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ツバキとキキョウ 楽しい旅の始まり

「まさに地獄に仏!ありがとうございました!」


女性はツバキが渡した数個のビスケットをパクパク食べると満足そうに言った。

そして立ち上がるとツバキに聞いた。


「私は「キキョウ」と言います。神…いや、あなたのお名前を聞いてもいいですか?」

キキョウはそう尋ねるとツバキは答えた。


「ツバキだよ。それよりお姉ちゃんはなんで裸なの?」

そう聞くとキキョウは肩を落として言った。


「実は着替えが一着しかなくて…今ちょうど干してるところなんです。人がいるなら着てくれば良かったんだけど…美味しそうな匂いに釣られてしまいました」

キキョウはそう答えるとツバキに提案した。


「そうだ!せっかく出会えたのですから私の家でお話ししましょう!」

そう言って戸惑うツバキの手を取ると、キキョウは笑顔で家へと向かった。


それから2人で少し歩くと、キキョウが手を広げて言った。


「ツバキさん!ここが我が家です!」

その言葉にツバキは「家」を見ると…ドン引きした。


「家」というか洞穴だった。

そして洞穴の前に大きめの石が3つ置かれていて、木々の間から差し込む場所には服が干されていた。


その光景に唖然とするツバキに、キキョウは干していた服を着ながら言った。


「どうですか?素晴らしい家でしょ?いつかお客様が来るかもしれないと思って「椅子」も準備していました!どうぞ座ってください!」

そう言って服を着るキキョウにツバキは尋ねた。


「椅子って…この石のこと?」

石は確かに丸みを帯びているけど…まさかね。

そんな事を考えていたツバキに、服を着たキキョウが石に座ると言った。


「そうですよ!これが厳選した椅子です!」

そう言って笑顔を向けるキキョウの言葉を無下にできず、ツバキも椅子に腰を下ろした。

するとキキョウがツバキに聞いた。


「ツバキさんは何故こんな山奥に来たんですか?」

キキョウの疑問にツバキは事情を話し始めた。


「私は奴隷だったの。でも、ある日突然ご主人様が死んじゃって…怖くなった私は逃げ出したの。そして近くの森で隠れながら生活してたら、兵隊達が追いかけてきた…」


「それからずっと追いかけてくるの…私を保護するから出て来いって言いながら。たまにご飯が入ったバスケットを置いていくから、それを食べながらここまで逃げ続けてきたの」

そう言って肩を震わせるツバキにキキョウが言った。


「大変な目に遭ったんですね…でももう大丈夫ですよ!ツバキさんはわっちが守ります!」

キキョウは笑顔を見せるとツバキに提案をした。


「わっちが安全な場所までツバキさんを送ってあげましょう!少し旅をする事になりますが…どうですか?」

その提案にツバキは頷くと言った。


「でもいいの?私と一緒にいたらお姉ちゃんも追われる事になるかも…」

俯くツバキの頭を撫でるとキキョウが言った。


「ツバキさんにはビスケットの恩がありますからね!それにわっちは人族より強いですよ!」

キキョウはそう言って立ち上がると洞穴の中に入っていった。

そして中から出てくると大きなリュックを背負っていて、手に持っていた小さいリュックをツバキに手渡すと言った。


「善は急げ!早速向かいましょう!」

渡されたリュックを背負うとツバキが言った。


「うん!」

ツバキの元気な返事が2人の旅の始まりを告げた。




2人は数時間歩き続けて森を抜けると、あたりはすっかり夜になっていた。

歩き続けるツバキの疲労が気掛かりだったのか、キキョウが提案した。


「ツバキさん。今日はここら辺で休みましょうか?」

その提案にツバキは首を振ると言った。


「大丈夫!まだまだ歩けるよ。それに夜の方が目立たないからもう少し歩こう!」

そう言って前を歩き出すツバキの姿に安心すると、キキョウも歩き始めた。


2人で会話しながら道なりに歩くと、月明かりに照らされた古い小屋が目に映った。

2人はこっそり中を覗くと誰も居なかったので、荷物を下ろすと休憩を取った。


するとキキョウはリュックから干し柿を取り出してツバキに渡すと言った。


「わっち特製の「三年柿」です!甘くて美味しいですよ!」

そう言ってパクパク食べるキキョウを見て、ツバキも食べ始めた。

キキョウの言った通り甘くて美味しい柿を食べたツバキは、気が緩んだのかスヤスヤ寝息を立て始めた。


その姿を確認すると…

キキョウはリュックを背負ってツバキを抱きかかえると、静かに歩き始めた。


それから数時間


朝日に目を覚ましたツバキは原っぱにいる事に気付いて飛び起きた。

するとツバキが目を覚ました事に気付いたキキョウが声を掛けた。


「おはようございます。よく眠れましたか?」

その問いかけにツバキは答えた。


「おはよ…あれ?私達は古い小屋にいなかった?」

ツバキの疑問にキキョウは笑顔で答えた。


「いいえ?歩き疲れたので、ここで野宿する事にしたんです。疲れは取れましたか?」

そう言ってツバキに干し柿を渡すと、ツバキは首を傾げながらも食べ始めた。

そしてツバキが食べ終えるとキキョウは予定を話し始めた。


「これからなんですが、このまま1ヶ月ほど歩いて「ベルシュタイン王国」を目指します。大変だけど一緒に頑張りましょう!」



その言葉にツバキは頷くと、2人でリュックを背負って歩き始めた。


いつも読んでくれて

ありがとうございます!


ブクマが99件に!

ありがとうございます。

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