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NEET 魔神襲来!

「お姉ちゃん?……どうしたの?」


2人分の入町税を払って町に入った途端に黙り込むキキョウの様子を見たツバキは、首を傾げながら聞いた。


「すみません……少しボッとしてました」

そう答えてツバキと手を繋ぐと町の散策を始めた。


早朝なのに街路は多くの獣人が行き交っていて、露店からは活気の良い声が聞こえてきた。

すると、その様子を眺めながら歩くキキョウの鼻に美味しそうな匂いが漂ってきた。


その匂いを辿りながら歩くと、灯りがついていない店の前に着いたキキョウは肩を落として言った。


「すみません……美味しそうな匂いを辿ってきたんですが、まだ開いてないみたいです」

そう言ってショボンとするキキョウにツバキは笑顔を見せると言った。


「お姉ちゃんもお腹が空いてたの?」


「もうペコペコですよ……でも、まだ開いてないみたいだし、さっきの露店まで戻りましょうか」

そう言ってキキョウは肩を落とし溜息をつくと、その様子を見た女性が声を掛けた。


「どうかされましたか?」



……




いつものように目を覚ました俺とセリナ、ステラは着替えを済ませると、エルダと朝食を食べる為に目からウロコ亭を目指して歩いていた。

3人で他愛もない話をしながら店の前に着くと、見知らぬ女性と少女が立っていた。


「お客様でしょうか?」


「……かもしれないね。声を掛けてみようか?」

俺がそう聞くと、セリナは女性の傍に近づいて声を掛けた。


「おはようございます。どうかされましたか?」

セリナがそう尋ねると、女性は事情を話してくれた。


「おはようございます。わっち達はお腹がペコペコで……良い匂いを辿ってここまで来たんですが、まだ開いてないみたいですね……」

そう言ってまた肩を落とすキキョウにセリナは言った。


「良かったら私達と一緒に食事しませんか?少し時間を頂ければ料理をお出し出来ますよ!」


「良いんですか?是非お願いします!」

女性は笑顔でそう答えると皆で店内へと入った。そして階段を降りて扉を開けると、中にいたエルダが俺達に気がついて声を掛けた。


「おはよ!……ってその人達は?……まさかトーヤ!!」

女性に気付いたエルダは疑惑の目線を向けてきたので、俺は慌てて事情を説明した。


すると、事情を聞いたエルダはツバキに優しく声を掛けた。


「辛かったわね……。でも、しんどい思いをした分、これからは楽しいことが沢山待ってるわよ!」

そう言ってツバキの頭を撫でるとキッチンで手際よく料理を作り始めたので、セリナもキッチンに入ると、エルダの手伝いを始めた。


俺はその様子を眺めていると、キキョウが声を掛けてきた。


「あの2人は、あなたの奥さんですか?」


「そうです。妻はあと1人いるんだけど、彼女は少し離れた場所に住んでいます」


「……ノワール……ですか?」

キキョウの呟きに俺は驚いた。


「ノワールを知っているのですか?」


「遥か昔に一度だけノワールと話をした事があります。あなたから彼女の匂いがしたので、まさかと思って聞いてみたのですが……」

そう言って目を細めるキキョウに俺は戸惑いながら聞いた。


「ノワールを敬称なしに呼ぶ人とは初めて知り合いました。彼女とはどういう関係なのですか?」

そう聞くとキキョウは少し考えた後、俺の耳元で小さく答えた。


「わっちはかつて「魔族の王」と呼ばれていましたけど、実際は好き勝手に暴れた果てに全てを無くした愚か者です」


魔族の王……?

キキョウの答えに何と返せばいいか戸惑っていると、視界に転移の光が飛び込んできた。

その光が収束すると、そこにはノワールの姿が。


突然のことに驚く俺達をよそに、ノワールはキキョウに近付くと声を掛けた。


「……キキョウ……久しぶりね」


「そうね……「あの日」以来会う機会は無かったし、これからも会う事はないと思ってたわ……それで、わっちの前に姿を見せた理由を聞いてもいい?約束は破っていないはずだけど?」


敵意……いや殺意だろうか。

明確な感情を剥き出しにするキキョウに、俺達……いや周囲の空気が急速に重くなる中、ノワールは静かに口を開いた。


「貴方に会いに来たわけでは無いわ。私はそこにいる我が子に会いに来ただけよ」


そう言ってステラに近付くと頭を撫でて声を掛けた。


「ステラ。私は貴方のママの1人……ノワール」

ノワールは笑顔を見せると、戸惑いながらもステラは笑顔を見せて言った。


「ノワール……ママ?」

ノワールはその顔、言葉にときめいたのか数歩ほど蹌踉めいた。

暫くして気を取り戻すと、ステラの頭を再度撫でる。


「そう。私はノワールママよ!困った事があったら直ぐに私に言いなさい。私が貴方を、全力で守るわ!」

そう力強く宣言すると、転移の光と共に姿を消した。


場に残された俺達は唖然とした表情でその場で固まっていた。


すると、場の静寂を切り裂くように店の外から歓声に似た声が聞こえてきた。


その悲鳴にも似た歓声に聴き覚えのある俺は頭を抱えていると、興味を示したステラは笑顔で言った。



「パパ!外から楽しそうな声が聞こえるよ!」


そう言って嬉しそうに店の外へと飛び出していった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 待ってました。 再開してくれてありがとうございます。
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