NEET 3人でお出かけする
セリナの案内で俺達は町をぶらぶら散策していた。
セリナはノワールの手を取るとあちこち連れて回ったけど、まだ慣れないのかアタフタしながらセリナに着いて行った。
そんな様子を眺めていると町が少し騒ついていた。
聞き耳をたてると、どうやらノワールの事を話しているようだ。
「誰だ!?あの美人は?」
「お前ちょっと声を掛けてこいよ」
「相手にされる訳ないだろ?隣にいる娘……前に声かけた時に普通に躱されたし……」
……ちょっと待て?
今、お前なんて言った?まさかセリナにちょっかいを掛けたのか?
よし、そこを動くなよ?
今すぐ用意してやろう……。
あの世への「片道切符」をな!遠慮はいらない。
俺がどす黒いオーラを放ちながらその男に近付いていると、セリナから声が掛かった。
「旦那様!こっちですよ♪」
少し離れた所で手を振り俺を呼ぶセリナに笑顔を向けると心の中で……命拾いしたな?小僧!と言いながら駆け寄った。
俺は2人に追いつくとセリナはノワールの手を取り、再び引っ張り回し始めた。ノワールも少し表情がほぐれたのか、楽しそうにセリナと会話していた。
俺はそんな2人の後ろをてくてく歩いていると、なにやら視線を感じた。どこからだろう?辺りを見渡すと……視線の主を見つけた。
うさ耳の店員さんだった。
目が合うとペコリと頭を下げたので俺も軽く会釈すると……あ……そういえば!俺は2人に駆け寄るとこれからどうするか聞いた。
するとセリナが「目からウロコ亭で食事でも如何ですか?」と提案してきたので2人に先に行くように言った。
するとセリナは不安そうな様子のノワールさんの手を引っ張って目からウロコ亭へと向かった。
俺は2人を見送るとうさ耳の店員さんがいるその店「もふもふ長耳宝飾店」に足を向けた。
店に着くと視線の送り主……うさ耳の店員さんは「いらっしゃいませ!何かお探しですね!」と言って俺を迎えてくれた。
俺は「この指輪と同じものが欲しいんですけどありますか?」と尋ねると「確認するから奥でお待ちください」と案内されたのでソファーに座ってしばらく待った。
しばらく待っていると店員さんがいくつか指輪を持ってやって来た。
「お待たせ致しました!こちらが同型の指輪です」
確認すると確かに同じ指輪が4つ並んでいた。そしてサイズは全て「Q」だった。
店員さんが言うには……もともと「K」が1つ、「Q」が5つでワンセット。
製作者は100年ほど前、天才宝飾師と呼ばれた「タシェル・シェノザッキ」という人らしい。
何だろう……その説明を聞いた俺は、指輪を全部買わなきゃいけない……そんな気がした。
だがしかし……本能というか直感というか……頭の中で何かが警告していた。「全部買ったら、引き返せない運命が確定する」と……。
……
30分後。
「お買い上げありがとうございました!」
店を後にする俺を手の空いた店員さんが総出でお見送りしてくれた。
そして俺の姿が見えなくなると、店内はお祭り騒ぎが起こった。高額すぎて絶対に売れないと言われていた「タシェル・シェノザッキ作 Harlem ring set」が売れたからだ。大喜びの渦の中、うさ耳の店員さんはふと呟いた。
「Harlem……なんて読むんだろ?」
まぁいっか。
店員さんは考えるのをやめると仲間の歓喜の渦に飛び込んでいった。
……
目からウロコ亭についた俺はドアを開けると2人の姿を探した。すぐに見つけると、俺は2人が座るテーブルに向かった。
そして席に座ると、ノワールが嬉しそうに笑顔を向けながら聞いてきた。
「トーヤ……遅いわ。何をしてたの?」
「あぁ……ちょっと用事があって」
俺がそう返すとノワールは話を始めた。
「そう。セリナと食事を先に済ませてしまったの。凄く美味しかった。」
そう言って嬉しそうにするノワールは……なんか雰囲気が変わったかな?明るくなった気がする。
そんな事を思っているとセリナが俺に聞いてきた。
「旦那様、お腹空いてませんか?何か頼みましょう」
「そうだね!えっと……」
俺が何を食べるか考えていると、エルダがドン!と山盛りサンドイッチをテーブルに置いて席に座った。
……なんか怒ってる?
「エルダ?」
俺は話しかけるが完全無視……何かしたか俺?するとセリナがエルダに笑顔で言った。
「まぁまぁ……エルダさん。言いたいことがあるなら旦那様に直接……」
ニコニコしながら声を掛けるセリナの口をエルダは慌てて塞いだ。
「ちょっとセリナ!?何を言うのさっ!?」
エルダはそう言うと顔を赤くした。
未だに状況が把握できない俺に、ノワールが豪速球の発言をした。
「トーヤ……その娘もトーヤに嫁ぎたいそうよ」
その言葉に俺とエルダは固まった。
すると力の抜けたエルダの手から逃れたセリナはニコニコしていた。
ノワールはサンドイッチをパクりと一口食べると「これも美味しわ」と呟いた。
「えっと…エルダ?」
俺は真意を聞こうとエルダに声を掛けると、エルダはカウンターの中へと飛び込んでいった。
読んでくれてありがとです!
読者様がいての、へっぽこ作者です!




