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島田家の人々  作者: 泉 五月
2 父と娘のエトセトラ
6/15

もちろん、手伝ってくれるんでしょ?

 

 第一印象は、「とっつきにくそうな子」だった。

 綺麗だった。四人いた女の子は、みんな可愛いかったり綺麗だったりボーイッシュだったり、それぞれに魅力があったけど、総合的に見て一番レベルが高いのは、彼女だと思った。けれど逆に、四人の中で一番表情が硬いのも彼女だった。クールというんだろうか、大人しいというよりは、冷めた空気を纏っているような感じ。これから見定める異性との対面にどこかうきうきしている女子たちの中で、一人だけこちらに一回も視線を向けないのも気になった。席に近付いてくる彼女たちを観察しながら、どちらかというとこういう会は好きじゃないのかなと思ったくらいだ。


 これまでの人生、合コン参戦率はそう高くない。出会ったばかりの子とわいわい盛り上がる技量は持ち合わせてないし、ありがたいことに彼女がいた期間もそれなりにあったからだ。今回も実際はあまり乗り気じゃなかったけど、高校からの友人である保科ほしなに半ば強引に誘われて参加することになった。


 指定された店はイタリアン。去年オープンしたばかりで、店の内装はモダンな感じ。一見高級そうに見えるのに、料理自体はリーズナブルな値段で楽しめると評判の店だった。個室はないが、テーブルとテーブルの間の距離が広めにとってあることと、若干明るさを落とした照明で、気兼ねなくおしゃべりができるというのも人気の要因の一つらしい。


 全員が席に着くまでの時点で、蒼維あおいの目はすでに彼女ばかりを追うようになっていた。クールそうに見えるからといって、グループに馴染んでいないわけではないらしい。だがどこか壁――とまではいかないが、何か薄い膜のようなものが彼女の全身を覆っているような気がした。

 彼女が何でこの場にいるのかが若干不思議だった。人数合わせなのか、それとも自発的になのか。でも、蒼維にはどうしても後者ではないような気がしていた。

 気になるけど、理由がわからない。見た目で言えば、どちらかというと彼女の隣に座るゆるふわカールの可愛い系のほうがタイプなのだけど。話してみたいのかそうじゃないのか、自分でもよくわからない時間。それが途切れたのは、一杯目の注文を終えた自己紹介の時だった。


「綾香の友達の杏奈あんなです。よろしく」


 申し訳程度に男性陣を見た後、ごく短い挨拶をした彼女に、保科ほしなが「短っ」と軽いつっこみを入れた。保科にしてみれば緊張を解すための合いの手のようなつもりだったのだろう。狙い通りというべきか、その場の誰もが頬を緩めた。しかし彼女だけは、その笑みに若干の戸惑いが混じっていた。


「これがいつもの杏奈なの。クール系女子だから。それに情報は小出しにしたほうが楽しいでしょ?」


 すかさずその場を引き継いだ女子側の幹事である木戸綾香の察知力にほっとした。

 こっち陣営の男たちが「なるほどねー」とか「焦らすねー」とか言っている間に、蒼維はその視線が交わされたのを見た。「ねー?」と杏奈を見上げた木戸綾香に彼女が返した目が、苦笑混じりだがわずかに弓なりになったのを。

 その時、彼女の纏っている空気が、一気に柔らかくなった。気を許した人間だけに向けられる微笑み。がらりと変わる雰囲気。ふわっと、目に見えない膜が一瞬できらきらとしたヴェールに変わり、広がったような気さえした。蒼維はそのヴェールに心臓を撫でられて、そして一気に、持っていかれた。





 時間が経つと予想に反して、彼女はよく笑う人だとわかった。でも爆笑はしない。笑うというよりは微笑む。でもその微笑みだけでも、蒼維にとっては不思議な引力があった。一貫して聞き役に回っていて、自分からはほとんど話さない。でも相手の話を促すのは上手で、相槌は控えめながらも欲しい時には必ずくれる。――というのは、他の人と話しているのを見ていた感想だ。蒼維の席は彼女と一番離れた対角線上の位置で、直接声をかけるのはあまりにも不自然な距離だった。


