NEET vs2人組の男
俺に指名された2人の男は
ニヤつきながら前に出てきた。
……2人を傷つけた代償は払ってもらう。
俺の中に怒りが溢れる中
不意に声が聞こえてきた。
$€命で贖わせよ€$
何だこの声……したがナビの声か?
微妙に違うような感じはしたけど……。
誰かに言われるまでもなく
もちろん贖って貰うつもりだ。
俺は2人組に近付くと
右側にいた男に力を込めた拳で殴りつけた。
すると、殴られた男は複数の壁を突き破ると見えなくなる。
あれ……なんか豚を殴った時より威力が上がってる?
左にいた男はその様子に青ざめると
後退りして場を離れようとするが
逃がすつもりはなかった。
そいつが尻餅をついたタイミングで蹴り上げると
天井を突き破って屋根に大きな穴をあけ、
彼方に消えていった。
場に残っていた兵士達には
「散れ、雑魚ども!」と一喝するとダッシュで逃げ出したので、俺はセリナの傍へと戻る。
「立てるか?」
そう言って血に染まった手を差し出した。
その事に気付いた俺は慌てて手をひっ込めようとしたけど
セリナは構わず手を取って言った。
「旦那様が私を守るために汚した手を振り払う訳ないじゃないですか?」
俺はそう言って笑うセリナに安心したけど……
そうだ……帰りはどうしよう?
そうだ!こんな時こそナビに尋ねてみよう。
そう決めると俺はさっそくナビに呼びかけた。
「……ナビ?ヘイナビ!」
呼びかけにナビはすぐに応答してくれた。
「マスター。お呼びでしょうか?」
俺はナビに町へ戻る方法を確認すると
一つのアイデアを提案してくれた。
「サーチの結果、城の宝物庫に転移水晶というアイテムが見つかりました。ナビを開始しますか?」
ナビってサーチまで出来るんだ!
すごい機能だと驚く俺を
ナビはスルーして案内を始めたので
俺達は宝物庫へと移動を始めた。
道中でセリナは俺にくっつきながら歩いた。
……あんな目にあった直後で不安なんだろう。
俺はセリナの手を握るとナビの案内で進み続けた。
兵士達に呼び止められるたびに蹴散らしながら進むと
無事に宝物庫へと到着した。
その扉には頑丈そうな鍵が付いていたが、物理破壊した。
……やっぱり俺って強いのか?
そんな事はさておき
中は金銀財宝が溢れかえっていたので
どこに転移水晶があるか検討がつかなかった。
俺はどうしたものか悩んでるとナビから提案が。
「マスター。宝物庫全てをアイテムボックスに収納し、そこから転移水晶を取り出すというのはいかがですか?」
ナイスアイデア!
まずは金銀財宝全てを収納した。
そして転移水晶を指定すると
すんなりと見つけることが出来た。
あとは他の中身を返すだけだ。
そう考えていると…またナビからの提案があった。
「マスター。このまま持ち帰る事を推奨します。」
!?
「どうしたナビ?君にも物欲があったのか?」
そう聞くとナビから意外な答えが返ってきた。
「慰謝料と判断します」
……なるほど。
セリナを傷付けた慰謝料と考えたら
まだまだ足りない気もするが、納得した。
……用も済んだ事だし帰るか。
セリナの手を握り水晶に転移を願うと光に包まれ
次の瞬間には宿の部屋へと戻ってきていた。
安心してほっと胸を撫でおろしてる俺の背中に
セリナが飛びつく。
「どうしたの?まだ怖い?」
背中越しに首を横に振っている事が伝わる。
ならどうしたんだ?
「旦那様が助けに来てくれて……すごく嬉しかったです」
セリナはそう言うと抱きしめる力がより強くなった。
本当に無事に助ける事ができて良かった。
そんな事を考えていると不意に思い出した俺は
セリナにお礼を言った。
「セリナ……ありがとう。セリナが作ってくれた料理はすごく美味しかったよ!」
その言葉にセリナは驚いたように聞いた。
「食べてくれたんですか?」
「うん。セリナを助けに行く前に猫耳の店員さんが教えてくれたんだ。素材のゴツゴツした食べ応えがクセになりそうだったよ」
少し意地悪な感想にセリナが言った。
「からかわないで下さいっ!」
そう言ってセリナは俺から離れた。
俺は振り返ってセリナの顔を見ると…
頬を膨らませてお怒り顔だった。
また作って欲しいなぁ……。
あ!
大事なことを忘れていた俺はセリナに言った。
「そうだ!猫耳の店員さんは大丈夫かな?」
「そうでした。店員さんは私を助けようとして……お礼もお詫びもしなければならないのに……」
そう言って慌てるセリナの手を取ると言った。
「とりあえず目からウロコ亭に行こう!」
セリナも頷くと俺たちは急いで目からウロコ亭に向かった。
俺達が店に着くと灯りは消えていた。
あれだけの騒ぎの後だ…店を閉めてるのも当然だ。
今日は諦めて出直すか……
俺たちが引き返そうとした時、店の灯りがつくと
店内から猫耳の店員さんが出てきた。
……セリナは駆け寄ると肩を震わせながら謝った。
「ごめんなさい。私のせいで怪我をさせてしまいました……本当にごめんなさいっ」
店員さんはセリナを抱きしめ言った。
「私は大丈夫ですよ。それより……大切なお客様なのに何もしてあげられなくて……私こそごめんなさい。無事で何よりです」
2人は暫く抱きしめ合うと
また明日顔を出す約束をして別れた。
セリナも店員さんも……胸に引っかかるものが取れたような
スッキリとした顔をしていたので、俺は安心した。
その後、宿に戻った俺たちは風呂に入ると
ベッドにダイブした。
今日は色々あって疲れていた俺達は
すぐ深い眠りに落ちる。
すると俺が眠りに落ちる直前……
$€因子の発現を確認€$
聞き覚えのある声が聞こえた気がしたが
睡魔に負けた俺はそのまま眠ってしまった。




