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ツバキとキキョウ 自由な旅路の途中

2人で歩き始めてすぐの事だった。


キキョウは思いついたようにリュックを下ろすと、中をガサゴソ漁りだした。

ツバキはその様子を見ていると、キキョウは髪留めを取り出して言った。


「ツバキさん。ちょっと屈んでくれますか?」

その言葉に素直に従ってツバキが屈むと、キキョウは髪を結い始めた。


そして自身の髪も同じように結ぶと笑顔で言った。


「どうですか?耳を隠してみました。これでどこからどう見ても「人族」です!」

自信満々に言うキキョウの姿にツバキは頭を抱えると言った。


「お姉ちゃん…流石に無理があるよ…」

ツバキはそう言ったが、キキョウは胸を叩くと言った。


「大丈夫です!わっちが保証します!」

キキョウはそう言ってリュックを背負い直すと歩き始めたので、ツバキもその横をテクテク歩いた。


しばらく歩くとすれ違う人も増えていき、ツバキは次第に不安になった。

その様子に気付いたキキョウは優しく声を掛けた。


「ツバキさん。そんな顔だとかえって怪しいですよ?堂々と歩きましょう!」

キキョウの言葉にツバキが笑顔を見せると、前方から兵士達が向かってきた。

そして2人とすれ違うとその中の1人が声を掛けてきた。


「やぁ!もしかして君達は獣人さんじゃないか?」

その問いかけにツバキが震えていると、キキョウは笑顔で言った。


「違いますよ。私達は「人間」です!」

お姉ちゃんはバカだ…

キキョウの返事を聞いたツバキは震えながら思った。


兵士達が騒めく中、声を掛けてきた兵士が聞いた。


「あの……もし獣人さんなら我々が保護しますが…獣人さんですよね?」

キキョウは笑顔で返事を返した。


「私達は「人間」です。妹と2人で旅をしてるのです!」

キキョウがそう答えると、声を掛けてきた兵士が言った。


「私の勘違いでした…もし保護が必要なら気軽に声を掛けて下さい…」

そう言うと騒つく兵士達に指示を出して歩き始めた。

そんな兵士達の様子を見たキキョウは唖然とするツバキに言った。


「やはり変装作戦が上手くいきましたね!」

…そうなのかな?

震えが治ったツバキは違和感を感じていたけど、笑顔を浮かべるキキョウと2人で再び歩き始めた。


すると、2人が歩く先の道端に、藁を積んだ牛車が停まっていた。その傍には運転手らしきお爺さんが、草むらでごろんと寝転がっていた。


するとキキョウはお爺さんに近付くと声を掛けた。


「こんにちは!いい天気ですね!」

その言葉にお爺さんは身体を起こすと返事した。


「こんにちは。ワシに何か用事かな……おや?珍しい。あんた獣人さんか?」

驚くお爺さんにキキョウは笑顔で否定した。


「いいえ…私達は「人間」です。妹と2人で旅をしているんです!」

お爺さんはため息をつくと、頭を指差して笑った。


「お団子で隠しとるつもりだろうけど、耳の先っちょが出とるよ」

お爺さんの指摘に驚いたキキョウは、ツバキの頭を見てみると…確かに耳の先がお団子から丸見えだった。


「そ…そんな。わっちの完璧な変装に穴が開いていたなんて…」

そう言って膝をつくキキョウにツバキが呆れたように言った。


「お姉ちゃん…もしかして頭悪いの?」

ツバキの言葉にとどめを刺されたキキョウは目をウルっとさせていると、お爺さんが聞いてきた。


「心配しなくても儂は元々「獣人差別」などしとらんよ。むしろ世界中で保護活動が始まっとるご時世に、差別などしたら最悪「打ち首」になるからな…」

お爺さんはそう言って苦笑いすると、その話を聞いたツバキが尋ねた。


「あの…保護の話って本当なの?」

そう聞くツバキにお爺さんは言った。


「本当じゃよ。見かけたら保護して「ベルシュタイン王国」まで送り届ける事になっとる。そうすると王国で報酬が貰えるらしいから、お前さん達も保護して貰えばいいんじゃないか?」

ツバキはその話を聞いて、兵士達が言ってた事が事実だと知って愕然とした。


キキョウはそんなツバキの様子を見て声を掛けようとすると、2人の元に兵士達が走って向かってきた。


ツバキはそのことに気付き、反射的に逃げようと背を向けた。

しかし、キキョウはツバキを抱きしめると言った。


「大丈夫ですよ。わっちが付いてますからね!」

そう言って怯えるツバキの頭を撫でると、2人の元に駆けつけた兵士の1人が声を掛けてきた。


「やっと追いついた。君を森で見失ってから心配してたんだよ?」


「おや…もしやあなたも獣人さんかな?2人とも我々が責任をもって保護するから安心して欲しい!」

そう言って近寄ってくる兵士にキキョウが言った。


「わっち達は自分の足でベルシュタイン王国に向かうから大丈夫ですよ!」

キキョウは保護を断るが、兵士は熱心に保護を進めた。


「ベルシュタイン王国はまだまだ遠い。馬車で送るから楽だし早く到着出来るよ!」

キキョウはツバキを離すと兵士の耳元で呟いた。


「わっちが大人しく断ってるうちに黙って引き返せ…無益な殺生は好まぬ…」

キキョウはそう呟くと、ツバキ元に戻り笑顔で言った。


「わっち達なら心配いりません!どうか放っておいて頂けませんか?」

そう答えると…耳元で囁かれた兵士は仲間を集めて少し話をした後、キキョウに言った。


「分かりました!道中お気をつけて!」

兵士達はUターンすると一目散に駆けていった。


キキョウはその様子に満足するとお爺さんに提案した。


「ご迷惑でなかったら私達を王国まで送って貰えませんか?」

その提案にお爺さんは驚きながら答えた。


「儂は構わんが…あやつらに付いていった方がきっと楽じゃよ?」

お爺さんの言葉にキキョウは笑顔で言った。


「一度「藁」に寝転んで旅をしてみたかったんです!」

そう答えると、大笑いするお爺さんの許可を貰った2人は藁に寝転んだ。


「お姉ちゃん…ふかふかで気持ち良いね!」



笑顔を見せるツバキにキキョウも微笑むと、お爺さんは牛車をゆっくり進め始めた。


いつもお読みいただき

ありがとうございます!


レビューを書いてくださった方…

本当にありがとうございます!


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