「ねえ」

「ん?」

「樋口君、杏奈が気になるの?」

「え?」


 向けられた問いに、杏奈に向けていた注意を自分の正面に戻した。向かいに座っていた木戸綾香が、頬杖をついてこちらをじっと見つめていた。

 綾香は杏奈と同じ桂城大学の二年生だ。今回の女子側は同じ大学の友達同士で、男子側は高校の時の同級生に、保科の大学の後輩が一人混じっているという構成だった。


「さっきからばればれなんだけど」


 にやっと笑った綾香に内心焦ったが、それが心の中だけで留まっていなかったのか、綾香が小さく吹き出した。別にこっちの態度を怒るつもりはないらしい。


「ま、いいんだけど。あたし彼氏いるし」

「そうなの?」

「うん。今日は保科が合コンセッティングしろってうるさいからやったげたんだけど」


 そう言ってちらりと視線をやった保科は、目の前の女の子に夢中である。名前は確か、真菜香まなかちゃん。英文学を専攻していて、お菓子作りが趣味だとか何とか。目がくりっとした顔も胸の大きさも、保科が好きそうなタイプだった。鼻の下はかろうじて伸びていないが、眼鏡の奥の目尻は下がりっぱなしだ。

 杏奈の正面は保科の後輩で、その隣が保科、高校の同級生の山本、そして蒼維という席順になっている。一方女子側は杏奈、真菜香、ボーイッシュ系の祥子、そして正面が綾香だった。

 保科と後輩、そして向かい二人の四人が一つの話題を共有し、山本と祥子がロック好きという共通の趣味で盛り上がっている。自然と席は分断され、残されたのが杏奈が気になる蒼維と彼氏持ちの綾香というわけだ。


「っていうかさ、杏奈のどこが気に入ったの? 顔?」

「え……」


 ずばりと聞かれてたじろぐ。

 綾香は白い大皿に載った生ハムのピザを手に取った。

 まあ確かに、綺麗だと思うけど。でも、見た目だけの話で言えば、蒼維も保科と同じく真菜香のほうがタイプだ。なぜ気になったのか、うまく説明する言葉がすぐには見つからない。


「ってかまあこの席でまともに喋ってないのに気になるって、とっかかりは顔しかないよね」

「いや、まあ……確かに綺麗だとは思うけど、ちょっと違うっていうか……」

「何が?」

「気になったのは顔というよりは、雰囲気のような」

「雰囲気? 蒼維くんって大人っぽい感じが好きなの?」

「いや、そういうわけでも」

「でも、初対面の時って杏奈大人びてクールに見えない?」

「うん、まあ……」


 保科たちと話している杏奈の周りには、再び薄い膜が張られているように見える。


「でもちょっとねー、杏奈は難しいよ」

「え?」


 彼氏がいるということだろうか。

 でもその可能性を提示されたところで、ショックは受けなかった。その時点で、自分の杏奈に対する興味は異性としてではなく、単純に人としてのものなのかと推測するに至る。

 この人はどんな人なのか。

 何であの笑顔を、普段は隠しているのか。

 考えている蒼維の前で、綾香はピザのピースを食べ終えた。指先をおしぼりで拭いながら蒼維の意識を引き戻す。


「ま、本人がいないとこで何だかんだ言うのもなんだし。これから直接話してみて自分で確かめなよ」

「そうだね……」


 綾香は自分のグラスを引き寄せると、喉をそらして紫色のカクテルを飲んだ。

 きっと保科のあの様子だと、この店での席替えはないだろう。幸い会の雰囲気は悪くないから、二次会に行く可能性もある。そうなったら近くに座ってみようかなとぼんやり考えて、蒼維も大皿のピザに手を伸ばした。






