到着した俺達はさっそく建設状況を確認した。


病院は煉瓦造の立派な建前が完成していたのでざっくり内見すると、ベルは気付いた事を細かく手帳にメモしていた。

少し待っているとメモを書き終えたベルが「お待たせ!次に行こう!」と声を掛けてきたので、俺達は学校の建設現場へと向かった。


現場に到着すると多くの作業員が動き回っていたので、邪魔にならないよう見学していると俺達に声が掛かった。


「トーヤ殿。お久しぶりです!」

声を掛けてきたのは……レベッカ?だった。

俺は簡単に挨拶するとベルを紹介した。


「彼はベル。病院運営の件で力を借りています。」

紹介を済ますとレベッカの案内で施設を見て歩いた。


校舎はほぼ完成していたけど、追加で建設が始まった学生寮の進捗が若干遅れているようだ。


見学を終えるとベルは再びメモを取り始めたので、終わるのを待っているとベルがレベッカに質問した。


「今回開校するのは「初等学院」と「中等学院」かな?」

そう聞くベルにレベッカが答えた。


「そうです。「高等学院」については学生の確保が不可能と判断しました。ですので中等学院の生徒が進学できるようになる「5年後」に合わせて建設計画を立てています」

ベルは少し考えると俺にも意見を求めてきた。


「まぁいずれ建設するなら人も材料もある今のうちに建設しておく……ってのもありかな?」

俺の答えにベルは笑顔で頷くと話を続けた。


「そうだね!僕もそう思ったんだ。問題は学生と教師かな……うん。これは後でメイとゼルに話してみるよ」

するとその会話を聞いていたレベッカは「至急建設計画を変更します!」と言って駆け足で場を去っていった。


話を終えるとベルもそろそろ帰るというので「ベル。今日はありがとう!」と声を掛けると「ううん?僕も現場を見たかったし……トーヤとも話せたし良かった!また来るね!」と言って転移していった。



用事も終わったし俺も帰るか!

俺はゆっくり宿へと向かって歩き出した。


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