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キキョウ 魔族の王

その日……人族は魔界への侵攻を開始した。


その頃の魔界は、魔族達の多くが群れる事なくそれぞれが好き勝手に生きていた。

個人主義が強かったわっちも他の魔族と群れることはなく、物心がついた頃には1人で自由に生きていた。


だから……一致団結して攻撃を仕掛けてくる人族の侵攻に対して、多くの魔族は大苦戦していた。

そして魔界に侵攻する人族に対して立ち向かう魔族が圧倒的に少なかった事も、わっち達が苦戦した理由の1つだった。


そんな人族に対して魔族は「個」の力が遥かに優れていたので、戦いながら生き残ったわっち達は次第に人族の戦い方に慣れていった。


そして人族を魔界から追い返すことに成功したわっち達は同族達と集まると、魔界において初めて話し合いの場が開かれた。


その話し合いで、人界への報復も兼ねた侵略を開始する事が決まった。

ただ、魔族は人族に対して圧倒的に頭数が足りない事が問題だったので「眷族」と呼ばれる分体を創造して兵力を増やす事になった。


わっちはウトウトしながら話を聞いていると、集まった魔族達からは畏敬の視線を向けられている事に気付いた。

他の魔族を遥かに上回る力を持つわっちが、人族相手に大暴れした事が伝わっていたからだ。


そんな視線を無視しながら退屈そうにするわっちに、話し合いを仕切る男から声が掛かった。


「キキョウ様、貴女には我等の旗頭となって頂きたい!」

そう言ってわっちに視線を向けると、他の魔族達も同意する声が上がってきた。


「なるほど……それは良案だ!」


「あの力を前に、誰も反対などしないだろう……」


「彼女が大将なら、喜んで付き従おう!」


周りが次第に盛り上がる中、わっちはその提案した男……ディンにはっきりと拒否した。


「わっちは嫌よ。人界に侵攻したいなら好きにすれば良い……だけど、そんな下らない話にわっちを巻き込むな」

そう言って立ち上がるわっちにディンが笑みを浮かべると言った。


「貴女が立ち上がれば我等は一丸となって戦いに臨めます!それに……キキョウ様も戦いたいのではないですか?」

その言葉を聞いたわっちはディンを睨むと聞いた。


「……わっちに何が言いたい?」

そう聞くと、ディンは饒舌に話を始めた。


「キキョウ様が人族と戦う姿を何度か拝見しましたが……とても楽しそうに戦っているように見えました」


「貴女は人族との戦いに血が騒いだのではないですか?そうならば、人界で本能が求めるままに暴れてくれれば良いのです。何故なら仕掛けてきたのは人族が先なのですから……」

ディンはそう言ってわっちから視線を外すと周囲に宣言した。


「そう。元々仕掛けてきたのは人界が先だ!キキョウ様を旗頭に頂いて、我等の怒りを……力を見せつけてやろうではないか!」

するとその宣言を聞いた魔族達から歓声が上がると、ディンはわっちに近付くと片膝をついて言った。


「キキョウ様……魔族の「王」として、魔族をお導き下さい」

そう言って頭を下げるディンの姿を見た魔族達も、同様に頭を下げた。

そして立ち上がると再びディンが声を大にして言った。


「魔族の王……「魔王」キキョウ様に忠誠を誓います!」

他の魔族達も口々に同じ言葉を呟くと、わっちの魔王就任を喜び始めた。


わっちはその様子に溜息をつくとディンに言った。


「ディン……わっちは好きにやらせて貰う。お前達も好きにやれば良いけど……指図だけはしないでね」

そう言って場を後にするわっちに、ディンは頭を下げながら卑しい笑みを浮かべた。



……


それから3ヶ月程が経った。


ディンを含む殆どの魔族が眷族の創造を終えると、いよいよ人界への侵攻が始まった。


兵力も「個」の力も圧倒するわっち達魔族は人界の各地を順調に制圧していくと……そいつ等と初めて遭遇した。


白い翼を持つ天界の住人「天族」と、その眷族と思われる「羽無し」達とわっち達は暫く睨み合いが続いた。


すると天族の代表がわっち達の前に姿を見せると口を開いた。


「貴様等は「魔族」だな?我等は天族だ。無益な争いは好まぬゆえ、この場は引いて頂けるか?」

そう言って魔族に手を引くよう言ってくる天族に、わっちは笑いながら答えた。


「わっち達が引く理由がないし……天族の指図を受ける道理もない!」

そう言ってわっちが天族に攻撃を仕掛けると、魔族と天族は激しく衝突した。


人族とは違い天族は「個」の力が桁外れに強く、わっちの心は踊っていた。

弱い敵を屠るより、強敵と命を賭けた戦いを求めていたわっちにとっては……天族は格好の獲物だった。


しかしその戦いは互いの力が拮抗していて、次第に消耗戦となっていった。するとディンは撤退の指揮を出すと、天族も後退を始めていった。


わっちはまだまだ戦い足りなかったので、後退していく天族を追いかけた。


後退が遅れた天族達と向き合うとわっちは攻撃を始めた。

そして全ての天族を始末すると、流石に疲れたわっちは休める場所を探して移動を始めた。



暫く探したわっちは人族の集落にたどり着くと、目に映った子どもに尋ねた。


「水が飲みたいのだけど……持ってきてくれる?」

するとその子は頷くと近くの家に飛び込んだので、わっちはその家に向かった。


するとその家から剣を持った女が飛び出してくると……



わっちはその女の姿に釘付けとなった。


肩口でざっくりと切り揃えられた美しい紺碧の髪に夕陽に染まる瞳の女は私に向き合うと言った。



「この場所は戦いとは無縁の地よ!殺し合いなら他所でやって!」



女がそう言ってわっちに向けた剣は小刻みにプルプル震えていたので……


わっちは久方振りに腹を抱えて笑った。


いつもお読みくださり

ありがとうございます!

へっぽこ作者です。


最近更新頻度が落ちていますが……


書き殴ってきた話の修正やら加筆に

時間を取られています。


もし時間がありましたら、

1話から見返して頂けると嬉しいです。


特にシア編でシアが覚醒する話は

後編だけで1000字ほど追記しました!


まだまだ修正しないといけませんが、

気長にお付き合い頂ければ幸いです。


ちなみに、ここを加筆しろ!

とか

この話が読みたい!


など、リクエストがありましたら、

どこでもいいので

書いて頂けると嬉しいです!


では、作者は修正作業に向かいます!


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