リュカ様と私の幼馴染
誤解
「じゃあサラ、幼馴染君のところに行こうか?」
「はい、リュカ様」
ちょっと面白くなさそうなリュカ様ですが、私を幼馴染の家まで連れて行ってくれます。
「このお屋敷かな?」
「あ、はい、そうです」
リュカ様は私と手を繋いで、幼馴染の家を訪ねます。
「こんにちは。ここの御令息の幼馴染と一緒に御令息に会いに来たんだけど、合わせてくれる?」
「え、ライアン様の幼馴染って、サラ様ですか!?」
「ええ、どうもこんにちは」
「ということは、そちらの方は…」
「僕?僕はリュカ・リュウフワ。ドラゴンの王太子だよ」
「ど、ドラゴン様…!今すぐライアン様をお呼びします!どうぞこちらへ!」
応接室に通される間もリュカ様は私と手を離そうとしません。
「…」
「リュカ様?」
「ふふ。ごめんごめん、僕の花嫁はとても可愛いから、取られてしまわないかと心配で」
困ったように笑うリュカ様。そんな心配いらないのに。
「大丈夫ですよ、リュカ様。私とライアンは幼馴染ですから、そんな関係じゃありません」
「もちろんサラのことを疑っているわけじゃないさ。ただ、相手の男がどう思っているかはわからないだろう?」
「そんなことないですって」
私達がそんなことを話している間に、ドアがこんこん、と叩かれます。
「失礼します!」
そういうと部屋に入ってくるライアン。
「やあ、初めて。僕はリュカ・リュウフワ。ドラゴンの王太子だよ。君が僕の花嫁の幼馴染かな?よろしくね」
「ええ。俺はライアン・ジハァーゥ。サラ様の幼馴染です。よろしくお願いします」
そうしてリュカ様とライアンは握手します。
が、
「それで、サラ様はそちらでは幸せに過ごせているのでしょうか」
なんだかライアンの様子がいつもと違います。
「…それはもちろん。僕の花嫁として、大切に大切にしているからね」
「あの、ライアン?どうしたの?」
なんだか二人の間に火花が散っているような気がします。どうしてこうなった。
「…あの、ライアン?リュカ様?」
「サラ様のご家族にはお会いしましたか?みんなサラ様がそちらにお嫁入りしてから、毎日のように泣いていらしたのを知っていますか?」
「えっ」
そんなこと聞いてない。
「…そう。初耳だよ。でも、どんなところに嫁ぐにしろ、最初の内は娘恋しさに泣いて暮らすものだろう?」
「ええ、そうですね。ですがドラゴン様が相手なので余計に心配して、余計に泣いていたのですよ」
「そう。それは申し訳ないことをしたね」
「ええ、ですからサラ様を返してはいただけませんか」
「えっ」
ライアンは何を言っているの?
「無理だよ。それに、返したところでサラが幸せになる保証なんてないだろう?」
「俺が幸せにします。家も近いし、俺と結婚した方がサラは幸せになれる」
「…もう婚儀は済んでいる。今更なかったことには出来ない。でもどうしてもというなら…決闘して、僕を殺してみせなよ」
どこか面白そうにいうリュカ様。リュカ様は何を言っているの?
「では…」
手袋を懐から取り出し投げつけようとするライアン。待って待って待って待って待って!
「す、ストーップ!」
ライアンの腕に飛びつき阻止します!
「ライアン!あなたなにしてるのよ!せっかく人が里帰りしてのんびり過ごそうと思っていたのに!」
「…!サラ!止めるな!この決闘に俺が勝てればお前はまた家族の元へ戻れるんだぞ!どうせ家の為に嫌々結婚したんだろう!?もうお前だけが我慢することなんてないんだ!」
「確かに家族のための結婚だったけど!」
「なら!」
「今は素敵な旦那様に恵まれて幸せなのよ!邪魔しないで!」
「え?」
「それに家族だってさっき私は幸せだって言ったら結婚を祝福してくれたわよ!」
「え」
もう!ライアンったらすぐに早合点するんだから!
「大体いくら私のためを思ってくれたのだとしても、愛のない結婚なんて嫌に決まってるでしょ!バカなの!?」
「…じゃあ、本当にリュカ様に大切に愛されてるのか?」
「そうだって言ってるでしょ!おバカ!」
もー、いくら私のためとはいえ、命がけでアホなことしようとしないでよね!
「サラ!よかった!ごめん、誤解してた!」
「謝る相手が違うでしょうが!」
「…リュカ様!すみませんでした!誤解でした!誤解では済まないことをしたと分かっています!どうぞ厳正な処罰を!」
「ちょっとライアン!」
自分から処罰を求めるなんて何考えてるのよ!
「…いや、それはいいよ。サラのことを考えてやったことみたいだしね」
「リュカ様!ありがとうございます!」
「万が一にでもサラに気があるのならこの場で斬り捨ててやろうと思ってたんだけど、本当に幼馴染としての感情しかないようだしね」
リュカ様が物騒なことを言う。ドラゴンの嫉妬すごい!
「ありがとうございます、本当にすみませんでした!」
「でも、ドラゴンの中には短気な者も多いからこれからは気をつけてね」
「はい!」
「ね?リュカ様は素敵な方でしょう?最初から心配なんていらなかったのよ」
「サラ、ごめん!」
「まあ、私はいいけど。これからは早合点しちゃダメよ?」
「わかった、気をつける」
こうして改めて幼馴染と再会の喜びを感じていたところで、ライアンから一言。
「結婚おめでとう、サラ」
「ありがとう、ライアン」
実は初恋はライアンだったことは、二人には内緒にしておこう。
仲直り