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エルダ 溢れる想い

その日は突然訪れた。


空から舞い落ちるチラシを手に取ると私は確信した。これはきっと彼の事だ!

根拠は無いけど、なぜかそう確信できた私は彼を探した。


だけどなかなか見つけることは出来なかった。

私は頭をフル回転させると1つの可能性にたどり着いた。


……そう。

彼はあの時セリナを1人で助けに行ったんだ。もしかしたら今回も1人で向かうかもしれない。


そう考えた私は町の出口へと走った。

すると私の予想は当たり、彼は彼女と寄り添いながら歩いていた。


近付くと2人は足を止めて向き合っていた。

彼を見て目を閉じるセリナ。彼は何かを口に含むとセリナに顔を近づけていく。

何をする気かわからなかったけど嫌な予感がした。


私は2人に声をかけると彼は何かを吐き捨てて、どうした?と聞いてきた。


私は彼にチラシの事を聞いた。

すると彼は認めたうえで今から行ってくると言った。


……行けば間違いなく殺される。

そう確信していた私は必死に彼を引き留めた。

彼が1番大切にしてるセリナの事を引き合いに出して匿うとも言った。


でも、そもそも彼はセリナを連れていく気は無かった。セリナを私に預けると彼は1人で町の外へと向かっていった。


止めたかったけど……私の言葉はきっと彼には届かないと悟った私は、意識を失ったセリナを家まで連れて帰ると彼の無事を祈った。


しばらくすると、遠くで爆発音や激しい雷の音が鳴り響き始めた。

いったい何が起こっているのだろう?

そんな事を考えているとセリナが目を覚ました。 彼女はあたりを見回すと旦那様は?聞いてきた。


私は彼の伝言を伝えるとセリナは涙を堪えて「帰ります」と言った。

心配だったのでセリナに付き添って彼女達の部屋まで一緒に向かった。


部屋に着いてしばらくすると、突然女の子が彼を抱えて現れた。その子は彼をベッドに投げるとセリナと少しの会話をして姿を消した。


セリナと2人で彼の体制を整えると、部屋を後にした私は帰り道で彼の無事を魔神様に感謝した。


それから私は、毎日セリナの様子を見にいく名目で部屋を訪ねた。変わらず彼は眠り続けていたけど、顔を見れるだけで幸せだった。


そんな日々の中で店の建築が終わった。

真新しい店舗だけど実は私は1つ要望を出していた。


それは新しい店にも目からウロコ亭を残して欲しいというものだ。


私と彼が出会った場所をどうにか残したかった。

幸いにも私のアイデアは無事に採用された。

初めてのお客様はセリナだった。彼女も目からウロコ亭が存続していた事を喜んでくれた。


あとは彼が目を覚ましてくれたら……その時はこの気持ちを捨てて……1人の友人として。


すると、それからすぐに彼は目を覚ますと店へとやって来た。私は勇気を出して彼を「ヴァレさん」と呼んだ。そして彼も私を名前で呼んでくれるようになった。


よし!私と彼は友達だ!!その後の会話は冗談を交えながら3人で会話を楽しんだ。



……なのに。


その日セリナはとんでもない美人を連れて店に来た。誰だろう?セリナに聞くと笑顔で「2人目の奥さんです」と教えてくれた。


私は頭が真っ白になった。

彼はセリナを一途に思っているんじゃなかったの?それとも……美人だったら誰でも嫁に迎える人だったの?


思わず涙が溢れてしまった。

私の考えが間違ってることはすぐに分かった。


ただ……私は自分ごときが彼に選ばれるわけないと諦めて、勝手に諦めただけだ。

泣いている私をセリナは抱きしめながら言った。


「旦那様の事を想っているなら素直に伝えれば良いんですよ?きっと旦那様は誠実に応えてくれます」

そう言って私の髪を撫でてくれた。


私は耐えきれずにこれまでの話を……想いをセリナに吐露した。

するとセリナはそれを静かに聞くと言った。


「エルダさんの想い……気持ちはよく分かります。なら尚更、旦那様に伝えるべきです」

そう言って笑みを浮かべるセリナに聞いた。


「でも……いいの?私、こんなに汚くてドロドロしてる……」

その言葉を聞いたセリナは、首を横に振ると言った。


「私はエルダさんの気持ちを汚いなんて思いませんよ?」

セリナはそう言って励ましてくれた。

私は涙を拭うとカウンターに戻り、 料理を作るとテーブルへ運んだ。


美味しそうに食べる2人を横目に、彼もきっとここに来ると考えた私は有り合わせの食材でサンドイッチを作った。


すると予想通り彼は店にやってきた。

声を掛けようとしたけど、彼は私に見向きもせずに2人の元に向かうと、2人目の奥さんと親しげに話を始めた。


私は無性にイライラして、手に持ったサンドイッチの皿を叩きつけるようにテーブルに置いた。


その様子に驚いた彼は私の名前を呼ぶけど無視したら、セリナは私にキラーパスを出した。


慌ててセリナの口を塞いだけど、話を聞いていた2人目の奥さんが私の想いをそのまま彼に伝えてしまった。


そして固まる私に彼が話しかけてきた。

耐えきれなくなった私は脇目も振らずカウンターの中へと逃げ込んでしまった。


ブクマが14件に!

土下座(^^)

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