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NEET 目を覚ます

目を覚ました俺の最初の仕事は……


泣きじゃくるセリナを撫でまわす事だった。

抱きしめながら頭を撫で続けること数時間……セリナもだいぶ落ち着きを取り戻すと、俺が眠っていた間の話を聞かせてくれた。


話によると覚醒に成功した俺はそのまま眠ってしまったみたいだ。そんな俺をシアは抱えると宿の部屋まで転移して運んでくれた。

すると部屋には意識を取り戻したセリナとエルダがいたから、シアは俺をベッドに投げると……


「ヴァレンタインは無事じゃ!!しばらく目を覚まさぬじゃろうが心配はいらぬぞ!!そのうちまた遊びに来るからの!」

そうセリナに言い残すと転移して姿を消した。


それからセリナは、俺が目を覚ますまでずっと傍にいてくれたみたいだ。そしてエルダは毎日セリナの為に食事を持って来てくれた。

……エルダには改めてお礼しなきゃな。


町は……というと当初は大混乱。

そんな中で突然、遠くで激しい落雷や爆発音が続いた。混乱が深まる中で領主と数十人の有志が国軍のいる平地へと向かった。


現地に到着した領主達は焼け焦げた大地と、あたり一面の死体に驚いた。何があったのか確認しようと近付くと急に大地が光り出した。


その光が消えると……死体の山は消えて焼け焦げた大地は元の平地へと戻っていた。

町に戻ると、領主は国軍の脅威は去った事を宣言して回り事態の収拾を図るが……その話を住民達は半信半疑で聞いた。


しかし、何日経っても攻めてこない国軍に疑問を持ち始めると…


今では事件そのものが誰かの大掛かりな悪戯だったんじゃないか?とさえ思われるほどに町は平穏を取り戻していた。


すると話を終えたセリナが唐突に言った。


「そういえば完成したんですよ?」

そう言って笑顔を浮かべるセリナに聞いた。


「ん、何が?」

言葉の意味が分からない俺は首を傾げると、セリナは詳しい話をしてくれた。


「目からウロコ亭です!……あ、お店の名前が変わったので正確には……いえ!それは見てからのお楽しみですね」

そう言うといたずらっ子のような笑顔を見せるセリナの表情がとても可愛かったので…


カシャ!

俺の心のアルバムにまた一枚の写真が追加された。いつか現像できれば良いのだけど。


そんな事を考えている俺にセリナが提案してきた。


「それで……もし体が大丈夫なら行ってみませんか?」

セリナはそう言って伏し目がちに俺を見てきた。俺の身体の状態が気になってるみたいだ。

俺はセリナに笑顔を向けると言った。


「そうだね。リハビリも兼ねて歩きたいし…」

そう言ってベッドから起き上がると背伸びした。そして手足を伸ばして体をチェック……問題はなさそうだ。


「うん!大丈夫。じゃあ行こうか!」

俺はさっそく服を着替えると、準備を終えたセリナに手を引っ張られながら部屋を出た。


そして2人で階段を下りると宿の主……確かシルビアさん?と、ばったり遭遇した。すると俺を見たシルビアがセリナに声を掛けた。


「あら!ねぼすけの旦那さんがやっと目を覚ましてくれたのね?良かったわね!セリナちゃん」

シルビアの言葉にセリナは笑顔を浮かべると言った。


「はい!ありがとうございます」

それから少し会話をして宿を出ると、目からウロコ亭へと向かって歩いた。



……


「うわ。これはまた立派な店になったな!」

「新生」目からウロコ亭を見た俺は驚いた。見違えるくらい綺麗な建物へと姿を変えていたからだ。

セリナも俺の言葉に同意すると言った。


「ですよね!私も最初見た時はびっくりしました!」

以前は良く言えば趣きがある……悪く言えば古臭い外観だった。

しかし今はお洒落な洋風レストランのように洗練された建物になっていた。


そして店の看板には……


「どらねこはくつろぎ亭」


……まぁ目からウロコ亭よりはいいのか?

セリナは「可愛い店名になりましたよね!」って言ってるし……。


俺は気を取り直して店へと入ると、店内は木の温かみを感じる素敵な空間が広がっていた。

そしてお客さんも沢山いたので、どこに座ろうかと空いてる席を探している俺にセリナが言った。


「こっちです!」

セリナは俺の手を引っ張り店内を進んでいくと、そこには地下へと続く階段があった。

そのままセリナの誘導で階段を降りると、光に照らされたドアと看板があった。

看板には…


「目からウロコ亭 本店」


……そう書かれていた。


本店てことは支店も出来たのか?

まさか俺が寝てる間にフランチャイズ化したというのか?

疑問はあったけど、俺達はさっそくドアを開けて中に入った。するとそこには以前の目からウロコ亭とほぼ変わらない景色が広がっていた。


すると唖然とする俺に気付いたエルダが声を掛けてきた。


「いらっしゃいま……って、あ!ヴァレさん!?目を覚ましたの?」

エルダ俺達に駆け寄ると笑顔を浮かべると、カウンターへと案内してくれた。


ヴァレさんて……俺の事か?

まぁいいんだけど。


俺達が席に着くと他愛もない話が始まった。エルダも料理を作りながらカウンター越しに会話を続けると、料理がでてきたので久しぶりに食事を楽しんだ。


すると、店長の姿が見えない事が気になった俺はエルダに聞いてみた。


「そういえば店長は?居ないみたいだけど?」

そう尋ねるとエルダは答えてくれた。


「店長なら領主様の屋敷で話し合いに行ってるよ。この間始まった土地の開拓事業の話し合い?みたい」


「へぇ。あの話も動き出したんだ!」

俺がそう言うと、エルダは不思議そうに聞いてきた。


「ねぇヴァレさん。何でその話を知ってるの?ずっと寝てたはずなのに?」

首を傾げながら聞いてくるエルダに理由を話した。


「だって領主から聞いてたから。土地を広げて農業を始めたり、病院やら学校を作るんだろ?」

すると俺の話を聞いて、セリナも思い出したように言った。


「あ!あの時の話ですね?旦那様が領主さんにお金を借りに来た時の!!」

セリナの言葉にエルダは驚きながら言った。


「ヴァレさんがすごいお金持ちとは薄々感じてたけど、まさか領主さんにまでお金を貸してたなんて……あ!ねぇ欲しいものがあるんだけど?」

エルダはそう言うと俺に真剣なまなざしを向けてきた。セリナの件もあったしお礼をしようと思っていたから好都合だ。


「いいよ!何が欲しい?」

俺がそう聞くと、エルダはクネクネしながら言った。


「ヴァレさんクラスとは言わないけどイケメンで優しくてお金持ちの彼氏が欲しい!!ヴァレさんの知り合いに居ない?」

予想の遥か斜め上をいく要望だった。

ごめんエルダ……お金で買えないものについては俺って本当にポンコツなんだよ。


「……あいにく知り合いには居ないかな」

俺は視線を逸らしながら呟くと、エルダは肩を落として言った。


「……あぁ……そぅ……もし知り合うことがあったら紹介してね……」



その後、何とかメンタルを回復させたエルダと3人で会話を楽しむと、俺とセリナは店を後にした。


ブクマ11件

……感謝です!

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