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ツバキとキキョウ 旅の終わり

ベルが頭を上げると、キキョウはポカンとするツバキの手を取って歩き始めていた。


「お待ちください!キキョウ様はいった……」


「わっち達はただ旅をしてるだけよ」

足を止めるとキキョウはベルの問いかけを遮って言った。


「ベル……わっちとお前達は互いに干渉しない。そういう約束じゃなかった?それとも…ベルの一存で約束を反故にする?」

確かにキキョウとツバキはただ旅をしているだけで、何かしでかした訳ではない。

それに……自身の独断で約束を反故にされたとキキョウに判断されたら……。

ベルは再度頭を下げて言った。


「すみません。そのようなつもりは全くありませんでしたが……不快に思われたなら謝罪致します」

キキョウは頭を下げるベルに笑いながら言った。


「少しからかってみただけよ!相変わらず真面目なのね?」

そう言って笑うキキョウの様子に、ベルは胸を撫でおろすと聞いた。


「相変わらずなのはキキョウ様も同じみたいですね。それで、2人はどちらを目指して旅をされているのですか?」

その問いかけにキキョウは少し考えると答えた。


「この子…ツバキさんが静かに過ごせる場所を目指してるわ」

ツバキに目を向けて微笑むキキョウの姿に、かつて魔界全土を震撼させた「狂気」が微塵もない事を悟ったベルは言った。


「そうでしたか。僕に手助けできる事があれば、いつでもお声がけください」

ベルは笑顔を浮かべると森へと向かい歩いていった。

2人も歩き始めると、少し経った頃にツバキが聞いた。


「さっきのお兄ちゃんが「キキョウ様」って呼んでたけど……お姉ちゃんって偉い人なの?」

そう聞くツバキにキキョウは苦い顔で答えた。


「わっちは偉くなどありませんよ。愚かな「魔族」の端くれです……そんな話より、もっと面白い話がありますよ!」

キキョウは笑顔を浮かべて話題を変えると、ツバキと笑いながら歩き続けた。


そして日が暮れると、2人は久し振りに野宿するための準備を始めた。

キキョウの大きなリュックの中からブランケットを2枚取り出すと、木にもたれかかりながら膝に掛けて足を伸ばした。

そして干し柿を食べながら他愛もない話で盛り上がっていると、いつの間にか空に星が輝き出していた。


すると、ウトウトするツバキを抱き寄せたキキョウは星空を眺めながら遠い昔の事を思い返した。


「あれからどれだけ時間が経っても、変わらないものもあるのですね…」

そう呟くとキキョウも眠りについた。


翌朝目を覚ました2人は朝食を済ませると再び歩き始めた。


ツバキはすれ違う獣人達にペコリと頭を下げながら歩いていたので、気になったキキョウは理由を聞いてみた。


「ツバキさんは獣人とすれ違う度に頭を下げていますが……何か理由があるんですか?」

キキョウがそう聞くとツバキは笑顔で答えた。


「初めて自分の意思で頭を下げたとき、みんなもペコリとしてくれたのが私はすごく嬉しかったから……だからみんなに挨拶してるの!」

そう言ってまたペコリとするツバキを見たキキョウは笑顔を見せると、2人でゆっくり歩き続けた。


そしてしばらく歩くと、2人の目に大きな川が映った。


その川を見て驚いているツバキにキキョウが提案した。


「ツバキさん……ここから船に乗りましょうか!」

キキョウがそう聞くとツバキは笑顔で「うん!」と返事したので、2人でさっそく乗り場へと向かった。


そして船頭に料金を支払うと2人を乗せた小船は川を下り始めた。


「うわぁ!風が気持ちいいね!」

そう言って喜ぶツバキにキキョウは微笑むと言った。


「そうですね!ちなみに船での移動が終わったら、わっち達の目的地までは1日ほどで到着する予定です」

キキョウはそう話すと顔を曇らせたツバキが言った。


「お姉ちゃんとお別れするの……さみしいな……」

そう言って俯くツバキにキキョウは笑顔を見せると言った。


「ツバキさん。わっちもしばらくは一緒に生活しますから!」

すると、キキョウの言葉を聞いたツバキは笑顔で言った。


「ほんと?まだ一緒にいてくれるの?」

ツバキの問いかけにキキョウは頷くと2人でゆっくり船旅を楽しんだ。


そして対岸に着くと日が暮れてきたので、2人は近くの草原で一休みする事にした。

キキョウはさっそく干し柿を取り出すと、ツバキと2人で食べ始めた。

そして食べ終えるとツバキが笑顔で言った。


「お姉ちゃん!今日はもう少し歩こうよ!」

そう言ってリュックを背負うツバキにキキョウが聞いた。


「この先は休む場所がありません……夜通し歩く事になりますが大丈夫ですか?」

心配そうに聞くキキョウにツバキは答えた。


「まだまだ歩けるよ!」

元気に答えるツバキの姿を見たキキョウは、リュックを背負うと言った。


「分かりました。それでは行きましょうか?」

ツバキは頷くと、2人で話しながら夜通し歩き続けた。


そして朝日が昇り始めた頃……ツバキとキキョウは目的の「町」へと到着した。



すると町を目にしたキキョウはゆっくりと目を閉じると……遥か遠い過去に想いを馳せた。


ブクマが増えました!

ありがとうございます!


ただ今、若干ですが修正作業をしています!

最新の話は明日更新予定です!



しばしお待ち下さい!



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