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NEET よく考える

屋敷を出た俺は

小走りに目からウロコ亭へと向かっていた。


流石に2日連続で

物騒な事件に巻き込まれる事は無い……

はずだけど、やっぱり心配だ。


ともかく急ぐに越した事はない。


ここからはダッシュで向かうか……

と、ちょうど宿付近まで戻ってきたあたりで

その看板が目に留まった。


「売物件 内見大歓迎 やどかりのから不動産」

……流石に物件は要らないなぁ。


なのに何故だろう?

近日中に俺は

やどかりのから不動産の

お世話になる予感がする。


……考えすぎかな?

っとそうだ!


セリナを迎えに行かなきゃいけない事を

思い出した俺は、足早に目からウロコ亭へと向かった。


店に着くと

入り口には「CLOSED」の看板が置かれていた。


……何かあったのか?

俺は入口に近付くと、中から笑い声が聞こえる。


さっそくドアノックをするとを中に入った。

そこには猫耳の店員さんとセリナがいて、

楽しそうに会話する姿が見える。


すると、俺に気付いた猫耳の店員さんが声を掛けてきた。


「あ、いらっしゃいませ!って今日は休みなので……こんにちは」

俺も「こんにちわ」と挨拶を返すと

2人のいるテーブルへと向かった。


そして席に着くと3人での談笑……

というか圧倒的な女子優勢の

ガールズトークに巻き込まれた。


猫耳の店員さんが

おすすめの服屋やアクセサリーショップの話をすると

セリナは興味深そうに耳を傾ける。


他にも、町ではどんなものが流行してるとか……

そんな会話の中で、俺はたまに意見を求められると

「そうだね」

「確かに!」などの各種空気を読んだ相槌を打つ係に徹した。


ただ、セリナが楽しそうに会話している姿は

見ていて嬉しい。


こんな時間がずっと続けばいいな!

って本当に思っていた。



……つい3時間前までは。



2人の終わらない話。

時間が経つにつれ盛り上がり続ける会話。


たまに来るキラーパスのような相槌タイム……


気がつくと2人は互いを名前で呼び合うようになった。

そこからギアが一段上がったように

急激に仲良くなっていく。


「でね?セリナ!その話のオチなんだけど〜」

エルダは楽しそうにセリナに言った。


「そうなんですか!?エルダさんって意外とry」

セリナは顔を赤らめると返事を返した。



………


そろそろ限界だ。

様子を見て離席しよう!


そう決意しすると、慎重に2人の会話の途切れ目を探した。

2人の邪魔をせず

なおかつ自然に離席できるタイミングを……



!!


今だ!!!!

俺はスッと立ち上がると……


上の階から「ガシャーーン!!」と激しい物音が。


効果音なんて頼んだ覚えない俺とセリナは心配したが

猫耳の店員さん、いやエルダはため息をつくと呟いた。


「何やってんだか……」

そう呟くエルダに、セリナが心配そうに声を掛けた。


「エルダさん、上で何かしてるんですか?」

確かに尋常ではない音だったし、俺も気になった。

するとエルダは肩を落とすとセリナに答えた。


「…ウチの店長、お父さんが屋根裏を修理してるの。日曜大工でどうにかなるレベルじゃないんだけど、変に張り切っちゃってね」

エルダの話を聞いて納得した。

しかしあの音を聞いた俺は

修理というより解体と言った方が正解のような気がした。

そんな事を思ってるとエルダが愚痴をこぼす。


「こんな場所のボロ物件でも家賃は結構取られるの……賃貸だけど修繕費用は自前で持たないと駄目って契約だし。雨季に入る前には直さないと開店できない。お父さんも必死に修理してるんだけどね……」


エルダの話を聞いて

俺とセリナは何か出来ないか考える。


その様子に気付いたエルダは「気にしないで?なんとかなるから」と言って話題を切り替えた。


そして昼時になると

エルダが賄いで料理を出してくれた。

賄いとはいえ十分美味しい!

特にこのサザエの壷焼き?みたいなのは絶品だ!


俺は壷焼きを食べていると

ふいに何かが胸の奥に引っかかった。


何だろう?

少し考えると、引っかかる理由に気がついた。


あ!やどかり不動産!!

思わぬところでフラグが立ってしまった。

もはやこれは決定事項といって良いかもしれない。


俺はすぐにヘイナビ!!

と声を掛けたけど……あれ?反応がない。


それから待つ事数十秒

なんの前触れもなく案内がスタートした。


……まぁ良いんだけどね。


何はともあれ善は急げ。

俺は食事を切り上げ立ち上がると、

キョトンとする2人に「ちょっと出てくる」

と言い残して店を出た。


向かうはやどかり不動産

駆け足で移動するとあっという間に到着。


さっそく入ると、穏やかな雰囲気を纏った

初老の男性が対応してくれた。


「やどかりのから不動産へようこそ。何をお探しでしょうか?」

そう尋ねられたので

俺はさっそく本題を切り出した。


「通りで売り物件の看板を見まして……他にも良い物件があれば紹介して貰いたいんです」

俺がそう答えると丁寧な接客をしてくれた。


「かしこまりました。条件や予算などをお聞きしたいので、どうぞこちらにお座りください」

勧められるまま席に着くと、お茶を出してくれた。


俺はお茶を飲みながらしばらく待っていると

担当の人が書類を持って向かいに座った。


「お待たせ致しました。私はゼーレンと申します。先ほどの続きとなりますが詳しい条件をお聞きしてもよろしいでしょうか。」

俺も簡単に挨拶すると希望の条件を提示した。


・築浅かリフォーム済み

・飲食店の営業が出来る

・集客力の高い場所


※予算は問わない


条件を確認したゼーレンさんは

書類の中から4枚の資料を取り出して見せてくれた。


「条件のうち2項目一致するものが3軒、3項目一致するものが1軒です」

俺は迷わず3項目が一致した物件の書類に目を通した。

……やっぱりあそこか!

その物件は目からウロコ亭に向かう途中に見た物件だった。


早速内見を依頼すると、すぐに準備してくれた。

店舗の裏手に案内されると馬車が停まっていた。

もしかしなくても、これに乗るの?


すごく嫌なんだけど……

そんな俺をよそにゼーレンさんは

笑顔でドアを開けて待っていた。


……仕方ない。

俺は乗り込むと薄いレースのカーテンを閉めた。

すると馬車はゴトゴトと音を立てながら移動を開始した。




その頃セリナたちは

相変わらずガールズトークを続けていた。


「そう!それでね……って、あれ?馬車だ!!珍しい!どんな人が乗ってるのかな?」

窓の外に見えた馬車にエルダが反応する。


セリナも目をやると

立派な馬車が通りを優雅に進んでいた。


「うわぁ!凄いですね!!」

セリナもそう言って眺めていたら

レースのカーテン越しに一瞬だけど

見覚えのある顔が見えた気がした。


まさか……旦那様?と思ったけど

再びエルダとのガールズトークに花を咲かせるのだった。


ブクマ6件…涙の滝!

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