 会計が終わって二軒目に移動する前に、トイレに行った。直前のやりとりで、二次会は近くの大衆居酒屋に行くことに決まっていた。最初のうちは帰ると言っていた杏奈を、綾香が少しだけでいいから、と引き止めてくれた。


 手を洗って外に出ると、歩道の脇で待っていた集団に男が話しかけていた。最初は客引きかと思ったが、どうやら格好が違う。知り合いでもいたのかと思ったが、見たこともない中年男だった。相手をしているのは保科だが、男の体は完全に杏奈に向いている。思わず眉をひそめた。


「どしたの?」


 近付いて一番後ろにいた保科の後輩に尋ねると、振り返った後輩は案の定「何か酔っ払いが絡んできて」と声を潜めた。

 酔っ払いは杏奈にご執心のようで、それを保科が間に入って止めているらしい。


「いいじゃねえかー。一緒に飲もう!」

「いやいや、俺らもう別のとこに行くから」

「じゃあ俺も行こう!」

「いや、あのね……」

「何だよー、せっかく会ったのに。冷てえなあ」


 男はずいぶんと酔っ払っているようだった。顔は赤く、呂律も若干怪しい。


「一杯だけ! な?」

「みんな、もう移動しよう」


 保科が酔っ払いを無視して、さりげなくその視線を遮りながら杏奈を促す。


「ちょっと待てよー」


 酔っ払いが杏奈の手首を掴んだ。

 彼女の整った顔の眉が寄せられる。それは困惑というよりは、明確な不快を示していた。


「ちょっと」


 気付けば、体が勝手に動いていた。

 二人に近付くと、杏奈の手首を掴んだ酔っ払いの腕を掴んでいた。何か言葉が浮かぶ前に、若干腹が立っていた。

 彼女は綺麗だ。だから声をかけたくなるのも仕方がない。その気持ちは理解できる。だけどこれは、いただけない。


「んー? 誰だお前」


 酔っ払いは充血した目で胡散臭そうに見上げてきた。間近で受ける視線に若干怯みそうになる。けれど動いてしまったからにはもう後戻りはできない。救いは蒼維のほうが少しだけ身長が高いことだった。酔っ払いを見据え、腹に力をこめる。


「こういうの、やめましょうよ」

「はあ? 何だお前」

「蒼維、よせ」


 険悪になってきた雰囲気に、保科が割って入る。顎をしゃくって、もう行こうと伝えてきた。

 実際、内心は早くも逃げ腰だった。そもそもこういう諍いに進んで割って入るタイプではないのだ。だけど今回はなぜか体が勝手に動いてしまった。

 勇敢にも杏奈を守ろうとした蒼維に対して、酔っ払いは怖気づくどころか凄みを増しつつある。ここで握った腕を離せば、もしかして殴られるんじゃないかと想像してしまうくらいに。


「おじさん、手、放してくれません?」

「おめえこそ放せ」


 これは確実にやばいパターンかもしれない。

 蒼維が次の行動を迷っていた、その時。


「……いい加減にしてよ」

「え?」


 ぼそっと呟かれた声に、酔っ払いの赤ら顔から目を離した。


「そっちこそ放して」


 酔っ払いを見据えてはっきり言った杏奈を、まじまじと見つめた。うざい酔っ払いに、ついにキレたのかと思った。


「何だよ。冷てえなあ」

「いいから放して」


 呆気に取られている蒼維をちらりと見ると、杏奈はすぐに酔っ払いに視線を戻した。その目はどこか冷たくて、木戸綾香と交わしていたような優しさはかけらもない。一応彼女を助けようと思っての行動なのに、それは認めてもらえなかったようだ。

 蒼維も酔っ払いも手を放さずにいると、杏奈は半分瞼を伏せ、長いため息をついた。


「わかった、じゃあ行くから。一緒に飲むから。とりあえず放して」

「ほんとか? よーし、じゃあどこに……」


 根負けしたような彼女に、酔っ払いがようやく手を放す。さっきまでのけんか腰はどこへやら、かなりのご機嫌だ。だが一瞬だけ元に戻ると、「手ぇ放せよ」と、こっちに毒づいてきた。


「えっと、いいの……?」


 杏奈に小声で尋ねると、彼女は「いいから」と短く答えた。酔っ払いは蒼維が手を離す前に、自分でその手を振り解いて蒼維をひと睨みした。

 杏奈は本当に見ず知らずの酔っ払いの相手をするつもりなんだろうか。というか彼女が承諾したということは、蒼維たちも一緒に飲むということだろうか。保科たちもこの成り行きに若干戸惑っているようだ。

 解放された手首をさすっていた杏奈は、綾香たちのほうを振り返る。


「先行ってていいよ」

「え、でも……」


 早く行こう、と急かす酔っ払いから一度離れ、杏奈は小声で言う。


「行った瞬間即行トイレって言って逃げてくるから大丈夫」

「でも杏奈ちゃん一人じゃ危ないし、こんなのに付き合う必要ないよ」


 保科の言うことはもっともだった。とても彼女を酔っ払いと二人で行かせる気にはなれない。

 すると、なぜか杏奈の目線がすいっとこちらに流れてきた。「じゃあ」と彼女が口を開く。


「樋口くん? だっけ? 付き合ってよ」

「え……」

「酔っ払いに殴られること覚悟で手を出してきたその勇気を評して。最後まで付き合ってくれる?」


 言葉の割に全然褒められている気がしない。

 でも、ここで断るなんて男としてありえないだろう。もしもそんなことをしたら、今も心配そうな視線を杏奈に向けている女の子たちは、もれなく蒼維のことを軽蔑するはずだ。


「俺が行こうか」


 樋口が名乗り出る。

 男前なやつだ。ただ、多少の打算があることも、友人の蒼維にはわかったが。


「いいよ……俺が行く」

「大丈夫か?」

「うん。うまく隙見つけて逃げるよ」


 何だかんだで相手は酔っ払いなのだ。隙を作ろうと思えばいくらでもできるだろう。

 保科が二の腕を軽く叩いた。


「じゃあ、頼むぞ」

「わかった」

「店で待ってるから」


 保科たちを見送ると、待ちかねたような酔っ払いと、杏奈との三人で別の店に向かった。はじめ酔っ払いは蒼維がついて来ることに不満そうだったが、結局は杏奈と飲めるという事実のほうが勝ったのだろう。蒼維のことは気にしなくなった。

 三人が入ったのは、そこそこ大きくて賑やかな焼き鳥の店だった。席に案内され、座敷の奥に酔っ払いを通し、蒼維と杏奈は入り口に近いほうに座る。腰を下ろしながら杏奈は早くも店員に告げていた。


「ウーロン茶ください。あと冷酒。一番きついやつ。樋口くんは?」

「え? でも……」

「いいから注文して」

「じゃあ、ハイボール……」


 店に来たら即行ばっくれるんじゃなかったのか。杏奈が注文したことに驚いたが、有無を言わせない口調に促されるまま注文をし、店員が去ってから、小声で尋ねる。


「どうするつもり? 即行逃げるんじゃなかったの?」

「どうせすぐ終わるから。何ならもう帰ってもいいけど」


 そんなことできるわけがない。


「おーおーおー、距離が近いぞお前ら」


 向かいの酔っ払いが机を叩く。小声で話していたため、つい顔を寄せ合うようになっていた。

 確かにこの酔っ払いの相手をするとなると帰りたくもなるが、杏奈を一人にはできない。

 店員が注文した飲み物を持ってくると、杏奈は冷酒をお猪口に注ぎ、愛想よく酔っ払いに差し出した。


「はいどうぞ」

「お、気が利くなあ」

「どんどん飲んでよ」


 その笑顔に何だか、嫌な予感がした。

 杏奈は酔っ払いがお猪口を空にする度にすぐ次を注ぎ、徳利の中身が無くなる前に追加を注文した。すると結局三十分もしないうちに、酔っ払いは怪しい口調がさらに怪しくなり、次第に瞬きがゆっくりになり、そしてテーブルの上に撃沈した。


「じゃ、行ってくる」

「え?」


 男が完全に寝入ったのを見て、杏奈が立ち上がった。


「もう用ないでしょ。会計してくる」

「え、でも……」


 この酔っ払いはここに置いたまま逃げるということだろうか。

 杏奈は酔っ払いのそばに移動すると、ポケットを探って財布を取り出した。


「ちょっと。それはまずいんじゃ……」

「大丈夫」

「いや……」


 確かに男の分まで自分たちが払うのは癪だが、といって勝手に財布から取れば窃盗だ。

 しかし杏奈は一万円を一枚抜き取ると、伝票を持ってさっさと会計に行こうとする。


「杏奈ちゃん」

「父親だから」

「え?」

「父、親、だから。問題ない」


 思わず声が出た蒼維に、一度で聞き取れとでも言うように、低い声で杏奈が繰り返した。


「嘘っ……ってことは、え……?」


 頭の整理が追いつかないうちに、杏奈は座敷を出て行った。

 テーブルの向こうで伸びている男を見る。

 つまり、二人は親子ということか。酔っ払った父親は偶然出会った娘と飲みたがり、娘はそれをうざがった。

 でも。


(いくらうざいからって、親をここまで徹底的に潰す?)


 にわかには信じがたい。

 今や杏奈は、あの薄い膜を纏ってはいなかった。けれど、綾香に見せていたあの表情とはほど遠い。むしろ、刺々しく、別の意味で近付きがたい。今目の前にいる彼女と、少し前までの彼女は、本当に同一人物なのだろうか。

 しばらくすると、会計を終えた杏奈が戻ってきた。手に持っていたお釣りはきちんと財布に戻して、またポケットに入れた。


「えーっと、じゃあ、どうするの? その……お父さん?」

「連れて帰るよ」

「どうやって?」


 見たところ彼女の父親は完全に眠っている。起きるまで待つのか、誰かに迎えに来てもらうのか。


「もちろん、手伝ってくれるんでしょ?」

「はい?」


 少し声が裏返った。


「俺……?」

「そう、俺。負ぶって」

「え?」

「負ぶって。この人」

「え……?」


 杏奈の顔はいたってまじめだった。それが逆に怖い。


「杏奈ちゃんの家、こっから近いの?」


 杏奈が口にした地名に、思わず頬が引きつった。ここからだと電車で三駅分はある。


「えーっと、負ぶうって、どこまで……?」

「家まで」

「……冗談?」


 可愛らしく首を傾げてみたが、杏奈はにべもなく「本気」と突っ返してきた。


「こっからタクシー使ったら、いくらかかると思ってるの? そっちが出してくれるんならいいけど」


 無理だ。

 即座に判断した。ぎりぎり足りるかもしれないけど、今度は自分が帰れない。

 というか、飲み代は父親の財布から勝手に出したのに、タクシー代は出さないというその判断基準は何なんだろう。


「家の人に、迎えに来てもらうとか……」

「この時間もう家に運転できる人いないから。たぶんアルコール入ってるし」


 最後の抵抗もあっけなく退けられる。

 逃げ場がないことを悟り、渋々腰を上げると、杏奈の父親の横に膝をついた。杏奈によってすぐにその背中に、相当な重みが乗せられる。

 何でこんなことしてるんだろう。

 考えてもむなしくなりそうで、蒼維はとりあえず、気合を入れて立ち上がった。



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